PageTopButton

今や博多を代表するB級グルメ 〝ぐるぐるとり皮〟 を生み出した店はどこ?

UMAGA

串にぐるぐると巻きつけた「とり皮」は、いまや博多のB級グルメとして全国区になりつつある。カリっとした歯ごたえと甘辛い醤油タレの香ばしい風味が後を引き、自然に2本、3本と手が伸びる。

権兵衛館 外観

 この、〝ぐるぐるとり皮〟発祥の店と言われているのが「権兵衛館」だ。1968年に古賀貞巳氏(現会長)が福岡市城南区友泉亭で創業。店名は当初名前が決まらず「名無しのゴンベエ」と呼ばれていたことに由来して付けられた。広さ8坪、屋根はスレート張りの片屋根に天井はベニヤ板、カウンター14席という簡素な設えでのスタートだった。
 とり皮は一般的に捨てられていた時代だった。そこに着目した古賀さんはとり皮を安く仕入れて看板商品をつくることに心血を注いだ。
 首の皮は、鶏が最も動かしている部位のため体の皮よりも脂が少なく、焼いた時にパリッと仕上がることが分かった。そしてお客が食べやすいように串に巻いて焼くことを考案する。あとは味付けだ。まずは素焼きで脂を落とし、タレにつけて二度焼きしてみた。だが、脂がサラサラのタレをはじいて馴染まない。そこで二度焼きして寝かしたものに再びタレを絡め焼いてみる。そうするとタレの味が皮にしっかりとのることを発見したのだ。研究の成果が生んだ手間ひまを惜しまない魅力的な一品はたちまち常連客の胃袋をつかむことになる。当時は1本30円で提供していた。

 開店から10年目を迎えた1978年中央区大名に店を移転。「とりかわ」をもっと女性にも食べてほしいとサイドメニューを増やし店内にはジャズも流した。その後は市内を中心に展開し、最盛期(1988年頃)には約30店舗を構えるまでに。現在は本店の大名店を含め5店舗を運営するとともに、フランチャイズで全国に10店舗を展開している。創業から50年を過ぎた今、本店の焼き場に立つ後藤正行オーナーは、「50年前は捨てられていたとり皮が福岡名物になるなんて誰が想像したでしょうね」
と目を細める。
 いわゆる権兵衛スタイルの〝ぐるぐるとり皮〟は今では「かわ屋」「とりかわ 粋恭」「博多とりかわ大臣」などに引き継がれいずれも繁盛している。
「こうしてうち発祥の『とり皮』が広まり、『福岡のとり皮だ』と言っていただけることは嬉しいですね。これからも『権兵衛館』はとり皮の新しい可能性を探り続けます」
 後藤さんは取材の最後に、そう締めくくった。   

【権兵衛館】
福岡市中央区大名2-1-43
☎ 092-714-2296

この記事は「福岡グルメトリビア~ン」(2020年・聞平堂刊)から転載させていただきました。
本のお求めはアマゾンで。

トリビア~ン 表紙

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

radiko 防災ムービー「あなたのスマホを、防災ラジオに。」

この記事を書いたひと

UMAGA

homePagefacebookyoutubexinstagram

魅力的な福岡の食文化をもっと楽しんでいただくためのバイブルとして、厳選した信頼性のある情報を毎日更新中。