2024年6月、福岡にまた一軒注目のイノベーティブ・フュージョンレストランが誕生しました。店の名はフランス語で“無制限”を意味する「illimité」。賑やかな国体道路を一本入った春吉の裏路地、昨年6月に建てられたばかりという真新しいビルの3階を目指します。
扉の先へ足を進めると、シェフの舞台とも言えるオープンキッチンとライブ感満点の客席が目に飛び込んできました。笑顔で迎えてくれたのは、東京から地元福岡への凱旋を果たした新進気鋭のシェフ・中川巧さんと、サービスの松本桂護さん。特徴的な壁面は博多織をイメージしてデザインされた金物から成っており、九州で育ったというオーク一枚板のカウンターや佐賀の「カマチ陶舗」に特注したショープレートがモノトーンな空間に映えます。一角には4名までくつろげる個室も用意されていました。
幼い頃から料理人になるのが夢だったと言う中川シェフは30歳という若さながら、その経験と実績は並大抵のものではありません。大阪の調理師専門学校を卒業後は、かつて東京にあったミシュラン一ツ星店「ミラヴィル」が手がけるデザートレストランへ入り、23歳で三ツ星を獲り続けるフレンチの名店「カンテサンス」の門を叩きました。常にハイレベルな仕事を求められる環境のなか約3年に渡り腕を磨き、フレンチの花形とも言えるヴィアンド(肉料理)のセクションも担当。その後は新しい分野の経験も積みたいと、東京屈指の予約困難店として知られる元麻布のイノベーティブフレンチレストラン「エクアトゥール」へ。2023年には姉妹店「エクアトゥール プラス」の料理長に就任し、その実力を遺憾なく発揮しました。そしていずれは独立を……と考えていたところ、縁あって福岡にレストランを出すという話が決まったそうで、自身のレストランや料理についての意気込みをこう語ります。
「“より自由であること”が当店の強みです。日本料理や中国料理といった他ジャンルの要素を取り入れるなど、素材の一つ一つの持ち味や魅力を引き出すためのアプローチはまさに“無制限”。驚きや発見といった楽しさがありながらも食べ疲れしない、味覚の五角形のバランスを大切にした幅広い世代に愛される一皿を目指しています」。
メニューは全11品とミニャルディーズ(食後の小菓子)から成るおまかせコース(22,000円・サ別)の一本勝負。前日12:30までの予約制となっており、WEBサイトからの予約を推奨しています。
今回いただいたのは、「九州の魅力を表現したい」との思いが詰まった7月のコース。最初に登場したのは、呼子のいかしゅうまいをオマージュした一品でした。琥珀色に輝く液体は、フレンチの真髄とも言える牛の旨味を凝縮したダブルコンソメ。その中心にはワタリガニやズワイガニといったカニの身をふんだんに使ったふわふわの真丈と生ジュンサイが。インパクトある陸と海の旨味に惹きつけられます。
料理は稚鮎に瞬間燻製を施す一品、穴子や加茂ナスを生かした一皿、新鮮な鯛とトリュフを合わせた冷菜と続き、5品目(写真)には地鶏を主役にした中川シェフのスペシャリテが登場。こちらは宮崎名物である地鶏の炭火焼きに着想を得た料理ですが、「地鶏の引き締まった肉質とコクのある旨味を最大限に伝えたい」との思いからあえて炭火焼きにはせず、肉のジュ(焼き汁)をベースにしたソースの方に炭火の香りを纏わせています。滋賀県のブランド地鶏「近江しゃも」への的確な火入れもさることながら、取り合わせたホッキ貝やアスパラガスの食感も巧妙。素材をシンプルに活かし、密かにキクラゲのアクセントも加えているせいか、ほんのりとヌーベルシノワを彷彿とさせる一皿にも感じました。
コースはさらに、フカヒレと上湯を生かしたロワイヤル仕立ての一品、潤みを美しく留めたハタの身にスープ・ド・ポワソンが絡む魚料理と続き、いよいよ肉料理が登場。こちらは何と3種類からチョイスでき、プラス料金にはなりますが「3種類すべて!」という贅沢なオーダーもできるそうですよ。
この日は「フランス・ランド産の鳩のロースト」(+1,500円)をいただきました。胸身は見事な深紅色で、中川シェフが三ツ星店で体得した高度な火入れ技術に惚れ惚れ。特有のクセはなく、ザクっと歯切れ良く、濃く深い旨味が舌に広がります。ササミはしっとり、腿身は皮目が実に香ばしく脂の甘味も感じられ、これはワインが止まりません。山桃を合わせたというマデラソースも甘味と酸味のバランスが良く、肉の味わいを引き立てていました。
コースを締めくくるデセールは、旬の果物や素材を生かした冷たいものと温かいものの2種類が供されます。写真はキャラメリゼした温かいパインのタルトに、マカロンのアイスクリームを添えた一皿。タルトと言っても生地感は控えめで、甘酸っぱい果肉に香ばしいアーモンドやヘーゼルナッツの香りが染み込んでいるような印象です。アイスクリームは粉砕したマカロンのサリサリとした舌触りとピュアなミルクの味わいが心地よく、パッションフルーツソースの酸味も良いアクセントになっていました。
コースはこの後、自家製のミニャルディーズとドリンクが供されてフィニッシュ。伺った日はほぼ満席だったにも関わらず、料理は終始テンポよく提供され、滞在時間は2時間ほどでした。また、中川シェフはソムリエの資格を持ち、信頼のおけるインポーターと共に選んでいるというワインはブルゴーニュを中心に揃えています。料理に合わせて約7杯が供されるペアリング付きのコース(33,000円・サ別)をお願いすれば、楽しみはさらに広がりそうです。
“無制限”に挑戦を続ける気鋭シェフの登場で、ますます盛り上がりをみせる福岡のグルメシーン。とめどない可能性を秘めたレストランから今後も目が離せません。
この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。
ジャンル:フランス料理
住所:福岡市中央区春吉3-13-34 THE ONE by OAK VILLA 3F
電話番号:092-600-2157 (前日12:30までの予約制)
営業時間:18:00または19:30一斉スタート
定休日:月、日祝日
席数:カウンター10席、テーブル4席
個室:2~4名
メニュー:おまかせコース22,000円、おまかせコース+ペアリング33,000円、グラスワイン1,100円~、ボトルワイン15,000円~ ※サービス料10%
URL:https://www.instagram.com/illimite_fukuoka
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