日本の酷暑から逃れるべく、早めに夏季休暇を取得し、南半球ニュージーランドへ出かけた。
私が訪れたタウポという北島の街は、青く澄んだ湖、緑豊かな山々に囲まれ、少し車を走らせれば茶色い牧草地と、絵画のような景色が広がっていた。日中、空を見上げるとスカイダイビングを楽しんでいる人がいて、夜は、満天の星空があたり一面を包み込む。透明な空気が全てを鮮やかに彩り、気が付けば、日本にいる時よりも呼吸が深くなっているようで、心の底から空気がおいしいと思えた。美しい自然と穏やかな気候が、優しい心を育むのだろうか。タウポの人々は皆、明るく、温かかった。初対面の人でも「楽しんでいますか」「今日は何をして過ごしていますか」と、声を掛け合うことが当たり前のようだ。別れ際には必ず「グッデイ!」(良い一日を)と、相手が幸せな時間を過ごせるよう願える寛容さに、心のゆとりを感じた。
そして、何より自分たちの時間も大事にしている。街中でも、夜遅くまで営業しているお店が極端に少ない。図書館に行くのを楽しみにしていたが、日曜日は休館だった。地元の人に聞くと「休みの日は皆、休んでいる」ということだった。ニュージーランドの人々は、時間の使い方もうまいのかもしれない。
7月27日(土)毎日新聞掲載
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