この店のことを知ったときから「良い店名だなー」と思っていました。コーヒーは日常的に飲むものですから、“たかが”という人もいるかもしれませんが、“されど”と考えている人も多いはず。今回はそんな思いを屋号に込めた「Saredo Coffee」を紹介します。
オーナーロースターの権藤さん。シアトル系コーヒーチェーンで働き始めたのが入口
2013年、六本松にて開業した「Saredo Coffee」。護国神社そばの比較的緑が多い場所で、主張し過ぎない店の雰囲気がのどかな街の風景にとても馴染んでいました。それはきっと、店主の権藤恒一さんの穏やかで優しい人柄あってのことだと思います。
そんな同店ですが、店が入っていた六本松の建物の解体が決まり、2025年2月に草香江に移転しました。場所は大濠公園の南西、大濠一丁目交差点のそば。大濠公園や福岡市美術館に遊びに行った際に立ち寄るのにピッタリな立地です。
目立つことなく、ひっそりと
建物の築年数は50年ほどだそうですが、見た目にはそこまで古い印象は受けません。優しい色合いのベージュのオーニングに木漏れ陽があたり、いかにも落ち着いたコーヒーショップという雰囲気。店に入ると吹き抜けになっており、開放感があります。1階が豆売り・物販、注文カウンターになっており、カフェスペースは2階です。
カフェ利用の際は、1階で注文して2階へ
この日は豆が選べるハンドドリップコーヒーと秋限定の栗のタルトのセット(950円)をオーダー。焙煎度合いは大きく中煎り・中深煎り・深煎りに分かれており、シングルオリジン7、8種、ブレンド4種をラインナップ。選択肢が多いので悩まれるかもしれませんが、どの豆も“個性バリバリ”“エッジが立っている”という感じではないので、その日の気分、合わせるスイーツとの相性で選んで良いと思います。
秋限定の栗のタルトと、豆が選べるハンドドリップコーヒー
権藤さんが大切にしているのは、「まろやかで包み込むような、丸みのある味わい」。焙煎度合いや豆の産地、プロセスは違っても、この点は常に意識していると言います。コーヒーの味わいにも権藤さんの穏やかな人柄が表れていますね。
いろいろ質問しながら豆を選ぶのがおすすめ
ちなみに、ブレンドは「まろやか」「ほろにが」「ごほうび」と、直感的に選びやすい名前になっているのは昔からで、何より100グラム700円~という価格帯なのはうれしいポイント。昨今、生豆の値上がりからコーヒーはどんどん高くなっている印象がありましたが、「日々気軽に飲んでもらえるように」とこの価格帯を維持されていることに素直に頭が下がります。
抽出はハンドドリップのほか、エスプレッソマシンもある
ちなみにこの日、私は栗のタルトと合わせるということ、かつ朝イチのコーヒーだったので深煎りのインドネシア マンデリンをチョイス。しっかり苦みはあるのですが、甘みも際立っていて、香りもグッドでした。
焙煎機はバランスの良いコーヒーに仕上がる半熱風式
焙煎機は六本松時代から愛用しているギーセン社の2キロタイプ。移転のタイミングでモーターにかかる負荷を下げる意味で、ドラムの回転数を調整できるようにカスタムしたそうで、「そのことでより狙った味わいに焙煎ができるようになった」と権藤さん。そんなエピソードを聞き、どんなコーヒーを焙煎されていくのかますます楽しみです。今後はウォッシュトやナチュラル、ハニープロセスなど、オーセンティックなプロセスのほか、スポットで発酵系プロセスのコーヒーなども提案していきたいそうで、「Saredo Coffee」がそういった変わり種のコーヒーをどう表現するか個人的にとても興味をそそられます。
吹き抜けの非日常感と静かさが魅力のカフェ、日常的に利用しやすい豆売り、そして店を切り盛りする権藤さん夫妻の優しい人柄。ふとコーヒーを飲みたいとき、買いたいときに気兼ねなく行ける店という意味でもぜひおすすめしたい一店です。
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