気象台の業務の中で、絶滅(?)が危惧されているものがある。それは、生物季節観測。動植物により、季節の進みや遅れ、気候の変化などを把握するもので、私たちに季節感を伝えてくれていた。1953年に始まって70年以上続いている。特にこの冬は寒さが厳しく、植物の開花がかなり遅くなるなど、極端な気象の影響を示した。
ところが、この生物季節観測が2021年から大幅に縮小されている。福岡の気象台では、植物13種目のうち、残ったのは梅や桜、イチョウなど6種目だけ。私たちになじみの深いタンポポやフジ、ツツジの開花は発表されなくなった。動物は11種目全てが廃止。ウグイスもツバメも、ホタルもセミも、観測しなくなった。
気象台は「防災情報に力を入れるため」というが、普段から自然の移ろいを動植物で知り、気候の変化に興味を持つことも、自然災害から身を守ることにつながるのではないか。復活を望む声が各方面から上がっていると聞く。四季のある日本ならではの観測、気象台がやらぬならRKB天気予報の中だけでもできる限り伝えたい。
ちなみに、きょう22日は福岡のソメイヨシノ開花の平年日。さて今年はどうなるのだろうか?
龍山康朗=RKB気象予報士・防災士
毎日新聞福岡版 2025年3月22日掲載
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