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睡眠研究の第一人者が教える「質の良い睡眠」とは?年代別睡眠時間の最適解

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3月18日は「春の睡眠の日」、そして3月11日から25日は睡眠健康週間です。快適な睡眠に対する社会的関心が高まっています。質の良い睡眠、正しい睡眠について、3月18日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』では、日本睡眠協会理事長を務める、久留米大学内村直久学長にお話を聞きました。

睡眠時間と年齢の関係

適切な睡眠時間は年齢によって異なり、20歳から50代では6時間から9時間、60代以降では6時間程度が推奨されています。特に7時間程度の睡眠は、健康と長寿に良い影響を与えるという研究結果があります。一方で、6時間以下の睡眠は生活習慣病、うつ病、認知症などのリスクを高めることが指摘されています。

また、年齢とともに睡眠の質も変化します。20代から50代までは比較的安定した睡眠を維持できますが、60代以降は睡眠力が低下し、長時間眠ることが難しくなります。そのため、60代以降は8時間以上布団の中にいると、かえって睡眠の質が低下し、死亡リスクが高まるという研究結果もあります。

高齢者の方に特に注意していただきたいのは、布団の中でテレビを見ることです。布団の中でうとうとしてしまうと、その後なかなか寝付けなくなってしまいます。テレビを見る時は、必ず椅子やソファに座り、眠くなってから布団に入るようにしましょう。

睡眠研究の第一人者が語る、質の良い睡眠とは

私は40年以上にわたり睡眠の研究と臨床に携わってきて、自身も睡眠には気を付けていますが、多忙のため睡眠時間が不足しがちです。睡眠不足かどうかを簡単に知る方法として、「普段寝ている時間よりも1時間前に布団に入ってみる」ことを推奨します。もしすぐに眠ることができたら、それは睡眠不足のサインです。十分な睡眠が取れている人は、普段の就寝時間より1時間早く布団に入っても、なかなか寝付けないものです。

「いつでもどこでも眠れる」という人は、睡眠不足の可能性が高いと言えるでしょう。

大谷翔平選手も実践する睡眠の重要性

睡眠時間をしっかりとることは、高いパフォーマンスを発揮するためにも重要です。大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手は、10時間の睡眠と2時間の昼寝を欠かさないことを公言しています。アスリートは一般の人よりもエネルギー消費が激しいため、それに見合った睡眠が必要になります。また、時差の大きなアメリカ国内を移動しながら試合をする大谷選手にとって、昼寝は時差ぼけ解消にも役立っていると考えられます。

最近では、子どもたちから「夜10時間眠れば、大谷選手のようになれますか?」という質問を受けることがあります。私は、このような質問に対し、「10時間の睡眠は、あなたの持っている力を最大限に引き出すためにとても大切です。大谷選手のようになれるかは分かりませんが、近づくことはできるでしょう」と答えるようにしています。

睡眠は「寝だめ」できない!

睡眠に関する大きな誤解の一つとして、「寝だめ」が挙げられます。睡眠は貯金ができないため、休日に長く寝ることは体内リズムを崩し、かえって体調不良の原因となる可能性があります。寝だめをする場合は、普段の睡眠時間より2時間以内にとどめることが推奨されます。

睡眠環境を改善するために

睡眠不足は、脳や体の休息を妨げ、翌日の眠気や集中力・意欲の低下、仕事の能率低下など、様々な悪影響をもたらします。さらに、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、心筋梗塞、脳血管障害、がん、うつ病、認知症など、多くの病気のリスクを高めることが指摘されています。また、幸福感の低下にもつながるとされています。

質の良い睡眠を得るためには、睡眠環境を整えることが重要です。寝る1~2時間前から部屋の照明を暗くし、リラックスできる環境を作りましょう。寝る前にスマートフォンやタブレット、ゲームなどの使用を避け、ブルーライトを浴びないようにすることも大切です。また、ストレスを溜め込まないように、適度な運動や趣味などでリフレッシュを図りましょう。

さらに、食事も睡眠に影響を与えます。夕食は就寝2時間前までに済ませ、朝食は必ず摂ることが推奨されます。また、食事はゆっくりとることが大切です。運動に関しては、日中に活動的に過ごし、早足でのウォーキングなどを取り入れることで、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。

4月に福岡市で「睡眠フェア」開催

4月25日から27日の3日間、アクロス福岡にて「ふくおか睡眠フェア2025」が開催されます。睡眠に関する講演や、スリープテック関連企業のブース出展など、様々な催しが予定されています。参加費は無料で、ブース見学は事前申し込み不要です。ただし、講演については事前申し込みが必要となりますので、「ふくおか睡眠フェア」で検索し、特設サイトからお申し込みください。
https://specials.nishinippon.co.jp/fukuoka_suiminfair2025/

年齢やライフスタイルに合わせた睡眠習慣を身につけ、健康で充実した毎日を送りましょう。

内村直尚氏(久留米大学学長)
1956年福岡県生まれ。久留米大学医学部卒業後、オレゴン州立大学へ留学。久留米大学医学部教授、同大学病院副院長、同大学医学部長などを経て、2020年より現職。日本睡眠学会理事長、日本睡眠協会理事長なども務める。

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