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福岡名物の揚げたて天ぷら定食は吉塚の「だるま」から始まった

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一品ずつ皿の上に乗せられる揚げたての天ぷらの衣はプツプツと泡立つ。すぐに箸で取り、大根おろしの入った天つゆにくぐらせ口に運ぶと、薄い衣がサクリと音を立てる。テーブルには食べ放題の塩辛や漬物。福岡で人気の博多天ぷら定食は、「ひらお」や「たかお」などの人気店が存在するが、そのスタイルの元祖は、吉塚の「だるまの天ぷら定食」だ。

だるま 外観

創業者の岡本茂さんはもともと天ぷらをメインに出す住吉の高級料亭の板長だった。天ぷらを安い価格で大衆にも味わってほしいと考え、独立して1963年に開店したのが前身の「だるま食堂」だ。7坪の店内にはカウンター7席のみ。食堂としてスタートし、天ぷら定食を110円、ちゃんぽんを70円、ほかにも日替わり定食やうどんをメニューに掲げていた。当時、店舗近くにタバコ工場があり、店には工場の従業員たちが集い、社員食堂のようになっていたそうだ。
なかでも天ぷら定食は大勢の客をとりこに。最もおいしい状態で味わえるように、カウンター越しに揚げたてを一つずつ提供した。さらに、お客を驚かせたのが天つゆだ。高級店では天ぷらには天つゆを合わせるが、当時大衆店ではソースが一般的だった。初めて見るのか、「なんだこの汁は!」と驚くお客が多かったそうだ。
オープンから2ヵ月ほどで店には長蛇の列ができ、すぐに天ぷら一本に絞り専門店に変更した。しばらくして店を14坪にリニューアルし、14席に増やしたが、お客は増え続け、1時間以上待たないと入店できないこともあったほどだそう。今の、カウンター13席、テーブル24席にまで店を広げたのは1985年のこと。そうしてだるまは50年以上続く老舗となったのだ。

天ぷらメニューに欠かせないイカは、足や耳などの切れ端がどうしても残ってしまう。カウンター17席の時代から、「もったいない」と塩辛にして無料で出すようにした。ほかにも、魚の頭など天ぷらに使えない部位を調理して食べてもらったりもした。これが無料の塩辛や漬物サービスの始まりだ。
岡本さんから二代目の末次一成さん(※1)に代替わりし、数年前に息子の誠吾さんに引き渡した。創業者の想いは3代目までしっかりと伝わっている。「仕入先のことは考えず、客のことだけを考える」。このサービス精神が、博多独特のスタイルを作り出したのだ。                          

【だるまの天ぷら定食 吉塚本店】
福岡市博多区吉塚1-22-1
TEL. 092-622-9424

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