「新しいエアコンは省エネ性能が高い」「古いエアコンは電気代がかかる」とよく言われますが、これは本当でしょうか。
今回は2024年最新モデルのエアコンと、10年前の2014年のエアコンでは、どの程度電気代に差があるのかを比較します。設定温度の影響や日々の節約術も併せて紹介しますので、夏が到来する前にエアコンの理解を深めておきましょう。
エアコンの期間消費電力量(電気代)の計算の仕方
エアコンの場合、電気代は消費電力(W)ではなく「期間消費電力量」で測ることが多いです。ここでは期間消費電力量の概要や電気代の計算方法について解説します。
期間消費電力量とは?
「期間消費電力量」とは、エアコンを1年間、冷暖房で使用した際に消費する電気の量の目安です。エアコンは運転中に消費電力が大きく上下する家電であるため、この期間消費電力量を重要視することが多いです。
2013年よりJIS規格に基づき表示されており、以下の算出基準で割り出されています。
■算出基準
外気温度:東京をモデル
設定温度:冷房時27℃/暖房時20℃
期間:冷房期間(5月23日~10月4日)
暖房期間:(11月8日~4月16日)
時間:6:00~24:00の18時間
住宅:JIS C9612による平均的な木造住宅(南向)
部屋の広さ:機種に見合った部屋の広さ
期間消費電力量を使った電気代の計算
期間消費電力量を使い、以下の計算式で1年間の電気代が割り出せます。
期間消費電力量(kWh)×電気代単価(31円/kWh※)=1年間の電気代
たとえば期間消費電力量が1000/kWhのエアコンであれば、1年間の電気代は3万1000円となります。
※電気代単価は、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が制定している電気料金31円/kWhを利用
最新モデルと10年前モデル、1年間の電気代を比較
「エアコンは新しいほど電気代が安い」といわれることが多いですが、本当でしょうか。ここでは最新モデルと10年前のモデルの1年間の電気代の差を、6畳タイプ、10畳タイプ、23畳タイプの3タイプで比較します。
6畳タイプ
東芝のエアコン『大清快』の最新上級モデルとなる「N-DRシリーズ」の6畳タイプ「RAS-N221DR」の期間消費電力量は594kWhです。対して10年前当時の上級モデルとなる「GDRシリーズ」の6畳タイプ「RAS-221GDRH」の消費電力は612kWhです。
1年間の電気代の差:
最新(2024年):594kWh×31円/kWh=1万8414円
10年前(2014年):612kWh×31円/kWh=1万8972円
差額:558円
10畳タイプ
東芝のエアコン『大清快』の最新上級モデルとなる「N-DRシリーズ」の10畳タイプ「RAS-N281DR」の期間消費電力量は757kWhです。対して10年前当時の上級モデルとなる「GDRシリーズ」の10畳タイプ「RAS-281GDRH」の消費電力は815Whです。
1年間の電気代の差:
最新(2024年):757kWh×31円/kWh=2万3467円
10年前(2014年):815kWh×31円/kWh=2万5265円
差額:1798円
23畳タイプ
東芝のエアコン『大清快』の最新上級モデルとなる「N-DRシリーズ」の23畳タイプ「RAS-N712DR」の期間消費電力量は2276kWhです。対して10年前当時の上級モデルとなる「GDRシリーズ」の23畳タイプ「RAS-712GDR」の消費電力は2741Whです。
1年間の電気代の差:
最新(2024年):2276kWh×31円/kWh=7万556円
10年前(2014年):2741kWh×31円/kWh=8万4971円
差額:1万4415円
比較の考察
上記の比較の通り、最新モデルと10年前のモデルの1年間の電気代の差額は、6畳タイプでは558円、10畳タイプでは1798円と僅かな差です。独身世帯等が使うこのクラスのサイズであれば、10年前のエアコンとさほど消費電力は変わっていないようです。
一方で23畳タイプとなると、差額は1万4415円に跳ね上がります。このような大型サイズのエアコンであれば、最新型を購入することで節電効果をハッキリと感じやすいでしょう。
エアコンの設定温度・外気温で消費電力はどれだけ変わる?
エアコンは、設定温度や外気温の条件により、消費電力が上下します。1℃変えるとどの程度の差が生じるのか知っておきましょう。
設定温度1℃による消費電力の差
環境省によれば、夏は設定温度を1℃高くすることで消費電力が13%削減、冬は設定温度を1℃下げることで消費電力が10%削減できるとのことです。また室温は夏は28℃、冬は20℃とすることが推奨されています(設定温度ではありません)。
いくら節約になる?
資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト(エアコン)」によれば、エアコンの設定温度を1℃変更した場合の節約金額について、冷房の場合は年間940円、暖房の場合は約1650円と集計されています。
■冷房:
外気温度31℃の時、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から1℃上げた場合(使用時間:9時間/日)
年間で電気30.24kWhの省エネ、原油換算7.62L、CO2削減量14.8kg、約940円の節約
■暖房:
外気温度6℃の時、エアコン(2.2kW)の暖房設定温度を21℃から20℃にした場合(使用時間:9時間/日)
年間で電気53.08kWhの省エネ、原油換算13.38L、CO2削減量25.9kg、約1,650円の節約
エアコンの電気代を少しでも節約する方法
最後に、エアコンの電気代を1円でも安く抑えるための節約テクニックを紹介します。できるところから、コツコツと削減していきましょう。
自動運転を活用
「自動運転モード」は、設定温度に到達するまで最大運転を行い、到達後は弱運転や送風運転で効率よく部屋を冷やします。エアコン側が自動で判断し最も効率のよい動きをするため、積極的に活用したい機能です。
風向きを調整
冷たい空気は部屋の下の方に溜まり、暖かい空気は部屋の上の方に溜まる特性があります。そのため風向きの設定は、冷房時は「水平もしくは上向き」、暖房時は「下向き」にすることで、熱を効率よく分散でき、余計な電力消費を抑えられます。また冷房時にはサーキュレーターを設置し、天井に向けて風を送ることで、下に溜まった冷たい空気を循環させることができ相乗効果を得られます。
フィルターを掃除する
フィルターが汚れていると、エアコンの動作の妨げになり、電力が余計にかかってしまいます。フィルターの掃除は2週間に1度がベストです。特に久しぶりにエアコンを稼働させる場合には、忘れずフィルター掃除をしておきましょう。
室外機の掃除
室外機が汚れていると、空気の行き来がスムーズにできなくなり、電力が余計にかかってしまいます。以下の点に気を配りながら、定期的に室外機の掃除も行いましょう。
・室外機周りのゴミや枯れ木などを掃除する
・ボディ表面の汚れは雑巾などで拭く
・熱交換器(フィン、ファン)はブラシの付いた掃除機などで掃除する(力を入れすぎると部品が曲がることがあるので注意)
・水抜き穴に詰まった汚れやゴミを、ブラシや割り箸を使って取り除く
など
以上、最新のエアコンと10年前のエアコンの比較と節約テクニックをお伝えしました。
今回比較したように、6畳タイプ、10畳タイプのエアコンであれば、10年前のエアコンとさほど消費電力は変わっていないため、劇的な節電効果は期待しない方がよさそうです。一方で23畳以上の大型エアコンは、10年前のモデルと比べ年間1万円以上の節約となることがあるため、積極的に買い替えを検討してみるのもよいかもしれません。
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