PageTopButton

「宇宙飛行士に食べてもらいたい!」はかた地どりのおかゆにもち麦ぜんざい 九州初「宇宙日本食」を目指し

白米にカレー、うなぎ、ラーメン……日本人宇宙飛行士に宇宙でも日本食の味を楽しんでもらおうと開発された「宇宙日本食」は現在、52品目が認証されています。 九州で初めての認証を目指し、福岡県内の企業が挑戦を続けています。

宇宙で感じづらくなる“甘み”に対応

福岡県庁の食堂で2023年9月、期間限定で提供されたのは、地元の企業などが試作した「宇宙食」です。長期にわたる国際宇宙ステーション滞在中のストレスを和らげたり、パフォーマンスを上げたりしてもらおうと今、様々な国の料理を宇宙食にする開発が進んでいます。
日本からも現在52品目が「宇宙日本食」として宇宙航空研究開発機構(JAXA)に認証されていますが、九州の企業の食品は、まだ認証されていません。試作品のひとつを手がけたのは、久留米市の企業です。

ベストアメニティ商品開発部 新幸恵さん「宇宙用に開発した、“スペース雑穀米ぜんざい”です」

小豆と、モチモチした食感のもち麦を合わせたぜんざい。デザート分野の認証がまだ少ない中、元々販売していたぜんざいの商品を宇宙食用に再開発しました。味覚が鈍くなるといわれる宇宙でおいしく食べてもらうため、こんな工夫も…。

ベストアメニティ商品開発部 山本茉由さん「水分量が多いと食べづらいので粘度を調整したり、甘みも宇宙では感じづらくなるということで地上用よりも甘みを少しだけ強くしたりして、味の調整をしています」

想像を超える厳しく細かい認証基準

JAXAの認証を受けるには、サンプルの提出による適性評価、書類の審査に衛生環境の評価、品質検査など、様々な条件をクリアする必要があります。2022年から開発を始めた宇宙食用のぜんざいは、2023年10月に宇宙飛行士の試食などによる適性評価に合格しました。

ベストアメニティ商品開発部 新幸恵さん「想像していたよりもはるかに細かい衛生基準、認証基準がありますので、10段階でまだ2~3。これから書類の審査や工場の立ち入り検査など、必要な工程を経ていきたいと考えています。長い道のりです!」

福岡から宇宙へ 夢があることに挑戦したい

2022年、世界における宇宙産業の市場規模は、3840億ドル(日本円で57兆円あまり)にのぼりました。2040年には1兆ドル(150兆円規模)にまで拡大すると予測されています。
世界各国が開発に力を注ぐ宇宙食、福岡県内で最も認証に近づいているのが、久留米市の福栄組合が開発した「はかた地どりともち麦のお粥」です。

RKB原口佳歩「鶏のうまみがふわっと広がって、食べ応えもあります」

認知機能の低下を防ぐ成分が豊富な「はかた地どり」をたっぷりと使い、味付けは塩のみと、体への優しさにもこだわりました。

福栄組合 中垣誠理事「九州で一番、福岡県でも一番初めにJAXAの認証を受けた食品を作って、“福岡から宇宙へ”という、夢があることをやってみたいなと思っています」
 

災害時にも活用できる宇宙食

12月に1次審査を控え、宇宙日本食への認証に一歩ずつ近づいていますが、実は、開発にはもうひとつの思いもありました。

福栄組合 中垣誠理事「今年も水害がありましたよね。『宇宙食=災害食』と考えているんですが、長期保存ができて災害食にマッチし、しかも体によくておいしいものを作りたい」

宇宙日本食に認証された食品は、1年半以上の賞味期間があり厳しい基準をクリアしているとして、災害時の非常食としての活用も期待されています。宇宙でもおいしく食べられる食品の開発は、宇宙への夢が広がるだけでなく、災害への備えとしても大きな意味を持ちます。

宇宙日本食の開発・認証を行政も支援していて、福岡県は開発費などの補助やセミナーの開催などで後押ししています。

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

深掘り!特集

もっと見る