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日中外相会談「いかなる時でも顔を合わせる」ことの難しさ

飯田和郎

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2025年3月22日、東京で日中韓外相会談が開催されました。同時に、日中、日韓、中韓の個別外相会談も行われ、さらに閣僚級による「日中ハイレベル経済対話」も実施されました。特に注目されたのは日中外相会談。東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長が3月24日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演し、両国が直面する課題や懸案事項の解消に向けた対話の内容について解説しました。

日中外相会談の意義と課題

日中外相会談の冒頭、岩屋毅外相は中国の王毅外相に対し、次のように述べました。

「いかなる時でも顔を合わせ、課題や懸案の解消を含めて、率直に議論できる関係の構築が必要です。」

この発言は、日中関係が抱える現実を反映したものです。日本産水産物の輸入停止問題、日本人の拘束、中国の海洋進出といった難題が山積する中、両国間の対話は円滑とは言い難い状況が続いています。

さらに、アメリカと中国の対立が激化する中、日中関係にも影響が及んでいます。日米同盟を基軸とする日本にとって、アメリカの対中政策への対応は難しい課題であり、これが日中間の課題解消を一層困難にしています。

福岡で起きた中国人関連の事件

アメリカへの対処、日中間の政治問題はもちろん大切ですが、我々日本人が抱く中国という国、そして中国人に対するイメージの悪化という問題が背景にあります。ここ福岡で、先週起きた2つのニュースをおさらいします。

違法キャンプ場開設事件

先週、福岡県太宰府市の特別史跡「大野城跡」にて、違法にキャンプ場を開設したとして中国籍の夫婦が逮捕されました。この夫婦は、2022年10月から2023年9月にかけて、土地を無断で造成し、キャンプ場を営業していたとされています。大宰府市からの度重なる撤去指導にも従わず、違法行為を続けていました。

特急列車内での暴行事件

JR鳥栖駅から二日市駅間を走行する特急列車内で、特急券を持たない中国籍の68歳の女性が、車掌への暴行容疑で現行犯逮捕されました。車掌から特急券の購入を求められると、腹部を押すなどの暴行に及んだとされています。


 

日中間の国民感情の悪化

日本のNPO法人「言論NPO」が昨年12月に発表した日中共同世論調査によれば、「中国によくない印象を持っている」と回答した日本人は89%に上りました。中国の日本産水産物輸入停止や日本人拘束問題に加え、中国人観光客に対するビザ発給要件緩和への不満も、こうした感情を後押ししています。

一方で、中国人の88%が「日本によくない印象を持っている」と回答しており、前年より25ポイントも悪化しました。中国国内ではSNSやインターネットを通じた情報が日本に対する認識を形成する大きな要因となっており、偏った情報が反日感情を煽っている可能性があります。

王毅外相の発言と中国側の意図

訪日した王毅外相は、石破茂総理への表敬訪問をはじめ、各所で「抗日戦争・反ファシスト戦争の勝利から80周年」という歴史的節目について言及しました。

「過去の歴史を正しく理解し、向き合おう。」

この発言は、中国国内の世論を意識したものであり、反日感情が高まりやすい環境を念頭に置いたものでした。

実務的協力の開始と今後の展望

今回の日中外相会談では、グリーン経済や少子高齢化といった両国共通の課題について協力を進める方針が確認されました。国民感情の改善には、こうした実務的な協力を通じて信頼関係を築いていくことが重要です。

中国や韓国からのアクセスが容易な福岡は、かつて鴻臚館という迎賓館が存在するなど、東アジアとの歴史的なつながりを持つ都市です。福岡を舞台にした日中韓の対話が実現すれば、地理的な利便性や歴史的意義を活かし、地域間の相互理解を深めるきっかけとなるでしょう。また、東京や北京という政治的中心地から離れた場所での対話が、より柔軟で率直な議論を促す可能性もあります。

「いかなる時も顔を合わせる」ことの重要性

日中外相会談で岩屋外相が述べた「いかなる時でも顔を合わせる」という言葉は、国際関係において極めて重要なメッセージです。現在の日中関係には、政治的・経済的な対立や国民感情の悪化といった多くの課題が存在しますが、これらを解決する第一歩は対話の継続です。

特に、国民感情の悪化は、政府間の努力だけでは解消できません。両国民が互いを理解し、共感を育むためには、政治指導者が率先して交流を深める姿勢を示し、互いの国民がその姿を目にすることが重要です。

今回の日中外相会談では、さまざまな課題が議論されましたが、完全な解決には至りませんでした。それでも、両国の外相が直接顔を合わせ、率直に意見を交わしたことは、今後の関係改善に向けた第一歩といえるでしょう。

また、王毅外相の訪日が4年4カ月ぶりであったことは、いかに日中間の対話が途絶えがちであるかを示しています。これを機に、さらなる対話の場が増え、両国が共通の課題に取り組むことで、国民感情の改善や信頼関係の構築が進むことが期待されます。

福岡を含む地方都市が、今後の日中韓の対話の拠点として活用されることにも期待が寄せられます。歴史的な背景や地理的な利点を活かし、地域間の交流を通じて新たな関係構築のモデルを示すことができるでしょう。

「いかなる時でも顔を合わせる」――その言葉が現実のものとなり、日中関係がより良い方向へ進むことを願います。

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この記事を書いたひと

飯田和郎

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。