進化や変革が起きる時、そこには必ず火付け役がいます──信念と技術を武器に、新たな道を切り拓く人々が。今年8月オープンの「innovative Japan るふ」も、いずれその一員となるかもしれません。「和食の既成概念に風穴を!」の気概に満ちた新感覚の日本料理店です。
店内はカウンター6席と少なめですが、席間は広々と心地よく、内装は記念日利用にふさわしい洗練を感じます。着席すると、笑顔で迎えてくれたのは快活な店主・長谷川竜也さん。国内外で研鑽を重ね、35歳で「るふ」を構えた和の職人です。
「前日までに要予約」の店には珍しく、昼から夜まで通し営業を行なっており、時間的融通が効くのも利点の一つ。ランチメニューの提供は14時までで、ディナーコースはいつでも予約が可能です。
そして、そのディナーコースでこそ「るふ」は輝きを放ちます。王道路線の和食ランチに対し、ディナーでは客の五感を揺さぶる独創的な料理がずらりと並ぶのですから。
今宵の全11品・11,000円のコースも非凡そのもの。例えば一見普通なカンパチの刺身には、予期せぬ華やかな風味にハッとさせられました。
そのうまさの秘密は食材に施す「減圧加熱調理法」。この刺身の場合は、まず臭みを抜いた切り身を器具に入れ、10分間圧力を下げたら再度大気圧に戻す──という過程を5回繰り返します。加圧時には食材の細胞が開くので、その瞬間、一緒に加えた出汁の旨味成分が素早く染みこむのです。
それをさらに6時間以上寝かせたら出来あがり。その味と余韻は、静かな感動を覚えるほどのたおやかさでした。
美麗な霧島産のマス寿司(写真左)も減圧加熱調理を使った一貫。ネタには仕上げにクルミのスモークをかけ、バジル入りのシャリと共に芳醇な香りを楽しませます。
が、五味が畳み掛けるようなうまさでは済州島産の締めサバ寿司(同右)も譲りません。大葉・みょうが・ピンクペッパー・バターの香味が開くたび、豊かな滋味が口一杯に溢れました。
膨大な準備と手数が生みだす味は新鮮で、和の品格と娯楽性を調和させるセンスも文句なし。その送り手たる長谷川さんが目指すのは、新たな日本料理のスタンダードです。例えば海外の料理人が現地の食材で作っても、正しく“和食の粋”が伝わるような方程式を模索中だとか。
「前に海外にいた頃、形だけなぞった日本料理が普通に受け入れられる状況に疑問があって」と、この路線に進んだ理由を明かします。「ならば自分で違うアプローチを確立し、日本料理の概念と魅力を広げてみようと思いました」
以来、旺盛な行動力と好奇心で邁進する日々。国内では珍しい減圧加熱を手がけるのもその一環です。「こんな創作系は日本料理じゃない、との声もあるでしょうが、僕は皆さんに認められるまで努力を重ねるだけです」。この店最高のスパイスは、長谷川さんのひたむきな情熱かもしれません。
生ハム・クリームチーズ・秋鮭の白子・里芋・イチジクの揚げ物も印象的な小品でした。里芋は出汁で炊き、さらにワインと合うよう米味噌とゴルゴンゾーラを追加。白子は鮭の骨から煮出したスープに浸し、これまた減圧加熱で倍増させたコクを閉じこめています。
そう、ワインと言えばワイン党にも朗報! 「るふ」では抜栓せずに中身を注げる注目アイテム「コラヴァン」を導入しており、普段はボトルでしか出せない高級銘柄もグラスワインとして味わえるのです。とくに「ボルドー五大シャトー飲み比べ」(20,000円)は他店に真似できないプレミアムメニュー。本物の凄みに触れる貴重な機会ですよ。
そして、この日のメインは鹿児島産黒毛和牛のミスジ。3週間ドライエイジングをかけた肉を減圧加熱し、54℃で2時間低温調理してありました。野生味と共に立ち昇る風味が上品で、これは調理時に用いた自慢の出汁の効果でしょう。料理の格を一段引き上げるこの出汁は、昆布・マグロ・カツオ・サバ・アゴを通常量の倍も投じた旨味の塊です。
また隣に並ぶ折り鶴は、なんと端材のニンジンから作るベジシートで折った“エディブル折り紙”。こうして食材を徹底的に使い切るのも「るふ」の流儀で、長谷川さんの真摯さ・誠実さを見た気がしました。
すべての時間を仕事に注ぎ、全身全霊で理想を目指す長谷川さん。その“舞台裏”を聞くにつけ、11,000円は本当に値頃だと感じます。すると「ここは儲けるためじゃなく、僕の想いを広く知っていただくための場所。だからこそ、ずっとこの価格帯を守りたいですね」と返してくれました。
そんな揺るぎない信念が支える「るふ」は、終始驚きと楽しさが絶えぬ店。一度訪れたら、絶対誰かに話したくなる魅惑の新星です。
この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。
ジャンル:日本料理
住所:福岡市中央区高砂1-4-13ノーヴァルーチェ高砂1F
電話番号:092-233-5942 完全予約制
営業時間:11:30~OS20:00(ランチタイム~14:00)
定休日:不定
席数:カウンター6席
個室:なし
メニュー:ランチ2,800円・4,800円、ディナーコース7,700円・11,000円、ペアリングコース14,000円 ※酒類(昼夜共)とディナーはサービス料10%
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