天神ビッグバンにより再開発が進む天神の中心地。活気を感じる一方で、以前このあたりにあったいくつもの名店の味を恋しく思うことも少なくありませんでした。ですが、そんなノスタルジックな思いを吹き飛ばすニュースが入ってきました。「鯛茶」でよく知られるあの老舗「割烹よし田」が、天神に復活したというのです。
店舗からの提供
天神ビッグバンをうけ、2021年に博多区店屋町に移転した「よし田」。今年6月、4年半ぶりに以前あった場所に本店として新店舗を構え、博多店屋町店とあわせて2つの店舗営業となりました。
遡ること62年前、1963(昭和38)年に先代・吉田幸生さんが、今の場所よりもやや南側、かつて因幡町と呼ばれていた場所で創業したのが「よし田」のはじまりです。「最初は天ぷらやトンカツを出していて、県庁や周辺の企業に天丼やカツ丼の出前もしていたんで、昔からのお客様には今も『お前んとこは天ぷらだったよな』って言われますね」と二代目・吉田泰三社長は話します。
2020年末まで天神で店を構えていた旧店舗(店舗からの提供)
1975年に因幡町から現在の場所に移転し、翌年その建物を建て替え、おなじみの旧店舗が誕生しました。いまや名物となった「鯛茶」を始めた時期は定かではないものの、「私が学生時代に店でバイトをしていた40年前にはもうありました。ただ、当時は一番上のコース料理の中の一品としての提供でした」と吉田社長。その後、ランチタイムに提供するようになり、一気に人気が広まったといいます。
幼少期から先代にお店に連れられ、「お前が後を継ぐんだ」としょっちゅう言われていたという吉田社長。大学卒業後に東京の高級料亭「般若苑」で6年間修行して福岡に戻り、さらに日本料理屋で経験を積んだ後、「よし田」に入り、先代とともにお店の繁栄に努めました。
二代目・吉田社長
そして先代の後を継ぎ、2011年に社長に就任。その後から徐々に天神ビッグバンの話を耳にするようになり、再開発をうけての移転とそこからの天神復活の計画を練り始めたといいます。
ですが、いざ店屋町に移転のタイミングで世の中がコロナ禍になってしまいます。「店屋町に店舗を建て、また天神に本店を建てる計画もすべて進んでいて、もう後戻りできませんでした。不安でたまらなく、私は毎日のように泣いたし夜も眠れませんでしたが、社長はいっさい不安なそぶりを私に見せませんでしたね」と女将・由香理さんは当時の状況や心境について語ってくれました。絶対に女将に心配をかけない、絶対にこの困難を乗り越える……。吉田社長の揺るぎない使命感とともに、天神への本店復活が果たされました。
かいつまみになりましたが、以上が「よし田」の歴史と復活のストーリーです。では、お待たせしました。新しい本店をご紹介していきます。
店舗からの提供
新店舗は地上4階、地下1階のビルで、1~3階が本店の客室です。1階(写真左)は、ボックス席に加え、お一人様も利用しやすいカウンターが新たに設置されています。2階は大広間(写真右)と個室が2部屋、そして3階には8タイプの個室があります。
店舗からの提供
個室は最大14部屋を完備。2名から最大60名まで対応し、ビジネスから慶事まで様々なシーンで利用できます。右写真は、吉田社長たっての希望で作ったという特別個室です。
夜の食事は会席料理が鉄板ではありますが、カウンター席もできたし、この日はカジュアルにアラカルトで楽しむことにしました。刺身、揚物、焼物、煮物など種類も品数もたくさんあり、さてどうしよう。迷いに迷ったすえ、鯛のおいしさを余すことなく楽しめるよう新しく考案された料理をいただくことにしました。
まずは鯛刺に明太子をたっぷり和えた「鯛明太子和え」(1,650円)です。自家製の明太子は上品な味わいで、鯛の旨味と絶妙に絡み合います。そして、日本酒にぴったりな一品です。
つぎは「鯛皮パリパリサラダ」(1,100円)。丁寧に下処理し、湯引きして余分な脂を落としてから油で揚げた鯛皮のチップスがトッピングされています。まずは皮を……と食べてみると、食感はバリッバリッとかなりクリスピー。さらに皮からじわっと旨味が滲み出て、これはたまりません! 鯛の身で作るディップも秀逸でした。
こちらは「鯛カマせいろ蒸し」(1,430円)です。天神本店と博多店屋町店の2店舗でだいたい毎月5~6トンの鯛をさばくという「よし田」。特においしい頭を廃棄するのはもったいないと新たに提供するようになった料理です。新鮮なカマだけにとにかく身の弾力がすごい!
なんでも「よし田」では、毎朝10時に活きた鯛とイカが運ばれてきて生け簀に移すそうですが、女将いわく「うちにお泊まりする鯛はいないんです」。つまり、鯛もイカもその日のうちにすべて提供されるのです。
ランチにもふれておきましょう。定番の「よし田名物 鯛茶」(1,760円~)、ランチコース(4,070円)などに加え、天神本店限定の「スペシャルランチコース」(5,500円)も登場しています。
店舗からの提供
ランチタイムでの一番人気は「鯛茶天ぷらハーフセット」(2,530円~)です。
「鯛茶」は、一膳目はご飯のおかずに、二膳目は残りの鯛の身とタレをご飯にのせ、お茶漬けにしていただきます。あぁ、なんて上品なこの味。あらためて鯛のおいしさと老舗の技に唸ります。
右写真は店舗からの提供
そして、もう一つ。天神本店のオープンにあわせ、新たに家庭向け商品「家庭割烹」シリーズがスタートしています。家庭用にアレンジした「鯛茶たれ」(300ml・1,242円)、手軽に魚の煮付けを作れる「煮炊きのつゆ」(300ml・896円)など全7種類。コーナーは店舗1階にあります。
最後に、吉田社長に今の心境をうかがうと、「天神本店と博多店屋町店の2店舗になり、また息子も三代目として店に入っています。飲食の都市である福岡で、これからもっと福岡の食を引っ張っていける存在になりたいと強く感じています」と言い、さらに、「私が父から受け継いだものは、お客様に対する姿勢と鯛茶ダレのただ2つ。この2つは、息子にもしっかり継いできたいですね」と語ってくれました。
創業者の吉田幸生さん(中央)、二代目の吉田社長(右)、三代目の憲史さん(左)(店舗からの提供)
天神で産声をあげ、天神の発展とともに歩んできた「よし田」。親子代々バトンを受け継ぎながら、これからも天神の名店であり続けることでしょう。
ジャンル:日本料理
住所:福岡市中央区天神1-14-14
電話番号:092-721-0171
営業時間:11:00~OS14:00/17:00~OS21:30(土日祝日は17:00~OS21:00)
定休日:第1・3日曜
席数:カウンター8席、テーブル152席
個室:2-12名
メニュー:【昼】よし田名物 鯛茶1,760円~、鯛茶天ぷらハーフセット2,530円~、ランチコース4,070円、天神本店限定スペシャルランチコース5,500円
【夜】会席料理8,800円・13,200円・17,600円・22,000円、鯛しゃぶ会席8,250円、いか活造り時価、鯛明太子和え1,650円、鯛皮パリパリサラダ1,100円、鯛カマせいろ蒸し1,430円
URL:https://www.kappo-yoshida.jp/
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