料理と切っても切れない関係の器。お気に入りの器があるだけで、料理をすることや誰かをもてなすことがより一層楽しくなるものです。作家ものや民芸、アンティーク、世界各国の器まで、収納場所に困るほど器を集めてしまうライターの森脇美奈さんが、こだわりのセレクトが光るお店を紹介していきます。
もうすぐ12月ですね。そろそろ年末年始の準備を始めるという方も多いのではないでしょうか。いつもは普段使いの器を中心に紹介していますが、今回はちょっと特別な時に使いたい器が見つかるお店を紹介します。
「福岡三越」の地下1階「ラシック福岡天神」フロアにある「芦屋貴兆陶家」は、佐賀県有田町にある器の商社「貴兆陶家」が手がけるお店です。もともとはホテルや旅館、料亭向けの器を主に扱っていて、小売りを始めたのは10年ほど前のことだそう。有田や福岡市姪浜、大分県別府市にカジュアルラインの小売店「貴兆陶家」があるほか、兵庫県芦屋市にはこだわりの器を集めた「芦屋貴兆陶家」を展開しています。そして、2020年にはここ「芦屋貴兆陶家 福岡三越店」をオープン。有田焼や三河内焼、伊万里焼、波佐見焼といった肥前の焼き物を中心に、作家ものの器が店頭に並びます。
「芦屋貴兆陶家」を訪れる楽しみのひとつが、季節を感じる店頭のディスプレイです。いまの時期はお正月に向けたコーディネイトでした。箔が施されたお碗、繊細な絵付けのお皿、漆塗りのお盆など、テーブルが華やぐ器の数々は見ているだけでも心が満たされます。普段使いにはシンプルな器が便利ですが、このように美しい装飾が施された器を見ていると、特別な日にふさわしい器も揃えてみたくなりますね。また、ディスプレイ用の棚やテーブルがアンティークで揃えられているのも素敵。深みのある佇まいが上質な器をますます魅力的に見せています。
器をセレクトするのは、社長の朝田秩賀則さん。三河内焼で知られる長崎県佐世保市三川内町の出身で、小さい頃から焼き物が身近にあったそうです。「基本的には料理との相性を考えながら直感でいいと感じたものを選んでいます。ホテルや料亭など向けの器を扱ってきたので、店頭に並べる器も自然とそういった趣のものが多くなっているかもしれません」と朝田さん。料理人の方やテーブルコーディネイトの先生が器を求めに来るというのも納得です。
窯元との長い付き合いのなかで、別注商品も多く生まれています。絵付けのお皿にプラチナを加えるなど、さりげないながらもアクセントを効かせた器は「芦屋貴兆陶家」でしか購入できないものです。
華やかな磁器と並んで、味わい深い作家ものの器も。「天平窯」の岡晋吾さん・さつきさんや川口武亮さんなど、有田にゆかりがあり朝田さんが長く交流している作家のほか、朝田さんが窯元に足を運んで取り扱うことになった各地の作家の作品もありました。
今回はお正月に使いたいものを中心に、気になった器を紹介します。こちらは有田焼の「福泉窯」とのコラボレーション商品「*mayuhako*」。「芦屋貴兆陶家」を代表する繭のような形の蓋物の器です。さまざまな色や絵付けのものがあり、選ぶのも楽しさのひとつ。付属の真田紐を結ぶと、おもてなしの器としての格もぐっと上がりますね。お正月にはおせち料理を一人ずつ取り分ける器にぴったりです。ほかにもお菓子を入れたり、小皿と組み合わせておつまみ用になど、工夫次第で使い方が広がる器です。蓋の部分はプレートとして使用することもできます。価格はデザインによって異なりますが、写真の2点はそれぞれ14,300円です。
ホテルで使用されることも多い有田焼の窯元「やま平窯」による器は、特殊な技法で泡のような表情を器に表現したもの。白地にプラチナやゴールドの彩りがお正月の食卓によく合いそうです。「内泡平鉢」(左・8,910円、右4,950円)。
埼玉県で作陶する山本仁一さんの作品も目を引きました。土ものならではのぬくもりのある手触りと独創的で自由なデザイン。アート作品のように個性のある器でありながら、料理をすんなりと受け入れてくれそなので、レストランで使用されることも多いそうです。写真は左から時計回りに小皿(1,210円)、片口(1,980円)、鉢(3,630円)です。手に取りやすい価格もうれしいですね。
いつもの器もいいけれど、少し緊張感がある特別な器を手に取ることも器選びの楽しさのひとつだと改めて感じた今回の訪問でした。
芦屋貴兆陶家 ラシック福岡天神店
福岡市中央区天神2-1-1 福岡三越B1F
092-753-7225
ジャンル:物販店
住所:福岡市中央区天神2-1-1 福岡三越B1F
電話番号:092-753-7225
営業時間:10:00~20:00
定休日:福岡三越に準ずる
URL:https://kittyo.base.shop/
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