ここ数年、新卒者の初任給は上昇しつつあり、大卒の初任給が30万円を超える企業もよく話題に上がります。しかし、すべての企業が初任給を引き上げているわけではありません。実際、社会全体でみると、今の新卒者の初任給はどの程度が平均的なのでしょう。
今回は、最新のデータをもとに、学歴・男女・会社規模・業界別の初任給額をまとめてみました。初任給の今を知り、就職や転職にお役立てください。
初任給はいくら?どの程度増えている?
賃金構造基本統計調査によれば、直近2022年(令和4年)における初任給の平均額は「21万7000円」です。
以下の表には、直近6年分の初任給と年収の推移をまとめます。
参考:「賃金構造基本統計調査」の新規学卒者(各年度)より
※年収は小数点第2位以下切り捨て
近年の推移をみると、2019年までは長らく19万円前後で推移していましたが、2020年より一気に底上げされ、21万円台に突入しています。
初任給引き上げの理由としては、物価上昇の影響が挙げられますが、少子化により若手社員の奪い合いが続く中、人材を呼び込むために初任給の条件を良くしている会社も増えているようです。
学歴別にみる初任給の平均額
最終学歴によっても初任給に差が生じます。
2022年度(令和4年度)の学歴別の平均初任給は以下の通りです。
中卒:17万8400円
高卒:18万1200円
専門学校卒:21万2600円
高専・短大卒:20万2300円
大卒:22万8500円
大学院卒:26万7900円
参考:「賃金構造基本統計調査」の新規学卒者より
ご覧のように、学歴が高くなるほど初任給の平均額も高くなり、中卒と大学院卒では約9万円もの差が生じています。
よく注目される大卒の初任給は、2022年(令和4年)で22万8500円でした。2019年(令和元年)の大卒の初任給は20万6700円であったため、このわずか3年間で約2万円増えたことになります。
男女別にみる初任給の平均額
初任給において、男女の性別的な格差は生じているのでしょうか。
2022年度(令和4年度)の男女別の平均初任給は以下の通りです。
男性:21万8000円
女性:21万5900円
男女計:21万7000円
参考:「賃金構造基本統計調査」の新規学卒者より
男性の方が高めですが、その差は数千円程度と、誤差の範囲とも見られます。また、業種によっては男性よりも女性の初任給の方が高いこともあり、ケースバイケースともいえる状況です。
企業規模別にみる初任給の平均額
中小企業と大企業では、どの程度初任給に差があるのでしょうか。
2022年度(令和4年度)の企業規模別の平均初任給は以下の通りです。
10~99人:20万4700円
100~999人:21万3200円
1000人以上:22万7900円
企業規模計:21万7000円
参考:「賃金構造基本統計調査」の新規学卒者より
ご覧のように、企業規模が大きいほど初任給の額も高くなる傾向です。 10~99人の小さな企業と1000人以上の大企業とでは、初任給に約2万円以上の差が生じています。
産業別にみる初任給の平均額
就職先の産業や業種によっても、初任給の額に差があります。
2022年度(令和4年)の産業別の平均初任給は以下の通りです。
鉱業、採石業、砂利採取業:22万8000円
建設業:21万5800円
製造業:19万9900円
電気・ガス・熱供給・水道業:21万3500円
情報通信業:23万500円
運輸業、郵便業:20万9100円
卸売業、小売業:22万2600円
金融業、保険業:21万8100円
不動産業、物品賃貸業:23万700円
学術研究、専門・技術サービス業:24万300円
宿泊業、飲食サービス業:19万6000円
生活関連サービス業、娯楽業:19万9400円
教育、学習支援業:22万5600円
医療、福祉:22万5500円
複合サービス事業:19万2700円
サービス業(他に分類されないもの):20万6200円
産業計:21万7000円
参考:「賃金構造基本統計調査」の新規学卒者より
初任給の高い産業としては、「学術研究、専門・技術サービス業」の24万300円、「不動産業、物品賃貸業」の23万700円などが該当します。
一方、初任給の低い産業としては、「複合サービス事業」の19万2700円、「宿泊業、飲食サービス業」の19万6000円などが該当し、平均初任給が20万円以下の業界も少なくありません。
高い方が良いとは限らない!?初任給以外に見るべきポイント4つ
最後に、初任給の額を見る際に注意したいポイントを紹介します。初任給が高い求人が必ずしも良いとは限らないため、冷静に判断したいところです。
残業代などが含まれているケースがある
初任給30万円のような求人の場合、内訳を見ると「基本給22万円+固定残業代〇時間分含む」と記載されていることがあります。このように、残業代を含めたうえで、基本給の額を高額に見せているケースもあるため、内訳はしっかりと確認しておきたいところです。
昇給率や将来のモデルケースも確認
初任給が高い分、その後の昇給が緩やかで、将来的な収入がさほど伸びない会社もあります。そのため初任給だけでなく、入社3年目、入社5年目といった先輩社員の年収モデルケースや、昇給スピードについても、併せて確認しておきたいところです。
福利厚生制度にも注目
初任給だけでなく「福利厚生制度」の面も収入に大きく影響します。たとえば家賃補助として5万円支給される会社であれば、家賃補助のない会社と比べ、初任給が実質5万円多いと捉えることもできます。他にも、通勤手当・住宅ローン手当・結婚出産祝い金・資格取得補助・持ち株制度など、福利厚生制度にはさまざまなものがありますので、福利厚生で得られる金額も考慮したうえで判断したいところです。
インセンティブで収入が増えることも
営業職などでは「インセンティブ制度」を採用していることがあり、成果を出すことで、初任給とは別にインセンティブ報酬が貰えることがあります。初任給の額はさほど高くなくとも、インセンティブ報酬により給料が倍増するケースもありますので、インセンティブが貰えるかも併せて確認しておきたいところです。
以上、初任給事情について紹介しました。物価上昇により社会全体的に初任給は増加しつつありますが、中には初任給の増額を行っていない会社や業種もあります。初任給の額によっては新入社員のうちは生活が苦しくなることもありますので、どの程度の額が貰えるか、また福利厚生制度がどのようになっているかなども事前によく把握しておきたいところです。
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