山海の食材に恵まれた北九州で、地産地消を謳う和食店・居酒屋は珍しくない。特に響灘で獲れる魚介は鮮度がいいだけに、この地で魚が旨いの当たり前。それに加えて、洋食のエッセンスも取り入れつつ多彩な創作料理を提供しているのが「旬炉割烹 ななし」だ。駅チカの好立地で、味にうるさい地元客をはじめ、小倉を訪れる出張者や観光客からも人気を集めている。

大将の後藤徳匡さんは大阪の割烹で30年近く修業した熟練の和食料理人。地元の小倉に戻ってからはイタリアンでも経験を積み、2022年に小倉随一の繁華街である鍛治町で「ななし」をオープンした。
JR小倉駅の小倉城口(南口)を出て徒歩4、5分で店に到着すると、まずは赤提灯に縄のれんという店構えがいい。小洒落たデザインの店が多い昨今、あえて酒場の王道をいくスタイルが期待感を高めてくれる。

開店間もないカウンターに座り、今回は大将おすすめの料理からアラカルトで注文することにした。挨拶代わりの生ビールとともに出されたお通しは「昆布〆鯛の雲丹和え」から。身の締まった鯛に磯の香りが漂い、のっけから酒が進んでしまう罪なスターターだ。


大分産の新鮮なサバを引いた「極味ごまサバ」(1,780円)は、香ばしく煎られた黄金色のゴマがたっぷりとかけられ、小口に切られた青ネギと山葵が添えられたシンプルかつストロングなスタイル。銀色に光るサバは脂がのり、分厚く切られた身は食べ応えがある。

続いて「よく混ぜてお召しあがりください」と提供された「大人のポテサラ」(720円)は、一見すると春巻きに卵黄が添えられたものでポテサラの要素が見当たらない。どうやって食べるのか考えあぐねていると、女性スタッフが「お手伝いしましょうか」と、スプーンとフォークを使って春巻きの皮を割り、手際よく全体をかき混ぜてくれた。

なんと春巻きの中身はマッシュポテトとベーコンで、卵黄とパルメザンチーズと混ぜ合わせることでイタリアンな味わいに! さらに海苔のソースと相まって、磯の香りが漂う一皿として完成するマジックに驚きを隠せず、さらに杯を重ねるのであった。

新鮮な魚介を炭火で焼いた「魚串」も名物のひとつで、写真は手前から脂がのった「太刀魚」(380円)と珍しい「キアラ」(580円)。その日の仕入れによって15種類以上がメニューに並び、同じネタでも刺身とはまた違った味が楽しめるのが、魚好きにはたまらない。

そろそろ腹もくちくなってきたが、日替わりメニューから気になっていた「ホタルイカの天ぷら」(580円)を追加オーダーすることに。今が旬のホテルイカは小ぶりながらもプリプリとした身にワタが詰まり、サクッと揚げた天ぷらは濃厚な味わい。濃純な日本酒や熟成した赤ワインともよく合い、大満足でのフィニッシュとなった。

入口手前のカウンターは10席ほどだが奥には個室と半個室があり、全部で約50席という大バコの造り。赤提灯に誘われてフラリと訪れる一人客からカップルやファミリー、大小の宴会まで対応できるキャパがあり、小倉に来たらまず思い浮かべたいフレンドリーな割烹だ。
ジャンル:海鮮料理、居酒屋
住所:北九州市小倉北区鍛冶町1-1-12
電話番号:093-981-7841
営業時間:18:00~OS23:30(金土曜はOS24:00)
定休日:日祝日
席数:カウンター9席、テーブル40席
個室:2~20名
メニュー:魚串220円~、大人のポテサラ770円、だし巻き玉子680円~、ほたてバター醤油焼き(2個)1,080円、せいろ蒸し1,080円~、和牛ハンバーグ1,380円、極味ごまサバ1,780円、コース5,500円~
URL:https://www.kokura-nanashi.com
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