※今回ご紹介のお店
そばのみ やなせ(薬院)
POCO MUCHO(白金)
福岡の食を支える「中村学園」の卒業生
中村学園三陽高等学校
2024年に創立70周年を迎えた、“食の中村”こと「学校法人中村学園」。1954(昭和29)年に「福岡高等栄養学校」を開校したのがそのはじまりで、多くの料理人や食産業に携わる人材を輩出していることで有名です。UMAGAでは70周年を記念し、卒業生が営む店、活躍する店を探訪しています。
シリーズ5回目となる今回は「中村学園三陽高等学校」出身の兄弟が、それぞれ手がけている2軒のお店へ。兄・柳瀬孝行さんが営む薬院の「そばのみ やなせ」と、弟の柳瀬基喜さんが営む白金の量り売り専門店「POCO MUCHO」をご紹介します。
京仕込みの料理も自慢!
お酒が進む「そばのみ やなせ」
薬院大通駅の裏手、浄水通りの入口でひっそりとした佇まいをみせるのが「そばのみ やなせ」。店名の通り、つまみと共にお酒を楽しみ、蕎麦で締める……という“蕎麦呑み”を楽しめる一軒です。店内に据えるカウンターやテーブルはすべてイチョウ、床材はヒノキだそうで、カジュアルな中にも質の良さがキラリ。
柳瀬さん兄弟の実家は、小石原焼で有名な朝倉郡東峰村にある「会席手打ちそば 京や」で、孝行さんは「いずれ自分も料理の道へ」という気持ちを学生時代から持っていたそう。しかし、当時は海外への興味も強く、「中村学園三陽高等学校」に「国際情報系進学コース」が新設されると知り、専願受験で入学。高校時代から卒業後についてこう振り返ります。
「ボランティアで世界各国の子供達と交流したり、オーストラリアへホームステイをしたり……学生時代に世界を知る体験ができたおかげで視野はぐんと広がりました。寮生活だったこともあり成績はなかなか優秀だったのですが(笑)、“大学進学を!”と言う先生の説得を押し切り、卒業後は京都の老舗料亭へ就職しました。実家や福岡を離れて広い世界を見たい、日本料理の本場とも言える京都で腕を磨きたいと考えたんです。料亭では良い先輩方に恵まれ『焼き場』『揚げ場』、刺身を切る『刺し場』まで担当させてもらえたことも幸運でした」。
ミシュラン一つ星の料亭で4年間みっちりと基礎を学んだ後は、菓子の勉強もしたいと製菓の専門学校に入学し、製菓衛生師の資格を取得。生麩・湯葉の店、炉端焼き店、創作料理店でも腕を磨くなど13年に渡り京都で研鑽。帰郷後は父の元で蕎麦打ちを学び、2020年12月に「そばのみ やなせ」を開業しました。
昼のメニューは蕎麦が主体ですが、夜はこれまでの経験を活かして作るアテや一品料理、本格的なデザートまで勢揃い。毎朝市場や鮮魚店、青果店に足を運んで目利きする鮮魚の刺身や旬菜の天ぷら、糸島牛のステーキといった肉料理まであり、蕎麦よりも料理が主役!と言わんばかりのラインナップです。
最初にいただいたのは、蕎麦つゆをたっぷりと含ませて作るプルンプルンの「蕎麦屋のだしまき」(880円)。鰹節、昆布、イリコ、椎茸などでとった上品な出汁が、これでもかと溢れ出します。季節の日本酒は十数軒の酒販店から仕入れており、滋賀の純米酒をはじめ福岡ではあまりお目にかかれないレア物も多数。フランスを中心としたワインも60種類ほどが揃い、存分に“蕎麦呑み”を楽しめます。
続いての「蕎麦屋のポテトサラダ」(620円)も、外せない蕎麦前の一つです。滑らかなジャガイモにスモークベーコンや卵などを加え、レンコンチップの食感もいいアクセントに。マヨネーズはほとんど使わず、蕎麦のかえしが味の決め手だそうで、柔らかな甘味とコクがたまりません。
また、“途中で味変を楽しめるように”と横に添えられているのは、弟・基喜さんの店「POCO MUCHO」でオリジナルにブレンドしたという「デュカスパイス」です。ひとつまみかけると、味わいの印象がガラリ! クミン、コリアンダー、フェンネルなどの香りがたちまちに広がり、こちらも実にクセになる味わいです。
最後は、地元・東峰村の湧水「岩屋の名水」と季節ごとの蕎麦粉を使い店内で手打ちする蕎麦で締め。この日は、蕎麦粉10割、つなぎ1割で打った「田舎そば」(1,100円、昼1,050円)をいただきました。田舎そばには蕎麦の実を皮付きのまま石臼で挽いた粗粉を使っており、噛むほどに豊かな香りが広がります。そして蕎麦つゆは、福岡の人の好みに合わせて九州醤油を用いたやや甘めの味つけ。食後にとろとろの蕎麦湯を注ぐと出汁の旨味がさらに際立って、飲んだ後の体に優しく染み渡ります。
「実は『アテ、料理、デザートまで充実しすぎて、蕎麦に辿り着けない!』と嘆く常連さんも多いんですよ」と笑顔で話す孝行さん。「そばのみ やなせ」で、ぜひ至福の蕎麦呑みを楽しんでくださいね。
おいしくて心地いい!
量り売り専門店「POCO MUCHO」
続いて訪れたのは、白金にある「POCO MUCHO」。弟の柳瀬基喜さんが手がける、オーガニック素材の量り売り専門店です。店内にはナッツやドライフルーツ、オイルやスパイス、洗剤などがズラリと並んでいます。
基喜さんは、兄の影響を受けて「中村学園三陽高等学校」の「特進コース」に進学し、半年後には当時の特待留学制度を利用して長期留学へ旅立ちました。ニュージーランドの高校で3年半学び、オーストラリアの大学へ入学。約8年間の海外生活を終えて帰国後はITベンチャー企業に就職し、個人でもITやデザイン関連の会社を立ち上げるなど、今とはまったく違う世界で働いていた柳瀬さんでしたが、数年後に転機は訪れます。
「昼夜関係なくモニターに向かう毎日に疑問が湧き、疲れてしまったんですよね。いっそ真逆の世界に行こうと、まずはインドに渡って瞑想修行や遊牧民と生活し、帰国後は岡山県の山中にある自然食宿『百姓屋敷わら』に飛び込みました。そこで丁稚奉公をしながら自然と共に生きる心地よさや大切さを知り、『食べ物を変えると人生が変わる』ということを教わりました。そこから体にも環境にも優しい食材や素材、環境循環についても考えるようになり、まずは身近なところからできることをやろうと考え、量り売りの店を開くことにしたんです。留学していたニュージーランドやオーストラリアには、どこのスーパーにもナッツやドライフルーツを量り売りするコーナーがあって、それも店造りのヒントになりました」。
基喜さんがそう話す通り「POCO MUCHO」は、海外のマーケット同様に欲しいものを必要な分だけ購入できるスタイルを取り入れています。自分で持参した容器、または店内で販売している繰り返し使える瓶や容器に詰めることができるので、まさにゼロ・ウェイスト(※)です。
また、2020年4月に開業して以来、生産者との繋がりは広がり、取り扱い商品も年々増加。無農薬栽培や無添加、砂糖不使用などのドライフルーツは約20種類、ロースト・生・無塩とタイプ違いで揃うナッツは約30種類もあります。直接購入できるのは日本でここだけ!という貴重なデーツや、桜やピートチップで燻されたオリジナルの「燻製ナッツミックス(ゲランドの薄塩)」(1g 9円)も見逃せません。日本で初めて導入した専用の機械を使い、その場でナッツを砕いて搾り出す100%無添加・無糖の「しぼりたてピーナッツバター」(1g 5.5円)や「できたてアーモンドバター」(1g 6.5円)も絶品ですよ。
※ゼロ・ウェイスト=無駄や浪費をなくし、ごみを減らす、無くすという活動
店内にはその他にも魅力的な商品が盛りだくさん。エクストラバージンオリーブオイルや、熊本県・益城町産のなたね油やごま油、福岡県産の生はちみつ、有機アガベシロップ、スパイス、ハーブティーの茶葉、ふりかけ、子供が安心して食べられる野菜のお菓子、天日塩、すすぎ0で使えて自然に還る洗剤などなど、とにかく目移りしてしまいます。
ちなみに、ちょっとした手みやげやギフトには、人気のドライフルーツやチョコレート、ナッツなどを詰め合わせた「手みやげ瓶」(1,100円~)もおすすめですよ。
店名はスペイン語に由来するそうで「多すぎず(mucho)少なすぎ(poco)ない、自分にとってちょうどいい喜びの素が見つかる、そんなお店に」との思いが込められているそう。ワクワクできて、おいしくて、体にも環境にも心地良い……そんな「POCO MUCHO」で、お気に入りのものを見つけてみてはいかがでしょうか?
この記事は「学校法人中村学園」の提供でお届けしました。
ジャンル:蕎麦
住所:福岡県福岡市中央区薬院4-10-38 薬院マンション1F
電話番号:092-401-0633
営業時間:11:30~OS14:00(火~木曜)/17:30~OS21:30
定休日:日、月曜
席数:カウンター6席、テーブル10席
個室:なし
メニュー:ざるそば・かけそば(昼900円・夜950円)、田舎そば(昼1,050円、夜1,100円)、天ざるそば(昼1,800円・夜1,850円)、蕎麦屋のだしまき880円、蕎麦屋のポテトサラダ620円、夜限定 鶏出汁つけ蕎麦(塩・醤油)1,500円
URL:https://www.instagram.com/sobanomi_yanase
ジャンル:食物販店
住所:福岡市中央区白金1-10-30
電話番号:092-525-0025
営業時間:11:00~19:00(水、木曜~18:00)
定休日:月曜、不定休あり
メニュー:ドライフルーツ1g 5.5円~、ナッツ1g 6.7円~、燻製ナッツミックス(ゲランドの薄塩)1g 9円~、100%無添加・無糖しぼりたてナッツバター1g 5.5円~、手みやげ瓶1,100円~
URL:https://www.instagram.com/pocomuchojp
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