水産業を変える魚の活け締め“渦巻処理”
魚の味に直結する、鮮度。その鮮度を保つために欠かせない処理技術が、江戸時代から続く“活け締め”。そしていま国内の水産関係者が注目している“締め技”が、「渦巻処理」と呼ばれる特許技術だ。開発者で熊本市の魚卸業、川津義雄商店代表の桂計助さん(38)は「この技術で水産業界に革命を起こしたい」と意気込む。
渦巻処理の優れている点は、そのスピード。桂さん考案の“掃除機のような装置”で魚の中枢神経を吸い取り、絶命させるまでの時間は10秒程度。短時間での処理は鮮度キープに直結するのだ。渦巻処理した魚を使う東京の有名フランス料理店は「鮮度保持に優れているためより熟成させることができ、うま味を引き出せる」と話す。
去年、東京都中央卸売市場では渦巻処理したマグロの値段が従来に比べ約4倍アップ、その評判は都市圏を中心に広まっている。一方で、桂さんは冷凍技術の追求にも余念がない。旬の魚はその時期に摂れすぎると値段が下落するがとれない時期は、質が悪くても高値で取引される。
だが渦巻処理した魚を冷凍保存すれば、味の質をほぼ落とすことなく提供できる上に安定した値段での取引が見込まれるのだ。「常に美味しい魚を提供したい」。鮮度にこだわる桂さんの取り組みを追う。
会社・学校名など:川津義雄商店
担当者:桂 計助さん
住所:〒860-0058 熊本県熊本市西区田崎町484
取材後記
水産業界では、厳しい面が多々見られます。その一つが漁師の後継者不足。
輸入が盛んになり、日本の魚の値段が低下。漁で魚が取れても、赤字になることも。
「日本の魚は良いもの。もっと価値を高め、良いものは良い評価を得るようにしたい」
桂さんが魚の価値を上げる渦巻処理と、冷凍に取り組んだ一つの理由です。
千葉県の魚卸業者は、「量より質。大量に魚が取れる時代。今は資源を大切にして、おいしいものをしっかりおいしく、質を高める漁をやっていかないとこの先はない」と話します。
水産業に変化が生まれています。桂さんは、渦巻処理よりもっといい処理方法があると今も研究を続けています。日本の長年積み重ねてきた魚の知識と技術。それは、他国に負けない文化。日本食が、世界に広がる中、より、おいしく鮮度のいい魚を送りだす。水産業界を盛り上げるため、桂さんは挑戦を続けます。
(熊本放送 山本 修平)
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