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サッカーの聖地でイングランドを撃破!W杯へ加速する日本代表

山本修司

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サッカーの男子日本代表は日本時間の4月1日に行われた国際親善試合で、強豪イングランドに対して1-0で初勝利を挙げました。会場は「サッカーの聖地」といわれるロンドンのウェンブリー競技場という、完全アウェーの中での快挙でした 。ワールドカップまであと2か月という中で、この歴史的勝利はどういう意味を持つのでしょうか。4月3日放送のRKBラジオ『立川生志 金サイト』に出演した、ジャーナリストで毎日新聞出版社長の山本修司さんがコメントしました 。

「勝った者が強い」ことを証明した歴史的一戦

これは歴史的勝利です 。私は昨日、全試合のビデオを見たのですが、日本代表の組織としての力も、個の力も感じさせる内容だったと思います 。

よくサッカーでは「強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ」と言われます 。国際サッカー連盟(FIFA)ランキングはイングランドが4位で日本が18位、試合のデータを見ると、ボールの支配率はイングランドが68%で日本は32%、シュート数は19に対し7、コーナーキックにいたっては11に対して1と、圧倒されています。「強かったのはイングランドで、勝ったのは日本。だから日本は強い」ということになります。

イングランドには今回、ケーンやベリンガムといった中心選手が出場しなかったという面はありましたが、日本だって久保や遠藤がいませんでしたから、この勝利の価値に変わりはないと言い切れます。

10年ほど前に、社会人野球の名門・東芝で投手としても監督としても優勝した太田垣耕造さんとお話しした際に、東芝が強いラグビー(あのリーチ・マイケルがいる東芝ブレイブルーパス東京)と野球の違いについて「ラグビーは少しの差であってもたいてい強い方が勝つが、野球はこちらの最低の状態が相手の最高の状態より上、つまりかなり実力差があったとしても、負ける可能性があるので怖い」と話していました。

実力差があった場合、ラグビーでは10回やったら10回負けるけど、野球なら1回ぐらいは勝つチャンスがある、それだけ意外性というか不確実性があるということです。サッカーはラグビーと野球の中間くらいかと思います。

サッカーの天皇杯でJリーグのチームが大学生に負けることが時々ありますが、仮に番狂わせだったとしても、それなりに実力差が近くないと勝てないということですから、日本代表が力をつけていることは間違いないでしょう。

実際日本は、2022年ワールドカップカタール大会の1次リーグでドイツとスペインを破りましたし、昨年10月の国際親善試合でブラジルに3-2で逆転勝ちしました。イングランド戦の3日前には、スコットランドにも勝っています。

36年越しの回答と「戦術カタール」の進化

日本代表の森保一監督は1990年のイングランド留学時、周囲から「日本人はサッカーができるのか?」と聞かれたことがあるそうです。それから36年後、サッカー生誕の地の聖地で、自らその答えを示したことになります。

今回の勝利で注目したいのは、選手たちの間で使われている「戦術カタール」という言葉です。これは、前半は相手の猛攻に耐えて体力を蓄え、後半に一気に攻撃のギアを上げる急襲作戦を指します。しかし、今回のイングランド戦は先制して逃げ切るという「堂々とした戦いぶり」であり、これまでの急襲作戦とは一線を画す価値がありました。

選手たちは極めて冷静です 。三笘薫選手は「ボールを支配されているギャップを埋めないと、本大会で痛い目に遭う」と語り、上田綺世選手も「10試合やれば勝率は良くない」と分析しています 。こうした客観的な視点こそが、どんな状況でも勝ちきる「勝利の再現性」につながる経験値となるのです 。

わずか33年で世界の高みへ

日本にプロリーグができてから、わずか33年です。1863年にイングランドサッカー協会が設立された歴史と比較すれば、日本の歩みは驚異的なスピードだと言えます。

今回は親善試合でしたが、本番のワールドカップになれば相手もさらにレベルを上げてきます。しかし、サッカーの祖国でありアウェーの聖地でもあるスタジアムで、堂々と戦い勝利した経験は、チームを一段高いステージへと引き上げました。

ワールドカップの初戦はランキング7位のオランダです。今回のような戦いぶりで勝利し、大会に弾みを付けてほしいと願っています。

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この記事を書いたひと

山本修司

1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。