"北九州の台所"と称される小倉・旦過市場近くにある「板前焼とり 成海」。店主の緒方啓介さんは板前(和食料理人)と焼鳥職人の二刀流で、季節の鮮魚を使った前菜と本格炭火焼鳥の「おまかせコース」(11,000円)を提供している。前半に続き、今回はコース後半の焼鳥編を特別に紹介したい。
>>>前半はこちらから。
鮮魚をメインにした前菜がひと通り終わった後、口直しに出てくるのが「本日のスープ」。何げない一品ながら、鶏ガラでとったスープに魚介の出汁を加えており、何とも滋味深い味わい。腹具合を整えながら、さらなる食欲を促してくれる見事なチェンジアップだ。
緒方さんの料理人としてのスタートは、小倉の老舗焼鳥屋から始まった。しかし、従来の焼鳥屋の枠内に収まることができずに、本格的な日本料理やフランス料理といった未知なる世界に飛び出していったという。
それだけに「板前焼とり 成海」をオープンしてからも焼鳥はいわば料理人としてのベースであり、他店とは一線を画すクオリティで勝負している。
現在串物に使っているのは、いずれも希少価値の高いブランド鶏である鹿児島産シャポーン鶏と朝倉産古処鶏(こしょどり)の2種類で、部位ごとに使い分けている。最初に出てきたのはシャポーン鶏のもも肉1本から、太もも、ふくらはぎ、脛の部分を切り分けて一串に刺したもの。同じもも肉から脂ののり方が違う部位を食べ比べするのは、目から鱗の経験だった。
2本目は古処鶏のキモで、ねっとりと濃厚な味わい。それぞれに馬鈴薯、カリフラワーのソースが添えられ、好みで味変が楽しめるのも嬉しい趣向だ。
じっくり時間をかけてローストした鳥皮には香りの強いマッシュルームのソースを合わせ、ハツは昆布出汁と柚子のポン酢でサッパリと。素材を吟味する目利き、炭火を使った焼きの技術、アイデアに溢れた食材の組み合わせが高次元で癒合し、串物1本1本が独立した料理として成立している。
串物の合間にも、羊にたっぷりのチーズを削りかけたイタリアンを彷彿とさせる一皿や、贅沢にフランス産キャビアを使ったウズラ玉子のスペシャリテなど、どれも従来の焼鳥の概念を覆すイノベーティブな料理のオンパレード。
「料理を考えるのが楽しくて、営業が終わった後もずっと試作しています」という緒方さん。今後どれほどの伸び代があるのか、期待しかない。
ジャンル:海鮮料理、焼鳥
住所:北九州市小倉北区馬借1-5-10
電話番号:090-2710-0763
営業時間:18:00~23:00
定休日:不定
席数:カウンター8席、テーブル6席
個室:4~6名
メニュー:おまかせコース11,000円(完全予約制)、ビール800円~、日本酒900円~、グラスワイン1,200円~
URL:https://www.instagram.com/narumi07630
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