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平尾路地裏、家族で営む焼鳥の名店

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福岡市在住の食べることが大好きな50人が、自分が愛してやまない店について書いている書籍「私、この店、大好きなんです。 3」(聞平堂発行)からとっておきの1軒を転載しています。掲載している料理や店舗内容は、書籍掲載時のものです。

ハッキリ書くけど……パフォーマンス重視のお店やインスタ映え優先のチャラいメニューが好きじゃない。ケツがムズムズ。そそくさと帰ることにしている。ワタシが大好きなのは、取材のお願いをしたら「うちなんか何も特徴ないですからね~」なんて言ってしまう謙虚な大将がいるお店である。
平尾駅近くの路地裏にこっそりある「焼きとりのこだま」は、まさに、そんなお店である。そっと暖簾をくぐって、目だけで合図してもらい独りカウンターに座る。いつものようにノンアルコールビールを頼むと、速攻で丁寧な仕事がされた3種盛りのお通しが出てくる。串はもちろん、サイドメニューも派手さはないのだが実にうまい。無駄口はない。ひたすら食べて、そぉーっと帰る。

こだま 店内

男前な大将は、脱サラ組の現在47歳。5年間、長崎の有名焼鳥店で修業して40歳を機に福岡で独立。宮崎県の生産者さんから銘柄鶏「霧島鶏」を直接仕入れ、串のすべてがなんともジューシー。ワタシの舌が確かならば、焼きの腕が年々極まっている。特に「こだまのつくね」は絶品だ。

路地裏の名店で、もうひとつ伝えておきたい「ゆうこ母さんの今日のおばんざい」メニュー。ゆうこ母さんとは、大将の実母。鹿児島の大隅半島の家から片道5時間をかけて鹿児島市内の料理学校に毎日通ったのは55歳のとき。長男坊である大将が福岡で焼鳥店を始めるので2ヵ月だけ手伝ってと言われて早7年の月日が経った。大隅半島の郷土料理を礎としたおばんざいメニューは、美味いだけでなく心に沁みる。

こだま おばんざい

40歳から独立開業した長男坊と55歳から料理学校に通った腕を試しはじめた76歳のゆうこ母さんのお店。裏じゃケンカは絶えないようだけど……。親孝行が中途半端なワタシには、その姿が目にも沁みる。
「こだまのつくね」と「ゆうこ母さんのおばんざい」を少しだけ残して、最後に、「塩おにぎり」を注文する。最高のマリアージュ。これが染み渡る〆。インスタ映えなど期待しちゃダメなのだ。

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