緊急搬送された妻を支えるため、34年間の野球人生にピリオドを打ったホークスの元タイトルホルダー~夫婦で歩む第二の人生~
「初めてのお客さんと話すのは難しいですね」 こう話すのは、今季まで14年間ホークスのピッチングコーチを務めた田之上慶三郎さん(52)。34年間の野球人生に自ら別れを告げ、第二の人生に選んだのはオープンしたばかりのカフェで妻を支えることだった。
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多忙な妻が過労で倒れた
夫が現役を引退しコーチに転身、子育ても一段落した頃、兄から突然の電話。「店を手伝って欲しい」創業120年を超える婦人服店は真喜子さんの実家で、兄が家業を継いでいた。だが3年程前、病に倒れ、店に立てなくなったため、真喜子さんが店の経営を引き受けることになった。当時はコロナ禍もあって決して順風満帆というわけではなかった。「老舗のお店を、私がたたむわけにはいかない。新規のお客さんを開拓しなきゃ」そこで始めようと決めたのが、店舗の一部を改装し、常連客もくつろげるカフェや地元特産品の販売店を併設することだった。夫と同じく、仕事に妥協をしない妻は、内装や調度品に徹底的にこだわり、カフェの準備を進めた。準備に没頭し過ぎるがばかり、気が付けばお店で日付が変わっていたこともしばしば。だが、とうとう体が悲鳴を上げた。過労でめまい等の症状が出て救急車で緊急搬送。年末年始を病院で過ごすこととなった。
「緊急搬送された妻を支えたい」 退団を決めた
妻が体調を崩したのを見て、野球漬けだった夫の考えが大きく変わった。「これまで自分を支えてくれた妻を、今度は自分がサポートする番だ」真喜子さんにこのことを相談すると「お店のことは私が何とかするから、野球を続けてもらっていいよ」の返事。そんな妻の思いやりあふれる言葉に夫婦の絆を感じた夫は「一緒に楽しくお店をやっていこうや」今年夏、球団に退団を申し入れた。
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