レトロな空間とメニューに胸くすぐられる、カウンター6席の小さな喫茶店

新旧のお店が連なるも下町風情を残す警固本通りに10月にオープンした「喫茶カヤ」。開業からまだ間もないのですが、レトロな雰囲気を醸し出し、前からそこにあったかのように町並みに溶け込んでいます。

店の広さはわずか6坪、席もカウンター6席のみの小さなお店です。「この場所には長きに渡りディープな酒場があったのですが、いきなりガラリと雰囲気が変わると、当時の常連さんがたちがきっと寂しく感じられるんじゃないかなと思い、前のお店の内装をできるだけ残しました」と話す店主の魚住綾さん。その根底に警固エリアへの並々ならぬ愛を感じます。

魚住さんの経歴は少しユニークで、もとは幼稚園の先生でした。10年ほど勤めた頃に、「もっと幼稚園の先生を極めたい」と幼稚園発祥の国・ドイツへの留学を目標にドイツ語を習い始めましたが難しすぎて中断。「ドイツ語の前にまず英語を勉強しよう」とアイルランドへ語学留学しそこでカフェという場に魅せられて、目指すものをカフェへと方向転換しました。帰国後、5年ほど「スターバックスコーヒー」で働き、さらに警固の「あだち珈琲」にも3年勤め、コーヒーの知識や技術、接客などを学んだといいます。

勤めていた幼稚園が警固にあったため「この町に愛着があって、お店をやるならどうしても警固に開きたかったんです」と魚住さん。店舗が見つかるまで1年半ほど待っての開業でした。

前の店舗の内装に合わせ、カフェというより喫茶店に寄ったお店にしたそうです。メニューの核であるコーヒーは「あだち珈琲」の豆を使い、「ブレンド」（500円）、「シングルオリジン」（680円）、「デカフェ」（550円）があって、淹れ方はハンドドリップかフレンチプレスかを選べます。また、コーヒー以外にも「カフェ・オ・レ」（600円）のようなアレンジコーヒー、紅茶やソフトドリンク、アルコールもあります。

フードもザ・喫茶店という懐かしいメニューが載っていてそそられます。コーヒーに合わせて食べてみたい、喫茶店らしいものをいくつか注文しました。

喫茶店といえばトーストですよね。「カヤ」には5種類のトーストがあり、今日は「ピザトースト」（680円）を選びました。アラジントースターで焼き上げる厚切りトーストは、端がちょとだけ焦げて香ばしく中はふんわりしています。ソースは料理研究家・grantavolaによるオリジナルソースで、さっぱりとしていてトマト本来の酸味と甘みが味わえます。トーストのパンは警固の「totcha bakery」と那珂川の「大名（だいな）商店」のパンを交互で使用しているそうです。

続いて「自家製ホットケーキ」（780円）です。見てください、この素朴さ。映えるパンケーキとは真逆の硬派な佇まいに、エモささえ感じます。鉄のフライパンで焼く生地は、薄力粉、強力粉、全粒粉、キビ砂糖、アーモンドローストプードル、そして塩を配合。シンプルな味わいですが噛むほどに生地の風味が深まり、甘さ抑えめのパウンドケーキのような印象を覚えました。目玉焼きやベーコンをトッピング（各＋120円）すればランチにもよさそうです。

そして、スイーツから「クラッシックプリン」（450円）をチョイス。蒸しプリンでやや固めのプリンは卵の風味がしっかり感じられ、これまた甘さ控えめで「君も硬派なタイプやなぁ」と思わせる一品でした。

最後にもう一つ、喫茶店といえばメロンソーダのクリームソーダがど定番ですが、「カヤ」では極力自家製のものを出したいと自家製レモンシロップをソーダで割った「レモンクリームソーダ」（700円）を提供しています。三温糖、蜂蜜、レモンだけでシロップを作ってあり、すっきりとした口当たり。飲んだ後のシメにもよさそうです。

店名の「カヤ」は、サードウェーブコーヒーの街・ポートランドに旅行に行ったときに出あった言葉「Come As You Are（あなたのままでいていい）」の頭文字「CAYA」からとったものだそうです。そこにはコーヒー、コミュニティ、カウンター、サークルの頭文字「C」が入ってあり、また魚住さんのお名前「AYA」も入っているという何たる運命的な言葉！　「この言葉のようにありのままに自分の好きなものを取り入れてお店を開きました。これからもお客さんとも相談しながら、柔軟にいろいろと好きなように変えていきたいです」と話します。

魚住さんの“好き”の集まりはコーヒーを飲む人もお酒を飲む人も、子どもも大人も、誰をも受け入れてくれます。お店の雰囲気だけでなくソフト面でも、人々が集うこの警固の町にすぐに溶け込んでいき、いずれは町とお店のケミを起こしてくれそうだと早くも期待が高まりました。

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