インクと活字と山田さん
インクの香り、古い印刷機のリズミカルな機械音、壁一面に並ぶ鉄製の活字。1972年に創業した街の印刷屋さん「文林堂」(福岡市城南区鳥飼)は、まるで昭和にタイムスリップしたかのような佇まい。トレードマークのエプロン姿で、仕事に打ち込む山田善之さん(82)は、昔ながらの活版印刷を今も守り続けています。
山田さんは印刷業だった父親の手伝いで幼い頃から活版印刷機に触れてきました。時代の波に押され一度は古い機械や活字を手放しますが、その魅力が忘れられませんでした。山田さんは活字や部品を全国から少しずつ集め、「活版印刷職人」として再スタートを切りました。
プリンターならあっという間にできてしまう物も、一枚一枚丁寧に手作業で刷っていく。仕上がった印刷は、何とも言えない温かい味わいが魅力です。「利益にはならないんですよ。でも仕事と思っていないんです。遊び場。楽しいですよ。」と微笑む。
山田さんが大切にしている仕事は名刺づくりです。どんな名刺を作りたいのか?どんな思いを込めたいのか?山田さんはお客さんと話しながら時間をかけてデザインを仕上げます。活版印刷に人生をかける、あったかくて優しい、山田さんの日常を描きます。
(制作:RKB毎日放送/吉賀 亜希子)
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