警固にある私の大好きなフレンチレストラン「Le comptoir de TABATA(ル・コントワール・ド・タバタ)」の2号店がオープン――!
2026年1月10日、嬉しいニュースが舞い込んできました。場所は、薬院六つ角のそばにあるマンション「エステートモア警固本通」の2階。なんと「TABATA」の2軒隣です。
新たなお店の名前は、フランス語で「隣」という意味を持つ「à côté(アコテ)」。「TABATA」のお隣であることに加え、「隣に、身近に感じてもらえるお店に」という思いが込められています。
「TABATA」はおまかせコースのみのレストランであるのに対し、「à côté」はワインとワインに合う料理を気軽に楽しめるアラカルトのお店。15時からオープンしているので、早い時間からふらりと立ち寄れるのも嬉しいですね。
店内へ足を踏み入れると、特別に誂えられた9席のオーバルカウンターが目に飛び込みました。ゆったりと弧を描くカウンターは奥行きがあり、滑らかなアールを持つ椅子は身体にフィットする座り心地。大理石調のタイルや照明はどことなくクラシカルな雰囲気で、カジュアルながらも大人が落ち着ける空間となっています。
オーナーシェフの田畑伸弥さんと奈保子さん夫妻(両端)、そして、2人の元に彗星の如く現れた強力な助っ人“トミーさん”こと、富岡奎さん(中央)が笑顔で迎えてくれました。「à côté」のキッチンには富岡さんが立ち、その腕を振るいます。
富岡さんのご紹介は後のお楽しみとして、まずは2号店オープンのきっかけや思いを伺いました。
撮影:平川雄一朗「Le comptoir de TABATA」店内にて
「伸弥さんも私も、ちょっとしたおつまみや野菜のお惣菜でワインを飲むのが大好きで。“いつかそんなお店も出せたらいいね”と、ぼんやりと話していたんです。そんなところに2軒隣の物件が空いて……“これはもう、やるしかない!”となりました。動き出したタイミングで彼(富岡さん)も入ってきてくれて、幸運でした」と奈保子さん。
「コースにはコースの良さがある一方で、アラカルトにしかない楽しみもありますよね。『à côté』ではそれを表現したくて。クラシックで豪快なビストロ料理やフレンチの枠にとらわれない一品など、アラカルトならではのおいしさや自由さを楽しんでいただけると嬉しいです。何より、僕自身が楽しんでます(笑)」と田畑シェフも笑顔で話します。
2人の言葉通り、黒板には気になるメニューが目白押し……というか、これは全部食べてみたいな~。どうです? メニューを見るだけでもう、“良い店”だと伝わってきませんか?
なかには「TABATA」を創業した2013年から2017年まで、“ビストロ”を掲げていた頃に提供していたアラカルトメニューの姿も。「ホタテ貝柱のムース ブールブランソース」をはじめ、長年のファン歓喜の逸品も見逃せません。
まずは、朝倉などから届く旬野菜を中心に盛り込んだ「お野菜惣菜盛り」(1,000円)をいただきました。この日は、菜の花のアーリオ・オーリオ、ラタトゥイユ、キャロットラペ、アーティチョークのグレック(白ワインビネガー等で蒸し煮たもの)が登場。クタクタとろり、しんなりシャキシャキなど、食感や旨味、香りも違って、どれもおいしいです。
それに、ソムリエである奈保子さんが選ぶ白ワインがまたよく合うこと。グラスワインはカジュアルなものからクラシックなものまで、1杯1,000円前後から揃っていて「TABATA」とはまた違う自由なセレクトも光ります。
お次は、クラシックフレンチを核とする田畑シェフらしさを感じられる逸品「鹿・猪ブータン・ノワール テリーヌ」(1,200円)を。これはもう、ひと口目から感激です。
長崎・対馬から届く良質なジビエ料理は「TABATA」のスペシャリテの一つ。「対馬の『daidai』さんと長年信頼関係を築くなかで、新鮮な鹿の血も分けてもらえるようになり、それを活かしたいと作ったのがこの料理です」と田畑シェフ。
ブータン・ノワールはフランスの伝統的なシャルキュトリ(食肉加工)ですが、新鮮な素材と調理技術がないと、独特のクセが出てしまうことも。こちらは、ねっとりと濃厚な旨味が広がると同時に、あと口はサラリ。くさみなどはまったく感じさせず、ピュアできれいな余韻にうっとりしました。中に仕込まれた猪の脂の食感と甘味も良いアクセントになり、ワインがぐんぐん進みます。
そして、お待たせしました。続いては、「à côté」を支えるシェフ・富岡さんの腕が光る逸品も注文しましょう。
富岡さんは東京出身で、イタリアン一筋の料理人。東京のシチリア料理店の草分け的存在・渋谷の「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」(現在は南青山)や、伝統的な北イタリア料理の雄である中目黒の「ICARO miyamoto」、イタリア料理好きが集う質実剛健な名店・六本木の「オステリア ナカムラ」など、名だたるイタリア料理店で約10年に亘り腕を磨いてきました。やがて、「いずれは独立を」と志すなかで、人や風土に惹かれた福岡へ移住しての挑戦を決意。そんな折に出逢ったのが田畑夫妻だったと言います。
「イタリア料理は郷土料理。北から南まで、同じ国でも使う食材、オイルから違っていて、地方ごとに強い個性があります。だから面白いし、もっと知りたい、食べたいと引き込まれるんです。カウンターでアラカルトという『à côté』の強みを活かし、お客さんとコミュニケーションをとりながら、あまり知られていない地方料理や少しマニアックなものもお出ししていけたらと考えています」。
富岡さんがそう話し、作ってくれたのは、甘く芳しいシナモンや焦がしバターの香りが広がる「さつまいもとミントのラビオリ」(1,400円)でした。
こちらは、イタリアの最北西・フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に伝わる、甘い詰め物パスタ「チャルソンス」を再現したもの。本場はジャガイモや砂糖を使うそうですが、富岡さんは「ワインに合うように」と砂糖の甘さを控え、サツマイモで自然な甘味を表現しています。
口いっぱいに弾けるのは、手打ちパスタのプリッとした食感となめらかなサツマイモの舌触り。基本に則り添えられたミントや自身で燻製をかけたというチーズのアクセントもよく、これはクセになるおいしさです。
そして、最後に選んだのは「仔羊・カブの煮込みとクスクス」(1,800円)。トッピングのメルゲーズ(1本250円・写真は2本)も、もちろんオーダーしましたよ。レーズンを散らしたクスクスにもグッときます。
ホロリと軟らかくスジや脂身に甘味のある仔羊、とろりとしたカブ、滋味深いシチューの味わいも格別。仔羊の旨味がギュッと詰まった自家製のメルゲーズ(ピリ辛ソーセージ)がまた美味で、ワインとの相性はいうまでもなく抜群です。
デザイン事務所「みずうみデザイン室」に制作をお願いしたというロゴもおしゃれ。店内のオーバルカウンターを模っているそう
ジャンルにとらわれずに食材を活かして作る一品から、クラシカルなフランスのビストロ料理、マニアックなイタリアの地方料理まで――。こんなに充実したアラカルトとワインを片手に、15時から心地よい時間が過ごせるなんて……控えめに言っても最高! オープンして間もないにも関わらず、すでに常連さんが増えているのがその証拠ですね。「TABATA」でコースを満喫した後に、締めの一杯をこちらでいただくのも楽しそうです。
席に限りがあるので、事前予約または電話後に訪問するのが確実。これは、行かない手はありませんよ。
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