褐色で厚さ0.2ミリの不思議なシート。手でちぎって口に入れると柔らかくなり、香ばしさと塩味が広がる。その正体は、熊本の老舗醸造メーカー、フンドーダイから今年4月に発売された醤油のシートと味噌のシート。
製造は長崎市にある橋口加工食品研究所の橋口亮さん(69)が行う。橋口さんは、元長崎女子短期大学教授で農学博士。長年の研究で、食材の他に寒天だけを使い乾燥しシート化する独自技術で特許を取得した。
フンドーダイは、昔ながらのもろみ藏で仕込む伝統的な醤油づくりに力を入れてきたが、近年は大ヒットした透明醤油をはじめ革新的な商品を生み出している。
好きな大きさに切って巻いたり挟んだりできるので、料理の幅が広がる。このシートを使ってシェフに長崎の伝統料理であるハトシや大村寿司を作ってもらうと、新しい郷土料理が完成。気になるビジュアルや味は?日本の伝統調味料である醤油と味噌をシートにすると、常温で1年以上と保存性も良く、海外への輸送費も大幅に削減できる。海外の展示会でも日本の食文化を伝える新たな調味料として注目されている。
やっと芽が出てきたと語る橋口さんは、将来は宇宙食にも使えるのではと期待を込める。
会社名:株式会社 橋口加工食品研究所
代表取締役:農学博士 橋口 亮
住 所:長崎県長崎市西海町4721-24
電 話:095-894-1940
HP:https//www.hashiguchi-pfri.com
取材後記
長崎市街地から琴海エリアと呼ばれる自然豊かな地域に入る手前、206号沿いに橋口さんの研究所があります。信号待ちの間、野菜がデザインされた看板を見て「いったい何をするところなんだろう」と思っていました。
橋口さんは、元長崎女子短期大学の教授であり、農学博士。食品学、食品加工学を担当する中で、独自の加工食品づくりを極めようと、研究を続けました。最初は、企業から依頼された野菜シートの研究をきっかけに、シート状食品なるものに情熱を注ぎ、2020年には研究拠点となる橋口加工食品研究所を設立しました。
橋口さんは、長く愛される加工食品は品質の良いものでなければならないと言い、おいしくて見た目もなめらかで美しいものにこだわります。今回取材した味噌をシート状に加工する際の作業は緻密で、頑固な職人のようです。大学にいた頃にシート状食品を乾燥するために試作したという小さな乾燥機第一号を見せてもらいました。
木箱の側板に丸い穴をあけ、扇風機の風を送り込むシステム。学生のお父さんがDIYで作ってくれたそうです。橋口さんはOEMで製造を受注しているため、人と人とのつながりで出来るもの、それがありがたいと何度も言います。
斬新な発想を持った人との出会いから生まれた製品は、今後どんな拡がりを見せるのか期待しています。
(NBC長崎放送 栗原紀子)
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