「デビさんの焼酎は2階にありますよ」
店主の田中英之さんが私を見るなりそう言った。
「あぁ、やっぱり2軍落ちになっていましたか」
ここ「博多一番」では、来店する頻度が落ちると、1階にある焼酎のキープ棚から2階へとボトルが移動させられてしまうのだ。
「あなたは常連客じゃないよ」と暗に言われているようで、ちょっと悔しい気持ちになる。
この店は、昔ながらの風情が残る六本松の京極街にある焼鳥屋で、カウンター6席ほどの小さな店だ。看板はない。どうやら台風の時に危ないからと看板を外して、そのままになっているらしい。店のオープンは1995年だが、ここよりも前から営業していた店が、次々と閉店していき、今では京極街で一番古い店になったようだ。
ここには数年前、友人に面白い店主がいる店があるからと連れて来られたのがきっかけで、その後、ちょくちょく1人でも来るようになった。
店主の田中さんは生まれながらのエンターテイナーで、カメラを向けると必ずお茶目なポーズをとってくれる。その明るいキャラが愛されて、店はいつもお客で賑わっており、笑いが絶えない。田中さんが調子に乗りすぎると、奥様が手綱を引くというコンビネーションも絶妙だ。エアコンがないので、夏は暑くて冬は寒いという、決して快適な空間ではないが、このご夫婦に会いに、夜な夜な人が集まってくるのだ。
焼鳥は臭みのない「レバー」や、ネタが大きくて食べ応えのある「豚バラ」が人気。個人的には、コリコリ食感で濃い味付けの「豚ミソホルモン」串や、すりたての生姜と切りたてのネギを使った「冷奴」が好きだ。
最近はこんな店が少なくなって寂しいので、ここはずっと続けてほしい。そうそう、焼酎のキープボトルが2階に移動される前に、また来んといかん。
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