六本松からNHKの裏手を通って大濠公園へと抜ける道の周辺は古くからの住宅街ですが、最近は古い家屋をリノベーションした店が増えています。その道沿いで、青地にイカリのマークが染め抜かれたタペストリーを掲げているのが「大島ラーメン あづまや福岡」。オープンしてから8年目になるといいますから、このあたりではもう古株といえるかもしれません。

「大島ラーメン」と聞いてもすぐにはピンと来ないかもしれませんが、大島は長崎県西海市の西方にある島で、現在は本土と橋で結ばれています。店主の三岳龍太さんはこの島の出身で、祖父の代から続く「大島ラーメン」の三代目。当初は「店を継ぐつもりはありませんでした」と、高校卒業後は福岡の中村調理製菓専門学校を経て料理人の道を目指していたそうです。ところが、帰省した際に父親が作るラーメンを食べた時に改めて「この味を残したい」と思い直し、一念発起して福岡のラーメン店で修業。その後、父親の元で秘伝の味を学び、再び福岡に戻って2017年に開業しました。


もともとは製麺所を営んでいた三岳さんの祖父が昭和40年頃に創業したという「大島ラーメン」は、ラーメン、ちゃんぽん、皿うどんが三大メニュー。決して派手さのない、いわゆる街場のラーメン・ちゃんぽんですが、「普通だけど一番うまいを目指しています」と三岳さん。こちらも肩肘張ることなく、ちゃんぽんを注文しました。

やや小ぶりな丼で提供される「ちゃんぽん」(980円)は、豚骨+鶏ガラスープに自家製中太麺の組み合わせ。小山のように盛られた具材が、何とも食欲をそそります!


豚骨と鶏ガラを8時間以上炊いて毎日継ぎ足すスープは、ラーメン、ちゃんぽんと共用。ちゃんぽんにはラードで炒めた具材と麺からも味が染み出し、甘みとコクのある風味に仕上がっています。
具材は豚肉、キャベツ、モヤシ、玉ねぎ、人参、キクラゲに練りもの(カマボコ、天ぷら、チクワ)といった庶民的な組み合わせ。製麺所を営んでいた初代から伝わる自家製の中太麺は、1日寝かせて熟成させることでツルツルとした食感を生み出しています。具材の下に潜んだ麺のボリュームもなかなかのもので、完食する頃には腹パンになりました。

とはいえ、看板メニューの「大島ラーメン」(780円)を食べないわけにはいきません。ラーメン用の麺はちゃんぽんとは別に打っており、こちらはミディアムな中細麺。基本のスープはちゃんぽんと共用ですが、具材がシンプルなだけに麺と一緒にズルズルと啜ればよりストレートなうま味が伝わってきます。炙ったチャーシューにも甘辛いタレの味がしっかり染み込み、かなり好みの一杯でした。

老舗の三代目として「大島ラーメンの可能性を広げたい」と、休みの日には他店を食べ歩いて研究を重ね、新しいチャレンジにも余念がありません。常時オリジナル創作麺を期間限定で提供し、その中から特にお客さんの評判が良かったという「俺のニラそば」「裏大島ラーメン」(各930円)は、定番メニューに昇格。今後もどんな進化を遂げるか目が離せない注目店の一つです。

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