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まちに根付いて68年。家族で温かく迎え入れてくれる天ぷら屋

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地下鉄赤坂駅からほど近い、大正通りと昭和通りの交差点。人や車がひっきりなしに行き交う中、そこだけ時の流れが違って見えるお店があります。

天安外観

福岡に住む人、あるいは頻繁に福岡を訪れる人の多くは目にしたことがあるでしょう。「天ぷらの天安」は昭和32(1957)年の創業以来、68年間ずっとこの場所で営まれてきました。

天安2代目

カウンターの前の板場に立ち、天ぷらを揚げるのは2代目店主・樋口潔さんです。創業者であるお父様の姿を幼少期から見続け、自身も天ぷら職人になろうと高校卒業後すぐに上京し、「銀座 天一」の本店・支店で修行。22歳で福岡に戻り、それから54年にわたって「天安」に立ち続けています。

天安内観

お店の成り立ちをうかがうと、「実家が冷泉町で旅館をしていたんですよ。でも旅館は母が女将になるわけだから、男手はそんなにいらんやろうって。それで料理人だった父が旅館とは別にお店を出すことにしたそうです」と樋口さん。お店は改修こそされていますが、外観も上の写真の内観も創業当時からほぼ変わっていないそうです。

天安内観イメージ

「私も小さかったばってん、よぉ覚えちょらんけど、店ができたのは確か昭和通りができたころやなかったかなぁ。まだ博多駅も祇園にあった時代ですよ」と振り返ります。また平和台球場が近くにあり、当時は西鉄ライオンズの選手もお店によく食べにきていたそうで、壁には選手たちの写真やサインが飾られています。

天安2代目3代目

代替わりして樋口さんがカウンターの前に立つようになったのは、およそ30年前のこと。「親父は88歳で亡くなる直前まで表に立って天ぷらを揚げてましたね」と樋口さん。それからは1人で厨房を守ってきましたが、3年前に和食料理人の息子・賢治さんが「一緒にやりたい」とお店に入り、現在ともに働いています。

天安テーブル席 天安個室

賢治さんがお店に入ったことを機に奥を改装し、また「居酒屋的に楽しんでもらえるように」と単品メニューを充実させたそうです。

天安メニュー 天安メニュー

昼は天ぷら定食のみですが、夜は天ぷらをメインに、刺身や魚料理、おつまみ系のメニューがいろいろ提供されています。

天安玉ひも

夜も定食はありますが、今宵は居酒屋的に楽しむことにします。まずは、創業からあるという名物料理「玉ひも」(500円)です。「きんかん」とも呼ばれる鶏の卵巣と、「ひも」と呼ばれる鶏の卵管をしょうゆで煮た料理なのですが、これがいい塩梅の甘辛さでビールがぐびぐびと進むこと! 

天安ゴマサバ

次に「ゴマサバ」(1,300円)を注文しました。立体的に美しく盛られたゴマサバは、その見栄えだけでなくボリュームにもびっくり。新鮮で弾力と甘みあるサバに、自家製ごまだれがほどよく絡み、夢中で完食しました。

天安天ぷら

そして、いよいよ天ぷらです。単品もありますが、「おまかせ天盛り」(2,400円)を注文しました。この日の天盛りはエビ、四角豆、シイタケ、マイタケ、エビミンチ入り万願寺とうがらし、アスパラ、島らっきょ、さつまいも(紅ハルカ)でしたが、旬の「松茸」(1本1,000円)を食べたかったのでシイタケの代わりに入れてもらいました。

天安天ぷら

横からの写真では全貌がわかりづらいので上からの写真もどうぞ。品数の多さはもちろんエビが2尾も入っていて、かなりお得ではありませんか?

天安松茸

松茸だけ取り出して別撮りさせてもらいました。なんてったって松茸ですから(笑)。大きくて立派、贅沢ですね。

天安イメージ

鍋たっぷりのなたね油で揚げるのは先代からのスタイルです。「油の温度はだいたいわかりますが、いまだに衣の調整は難しいですよ」と樋口さん。その日の気候や湿度などによって粉と水の配合を変え、それも目分量だといいます。これぞ職人、長年の経験と勘がなせる技。エビはふんわりと、野菜やキノコはさっくりと、具によって違う食感で楽しめます。もちろん揚げ具合もお見事で、それぞれのネタの味が際立つ天ぷらの妙も堪能しました。

天安イメージ 初代の頃に使われていたメニュー札

食事を楽しむあいだ樋口さんとの会話は弾み、また女将の律子さんも加わってさらに昔の話に花が咲きます。「このへんの会社員の人たちはツケで飲んでて、月末になるといろいろな会社に集金に行きよりました」「高いビルもなかったけん店の前から大濠公園の花火がよく見えてねぇ」……などなど話は尽きません。気づけば隣に居合わせたお客さんも混ざって、西鉄ライオンズからはじまった野球の話で大盛り上がり。「これもカウンターの醍醐味ですよ」と樋口さん。

興味深いお話のオンパレードでまだまだ聞いていたいところでしたが、夜もすっかりふけました。続きはまた次回。読者のみなさんも気になる方はぜひカウンターに座って、樋口さんや律子さんに気軽に話しかけてみてください。思っている倍以上のおもしろいエピソードが聞けるはずです。

店舗名:天ぷらの天安
ジャンル:天ぷら
住所:福岡市中央区舞鶴3-1-1
電話番号:092-781-1094
営業時間:11:30~OS14:00/18:00~OS21:30
定休日:日曜、祝日
席数:カウンター6席、テーブル20席
個室:4-6名
メニュー:夜定食1,600円・2,000円・2,700円、天丼2,000円、おまかせ天盛り2,400円~、刺身4点盛り2,400円~、ゴマサバ1,300円、玉ひも500円、山芋鉄板800円、本日のかき揚げ600円~、穴子わさび焼き1,600円~
URL:https://www.instagram.com/tenpura_tenyasu/

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この記事を書いたひと

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