春が近づき、確定申告の時期がやってきました。2024年提出(令和5年分)の確定申告は、前回の2023年提出の時と比べ、書き方や申告方法にいくつか変更点があります。変更点はさほど多くはないものの、該当する方は気をつけなければなりません。
どこがどう変わったのかを一つずつ解説していきますので、スムーズに確定申告を行うためにチェックしておきましょう。
2024年提出(令和5年分)の確定申告書類の変更点
2024年提出の確定申告では、具体的にどの部分が変更になったのでしょう。
以下、それぞれの書類別に解説します。
・確定申告書 第二表:親族欄の書き方の変更
・確定申告書 第二表:特定株式の収入に関する「申告不要制度」の記入欄が削除
・青色申告決算書:インボイス制度に対応
・収支内訳書(白色申告):インボイス制度に対応
確定申告書 第二表:親族欄の書き方の変更
第二表では、配偶者や親族に関する事項(⑳~㉓)欄の「国外移住」の記入方法が変更されています。
2023年版では”国外”のチェックを入れるか入れないかの表記となっていましたが、2024年版では、□内に1~5の該当する数字を記入する形式に変更されています。
□に記入する1~5の数字の判断基準は上記の表に準じる形となり、たとえば、国外移住している家族が30歳以上70歳未満であり、かつ障害者の場合、「3」に該当します。
変更された背景には、2023年1月より、国外居住親族に対して、日本の税制における扶養控除の要件が厳しくなったことが関係しています。
確定申告書 第二表:住民税・事業税に関する事項欄の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の項目が削除
また同じく第二表では、「住民税・事業税に関する事項」欄の住民税・事業税に関する事項欄の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の項目が削除されています。
2023年版には「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の項目がありましたが、2024年版では、項目そのものが削除されています。
これまで上場株式などの配当所得や譲渡所得、特定公社債などの利子所得については、所得税と住民税でそれぞれ課税方式を選ぶことができました。たとえば、所得税では総合課税を選択し、住民税では申告不要を選択することも可能でした。しかし2023年度の税制改正により、公平性を考慮し、所得税と住民税で課税方式が統一される形となりました。これまでのように所得税と住民税の「いいとこどり」ができなくなり、「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」の記入欄も併せて削除されています。
青色申告決算書
青色申告決算書の様式がインボイス制度に対応したものに変更されました。
2023年度版までは存在しなかった「売上(収入)金額の明細」欄と「仕入金額の明細」欄が、2024年版より新たに設けられました。登録番号(法人番号)を記入する箇所も用意されており、ここにインボイス制度の登録番号を記入することになります。
収支内訳書(白色申告)
白色申告用の収支内訳書もインボイス制度に対応したものに変更されました。
青色申告決算書とは異なり、これまでの収支内訳書にも「売上(収入)金額の明細」欄と「仕入金額の明細」欄は存在していました。2024年版はそこに登録番号(法人番号)の項目が新たに追加された形となります。
2024年より確定申告書等作成コーナーの機能拡大
国税庁ホームページにある「確定申告書等作成コーナー」では、電子画面上で確定申告書等の作成が行えます。2024年提出の確定申告より、確定申告書等作成コーナーの機能が充実し、より便利に使えるようになりました。
マイナポータル連携の拡大
「マイナポータル連携」とは、所得税確定申告の手続において、マイナポータル経由で、控除証明書等のデータを一括取得する機能です。該当の項目が自動で入力されるため、確定申告書等作成コーナーでの申告書作成がよりスムーズに行えます。
2024年提出の確定申告では、このマイナポータル連携の対象に以下が加わります。
・給与所得の源泉徴収票
・国民年金基金掛金
・iDeCo
・小規模企業共済掛金
源泉徴収票やiDeCoなどのデータを自動で取り入れられるため、該当者はより簡単に申告書を作成できます。
インボイス発行事業者の「2割特例」の申告にも対応
「2割特例」とは、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった方を対象とした負担軽減措置であり、消費税納税額を売上税額の2割に軽減することができます。
この2割特例の申告において、売上(収入)金額等を入力するだけで税額等が自動計算される機能が確定申告書等作成コーナーに追加されており、スムーズに算出できます。
2024年の確定申告の期間
2024年の確定申告の期間は、2024年2月16日(金) から3月15日(金)までです。還付申告書は、2024年2月15日(木)以前でも提出可能です。
例年通り、期限間近になると税務署の混雑が予想されますので、相談などがある場合は早めに行い、余裕を持って提出したいところです。なお税務署の閉庁日(土日・祝日等)は、税務署での相談及び申告書の受付は通常行っていないため注意しましょう。
以上、2024年提出の確定申告の変更点について解説しました。大きな変更はないものの、細かな部分の記入方法が変わっていますので、該当する方は間違えないように記入したいところです。また、確定申告書等作成コーナーの機能もより充実したため、紙面で提出していた方は今年から電子申告に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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