魅力的なお店が立ち並ぶ六本松エリアに、またしても見逃せないレストランが誕生しました。2024年11月11日にオープンしたお店の名前は「RESTAURANT L'EQUITERRE」。「レキテール」とは、調和やバランスを表す「equilibre(エキリーブル)」と、大地を意味する「terre(テール)」というフランス語を掛け合わせた造語なのだそう。どんなお店なのか、ワクワクしますね。
早速ランチコースを予約して出かけました。レストランは、九大六本松キャンパス跡地・福岡地方裁判所の裏手にあたる“裏六本松”エリアに位置。閑静な住宅街の一角に新築された深いブルーの建物の2階を目指します。
扉を開いた先には、柔らかなブラウンとベージュを基調としたモダンな空間が広がっていました。緩やかなカーブを描く入口や天井のあしらい、床材の模様は地層をイメージしているそうです。
店内には厨房に面したカウンターとテーブル席に加え、2~6名までくつろげる個室も用意。個室は「小さなお子様連れでも気兼ねなく食事を楽しんでほしい」との思いで造ったものだそうで、子育て世代への配慮も嬉しいですね。
また、ゲストを迎えるテーブルセッティングも素敵。自然な風合いと手触りが心地よい木彫りのサービスプレートやカトラリーレスト、ナプキンリングなどは、熊本の木彫家・上妻利弘氏にお願いして特別にあつらえたものだそう。創業100年を誇るイタリアのリネンブランド「ベルトッツィ」の麻のナプキンもおしゃれです。
レストランを営むのは、オーナーシェフの松岡孝治さん。松岡シェフといえば、福岡の名店「ジョルジュ マルソー」の前身である「ビストロ炎」時代から、小西シェフの右腕としてレストランを支えてきた実力派です。
松岡シェフは18歳で上京してフランス料理の世界へ飛び込み、東京・表参道にあったレストラン「ロアラブッシュ」、福岡の「レストランひらまつ」で研鑽後、「ビストロ炎」へ。その後「ジョルジュ マルソー」では副料理長を務め、2012年には西中洲「デフィ ジョルジュ マルソー」の料理長に就任。「デフィ」立ち上げから12年に渡りその看板を守り、この度独立を果たしました。松岡シェフが生み出した“デフィのカレー”は、クルーズトレイン「ななつ星in九州」でも提供されており、福岡のグルマンならご存知の方も多いのでは?
「デフィでは自由に料理を作らせてもらうことができ、本当に感謝しています。元々独立願望があったわけではないのですが、自分のやりたい事をさらに突き詰めようと考えた結果、独立を決めました。僕は釣りと畑仕事が大好きで……“朝から畑へ!毎週釣りへ!”と、全力で駆け回りたくて」と松岡シェフは笑顔で話します。
聞けば嘉麻市に2か所、城南区に1か所畑を所有しており、シェフ業の傍ら約20年に渡り畑仕事を続けてきたそう。「レキテール」で使用する野菜のほぼ9割は自家栽培で、ハーブやエルディブフラワーも朝摘み! どれもフレッシュそのものです。
さらに魚介は唐津から届く鮮魚を中心に、日によっては松岡シェフ自ら釣り上げた旬魚も提供しています。天候にはよるものの、ほぼ毎週のように船を出してもらい壱岐の沖合まで釣りに出ているのだとか。仕入れる魚も基本的には活魚で仕入れ、自ら血抜きや神経締めを行っているというから驚きです。
さぁ、それでは料理をいただきましょう。
「ちょっとしたランチから特別な日まで、使い勝手の良いレストランでありたい」との思いから、ランチは平日限定コース(3,800円)を含めると5種類、ディナーは4種類ものコース(7,800円~)が用意されています。今回は6,800円のランチコースをいただきました。
最初に登場したアミューズは「自家栽培の日野菜カブのロースト」です。これがホクッとしてびっくりするほど甘い! 優しく広がるほろ苦い風味もたまりません。
アミューズの後は、前菜として「唐津産 平目のカルパッチョ」が登場。このヒラメは、早朝5時に生きたまま届き、松岡シェフ自ら活き締めにしたものです。昆布で軽く締めて旨味を引き出しながら、バチッと張りのある食感も感じられて美味。添えられた新玉ネギのムースの甘味、自家製カラスミのまろやかな塩味がおいしさをさらに引き立てています。
トリュフ香る濃厚なマッシュルームのスープ、モチモチとした自家製のじゃがいもパンが供された後は魚料理。この日は「サワラのポワレ」が運ばれてきました。的確な仕立て(下処理)を施した厚みのあるサワラに、自家製のニンニクが上品に香るクリーミーなバーニャカウダソースがよく合います。
続いて、メインディッシュの肉料理は「黒毛和牛頬肉の赤ワイン煮込み」。細やかに火入れを施した頰肉はしっとり柔らかく、黄金カブや紫ニンジンといった自家製の野菜も実に味わい深いです。この日ワインを飲んでいない私の状態を考慮し、ややキレのある軽やかなあと口になるようソースの濃度を調整していただいていたのにも唸りました。
また、松岡シェフのカレーも健在で、6,800円のコースでは肉料理の後にミニサイズの「黒毛和牛とスパイスの欧風カレー」が登場します。土鍋で炊いた嘉穂郡桂川町「ノガミファーム」のお米はツヤツヤふっくら。フォンドヴォーの旨味とスパイスの辛味が効いたこのカレーは、一度食べるとヤミツキに。ちなみに3,800円、4,800円のコースでも、プラス500円でカレーを追加できますよ。
旬の果物を使った季節のデザートをいただいた後は、小菓子と食後のドリンクでフィニッシュ。コーヒーも良いですが、おすすめは季節ごとの自家製ハーブを使ったハーブティーです。この日は朝摘みのフレッシュミント、レモンバーム、レモングラス、乾燥のベルベーヌのブレンドで、これがもう本当においしい! ギャルソンとして20年以上のキャリアを持ち、フロアを取り仕切る支配人・山本雄亮さんのサービスもスマートで、最後まで心地よい時間を過ごせました。
しっかりと根を伸ばし、枝葉を広げ、太陽をたっぷりと浴びて実を付けた大木をイメージしたロゴが表す通り、大地の恵みを存分に堪能できる「レキテール」。素材、天候、人、あらゆる要素から、その日最高のバランスを紡ぎ出す……そんな松岡シェフの新たな挑戦から今後も目が離せません。
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