ゆったりとした開放感を感じやすい平屋。階段がない、家全体の重心が低く耐震性に優れているといったさまざまな魅力があり、憧れを持っている人も多いでしょう。一方で、平屋を建てる際に事前に把握しておきたい注意点もあります。
今回は、平屋づくりにおける間取りのポイントと注意点についてご紹介します。
平屋を新築する際の間取りのポイント
平屋とは、平らな家屋=1階建ての家を指す建築用語です。すべての居室や水まわり・収納スペースが玄関と同じフロアにあるという構造上の特徴があるため、2階建ての家とは違う視点で間取りを検討する必要があります。
日当たりや風通し
平屋はひとつのフロアだけで間取りを考えるため、窓が1面のみの部屋をつくらざるを得ない場合があります。窓が1面にしかないと、方角によっては日中でも暗く、風が通りにくくなってしまいます。2面に窓を設けた部屋をできるだけ多く確保したい場合は、家の角部分を部屋にして中心部に水まわりや収納スペースを配置する間取りがおすすめです。
ただし、平屋は2階部分がないため天窓を設置できます。天窓は、壁面に設置する同じ大きさの窓と比べると約3倍の採光量があるので、家の角部分に部屋を配置しづらい場合は天窓を有効活用するとよいでしょう。
プライバシーの確保
2階がなく日常生活において上下移動が発生しないのは平屋のメリットですが、逆に言えば上下階でスペースを分けるという方法が使えません。つまり、家族の動向が何となくでも常に把握できる毎日が続くという状況になります。
子どもがいる場合、親子で過ごす時間が長い幼少期はあまり気にならなくても、成長にしたがって子どもがプライベートな時間を過ごしたがるようになり、開放的な間取りをやや負担に感じる可能性も。
最近はテレワークをする人も増えていることから、しっかりとプライバシーを確保できる部屋をつくっておくとよいですね。子どもが大きくなれば子ども部屋に、成長し独立すれば書斎や趣味スペースにという風に用途を変えながら使うことができます。
家事動線の長さ
ある家事を始めてから完了するまでに移動する動きを家事動線と言います。
たとえば洗濯に関する家事動線は、洗濯物を集めて洗濯機に入れ、洗い終わった洗濯物を干して、乾いたら収納するという一連の動きを指します。ワンフロアで生活する平屋は、上下の移動がない代わりに横の移動が多いので、間取りによっては家事動線が長くなりやすい傾向にあります。ひとつの家事を完了させるための動きが多く、家事効率が下がりがちです。
普段行っている家事の流れについて、改善したい部分はどこかをまず考えることが、家事動線の短い間取りづくりにつながります。先ほどの例でいえば、浴室と洗面室とランドリー室を繋げて配置することで、洗濯して干してしまうという動きがコンパクトにできますね。
平屋の間取りを考える際の注意点
ワンフロアで生活する平屋の住みやすさは、間取り次第だと言っても過言ではありません。平屋の間取りを考える際の注意点をご紹介します。
家全体のプライバシー保護
1階のみの建物である平屋は、前面道路や隣家から家の内部が見えないか、侵入者が入りやすくないかといった家全体のプライバシー保護を重視しておくことが大切です。
たとえば、日当たりを重視して南側に配置したリビングと前面道路との距離が近ければ、通行人から家の中が見えていないか気になりますね。塀や生垣を立てて視線をカットすることはできますが、開放感が大きく損なわれるかもしれません。
平屋の間取りを考える時は、家と前面道路や隣家などとの距離や角度をしっかりチェックした上で、プライバシーを守りながら生活できるよう配慮しましょう。
居室スペースと収納スペースのバランス
間取りを考える段階で悩ましい問題のひとつが、収納スペースの広さです。物があふれていない、すっきりした暮らし方をしたいという思いから収納スペースをたっぷり取りたいというご意見は多いのですが、敷地の広さに対して建てられる家の床面積が決まっている以上、収納スペースを広げるとそれだけ居室スペースは狭くなります。「家のあちこちに収納スペースをつくったけれど、予定よりリビングダイニングが狭くなって開放感が感じられない」といった事態になってしまいかねません。
収納スペースの広さを気にしすぎて居室スペースを削りすぎないよう、双方のバランスが良い間取りになるよう検討しましょう。
建築コスト
家族構成やライフスタイル、マイホームへの嗜好などによって、必要な部屋数や水まわり・玄関などのスペースの広さといった希望条件はある程度決まります。その希望条件をクリアするには、延床面積が同じであれば2階建てよりも平屋の方が建築コストは上がりやすいです。
なぜなら、2階建ては2つのフロアを使って配置するのに対して、平屋は1つのフロアに配置しなければならないからです。2階建てよりも建築面積が広くなり、その分の基礎や屋根の材料費や施工費が増える可能性があると覚えておきましょう。
家づくりでは高額な資金を使うだけに、できるだけ建築コストを抑えながらもゆったりとした気分で過ごせる間取りにしたいもの。傾斜天井にする・窓を高い位置に設けて自然光が室内に広がりやすくするといった高さを活用し、床面積をコンパクトにして開放感を維持する方法も取り入れてみてください。
まとめ
快適性の高い平屋を建てる上で、間取りはとても重要な要素です。今回ご紹介した間取りのポイントや注意点を参考に、憧れの平屋づくりへの一歩をぜひ踏み出してみてくださいね。
WRITER
河野 由美子 二級建築士・インテリアコーディネーター・防災備蓄収納1級プランナー
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住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手ハウスメーカーでの勤務を経て独立。 日常の中に非日常を感じられる空間づくりをコンセプトとし、住宅やオフィス・医療施設・店舗などの設計およびインテリアコーディネートに携わっています。 建築インテリア関連記事の企画執筆や監修業務、研修講師、建築関連資格対策テキスト監修、工務店施工事例集ディレクションなどの実績も多数。
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