明治以降、文明開化とともに西洋各国の料理が日本にもたらされた。当初は華族や高級軍人など限られた階級の人々しか口にすることができなかったが、やがて上野や銀座に西洋料理店ができると一気に庶民の間に広まり、日本独自の「洋食」が誕生する。その過程で日本人の口に合うようにアレンジされたのが、コロッケ、トンカツ、カレー、ハンバーグなどの料理で、最大のポイントは、「ごはん(白米)に合う」こと。本場の西洋諸国から見ると"魔改造"というほかないが、今では日本人が大好きな大衆料理として定着している。そんな洋食文化を北九州に広めた一軒が、「街の小さなレストラン 9.9.9.(サンキュー)」である。
場所は小倉の中心街から少し離れた場所にある下到津。かつては路面電車が通っていた大通りから一本裏手の板櫃川沿いに建つ蔦の絡まる外観が、半世紀を超える歴史を物語っている。創業は1968年(昭和43年)と、日本がまさに高度経済成長に沸いていた時代。東京のレストランで修業したという先代の味を、息子である2代目店主の渡辺耕治さんが今も忠実に守っている。
メニューはメインのおかずにスープとサラダが付いた定食が中心で、ハンバーグ、チキンカツ、エビフライ、ポークステーキなど約15種類に、カレーライス、ハヤシライスがある。すべての料理に付いてくるコンソメスープ(メニューには吸い物と書かれている)にはゴロリとした鶏の肉団子が入り、ホッとするようなやさしい味わいだ。
そして、「サンキュー」の代名詞といえるのが、牛スジ肉とたっぷりの野菜を約2週間かけて煮込むというデミグラスソースだ。「先代の味を守ることが何よりも大事」という渡辺さんが受け継いだ一子相伝のレシピで多くの料理に使われているが、中でも一番人気を誇るのが「ハンバーグ定食」(1,600円)。2種類の牛挽肉をブレンドしてデミグラスソースで煮込んだハンバーグは箸で切れるほど柔らかく、ジュワッとあふれ出る肉汁がたまらない。「ごはんに合う洋食」としては、このデミグラスソースこそ最上位にランキングされるべきで、今風の小洒落たフレンチで申し訳程度にチョロっと添えられるソースなど足元にも及ぶまい。ソースの味をさらにダイレクトに楽しみたければ、「ハヤシライス」(1,300円)もオススメだ。
11月から2月頃まで冬季限定メニューとして登場するのが「カキフライ」(単品1,650円、定食1,850円)だ。プリプリとした大ぶりな牡蠣をカラリと揚げたフライはサクッとした歯応えの後に磯の香りが広がり、これぞ冬の味覚。マヨネーズから手作りするという玉子たっぷりのタルタルソースとの相性も抜群で、これまたごはんが進んで仕方がない。サラダにかけられたドレッシングももちろん自家製で、すべてにおいて満足度の高いランチを味わうことができる。
近隣の常連客から家族連れまで幅広い客層に人気で11時の開店直後から客席が埋まり、週末の昼時にはウェイティングになることも多いので、時間に余裕をみて訪問したい。駐車場は店頭を含めて15台分程で、土日祝日には臨時駐車場も用意されている。
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