「行きつけの喫茶店がある」という人は少なくなったと思います。その大きな理由は喫茶店やカフェという空間が持つ意味が変わってきたことがあげられるのではないでしょうか。今日、カフェはどちらかというと作業をしたり、時間をつぶす場所になっていますが、昔はコーヒーや食事を味わうだけじゃなく、マスターやママとの会話を楽しむ場所でもありました。店を通じてコミュニティが形作られ、常連同士も交流を持つ。閉塞的と思いきや、その輪の中に入ってしまえば居心地が良い。今はそんな風に利用できる喫茶店、カフェ自体が減りましたし、人との関わりはできるだけ持たなくて良いと考える人も多くなったのだと思います。ただ、そういった繋がりこそがこんな時代だからこそ大切では?と思わせてくれるのが、今回ご紹介する「ぶんカフェ」です。
扉に掲げられた「OPEN」の札が営業中の印
警固の裏通り、古いアパートの一室に店を構える「ぶんカフェ」。その扉を開けるのはやや勇気がいりますが、ご安心を。マスターの吉留修二さんの優しいたたずまいにきっとすぐに緊張はほどけるはずです。
ぶんカフェ店主の吉留さん。コーヒー業界に入って50年以上の大ベテランだ
吉留さんは福岡の老舗喫茶に30年以上勤めたベテランのコーヒーマン。一つ一つの所作にムダがないですし、さりげない気遣いはさすが。こちらが喋れば温かく応じてくれますし、静かに過ごす時間も大切にしてくれる。居心地の良い接客とはこのようなことを言うのだろうと感じます。お客のほとんどが常連というのも納得です。
飾らず、素直に「おいしい」と感じる一杯
そんな「ぶんカフェ」で飲んでほしいのが吉留さんが丁寧に淹れてくれるネルドリップコーヒー。焙煎度合いが異なる3種のブレンドをはじめ、イエメン・モカ、エチオピア・モカなど希少なストレートコーヒーもあり、1杯650円~からオーダーできます。
イエメンのモカが飲める店は希少
もともと長く勤めた喫茶店ではサイフォンを使っていたそうですが、ネルで抽出したコーヒーのバランスの良さに惹かれ、「ぶんカフェ」ではネルドリップの魅力を広めています。ネルドリップと聞くと、昔ながらのしっかり深煎りのどっしりとした味わいをイメージするかもしれませんが「ぶんカフェ」のコーヒーはどちらかというと中煎りがメイン。蝶ネクタイ姿のマスターがネルで抽出するというクラシカルなスタイルとのギャップにいい意味で裏切られます。
屋号の由来は、イエメンのコーヒー=ブンから
この日オーダーしたのは中煎りでバランスがとれた芳ブレンド(650円)。絶妙なブレンドと焙煎度合いで非常に飲みやすい一杯です。さらにネルで抽出していることから、味わいに丸みがある印象で、トゲトゲしさは一切感じません。吉留さんも「まろやかに抽出できるのがネルドリップの一番の魅力ですね」と話します。
吉留さんのコーヒーに対するひたむきさにも触れてほしい
「ぶんカフェ」でコーヒーを飲んでいると、不思議と心が温かくなってきます。アパートの一室という独特なロケーションもあるかもしれませんが、一番の理由はやっぱり吉留さんの優しく、飾らない人柄だと思います。店にはそんな吉留さんの人となりを表すモノ・コトがいっぱい。例えば筆文字のステキなロゴも知人が書いてくれたもので、店内に飾られた木彫のオブジェも常連さんが手彫りした贈り物だそう。
いろいろな人たちの”ぶんカフェ愛”で店ができあがっている
繋がりと、いろいろな支えがあって「ぶんカフェ」という自家焙煎店ができあがっていると感じられるエピソードです。そして思うのは、どんな便利な時代になっても、人と人との繋がりによって得られる体験、経験に勝るものはないということ。「ぶんカフェ」はそんなことをしみじみと教えてくれる隠れた名店です。
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