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「R調査班」は、いま社会問題となっている「ブラック校則」です。福岡県内に住むある女子中学生は、校則違反で別室登校を指示され、教員たちに取り囲まれて監視されたと訴えます。どんな校則に違反したのでしょうか? 校則をめぐる現状を取材しました。
眉間の産毛…「それも眉毛だ」
女子生徒「眉毛を、産毛だけ剃っただけなのに(教師が)すぐ別室に入れたりとか、本当に辛いから学校に行きたくなかった」
福岡県久留米市の公立中学校に通う、中学3年の女子生徒です。2022年4月、別室で3日間自習するよう指示されました。きっかけは、生徒指導の一環で実施された頭髪検査。女子生徒は眉毛を剃ったとして、校則違反だと指導されたのです。
指導を受けた際に女子生徒の母親が撮影した写真です。女子生徒は、「眉毛と眉毛の間の産毛を剃っただけで、校則違反ではない」と訴えましたが、教員からは「それも眉毛だ」ととがめられたといいます。
女子生徒の母親「『眉毛と眉毛の間に毛がありません』と言ってきたんです。その言葉を理解するのに、時間がかかったんです。私、いじめかと思いました」
なぜ幼児用教材「迷路」? ひたすら反省文
その後、学校に呼び出された母親は、教員から自習用に渡された教材を見てあ然としました。
女子生徒の母親「3歳、4歳、5歳用の『迷路』だったんですよ、教材が。そういうテキストを買って、娘に与えていた。お絵描きしていいよとか。あとは『眉毛剃ってごめんなさい』みたいな反省文をひたすら書かせる」別室登校となった女子生徒は、壁を向いた状態で座らされ、5人の教員から取り囲まれるように監視されていたということです。
女子生徒「取り囲まれて腕組みされて『白状しろ』と言われたので、本当のことを言っているのに信じてくれないのは、その時すごく傷ついたし、ものすごくつらかったです」 女子生徒の母親「ストレスで死ぬんじゃないかと思って、つらかったですね。改善したいんですけど、学校がそんなことするから、解決しようがないんですね」
久留米市教委「直ちに行き過ぎとは言えない」
女子生徒に対する指導は適切だったといえるのか。学校側は、RKBの取材に対し、「この学校かも答えられない。教育委員会に聞いてください」と回答しました。
この問題は、6月の久留米市議会でも取り上げられましたが、教育委員会の担当者は、学校側の対応をこのように釈明しています。
久留米市 秦美樹教育部長「発達段階の子どもたちが、眉や髪型ばかりに気を取られ、肝心の学習や生活がおろそかになることを心配したものではなかろうか、と思います。個別に説諭や内省を促すこともあり、別室での指導が直ちに行き過ぎ、合理的でないとは言えないと考えています」
福岡市では全中学校で校則を見直し
下着の色を指定したり、特定の髪型を禁止したりと、合理的な理由がないいわゆる「ブラック校則」は、いま社会問題となっています。福岡市では、下着や眉毛、髪型などの校則を設ける学校が8割を超えていましたが、2022年4月から市内の全中学校で校則の見直しを図りました。
RKB植高貴寛「こちらの中学校では、4月から新たな校則が始まりました。運動靴の靴箱にはいろいろな色の靴が見られます」
福岡市東区にある香椎第2中学校です。靴箱には、2021年までは見られなかった様々な色の靴が並んでいます。生徒や教員のほか、保護者や地域の代表が集まり、校則を見直す検討委員会が開かれました。
熊谷善校長「特にこれだけ(校則を)緩めてほしいという議論は少なかったかなと。それよりも、例えば将来、高校入試や社会に出たことを踏まえた校則のことが議論に出たかな」
生徒の意見採り入れて校則を見直し
新しい校則では、ポニーテールやお団子ヘアーが認められ、眉毛については「自然な状態を保つ」という項目を加えて、悩みがある生徒には個別に対応するとしました。また、下着は白だけが認められていましたが、2022年からは5つの色から選択できるように変更しています。
熊谷善校長「服装や頭髪の乱れが問題行動につながっていくケースをたくさん見てきましたので、その部分が少し広がることによって『大丈夫だろうか』という心配はありました。ですが、子供たちがしっかり受け止めて適応したな、と感心しています。
福岡市教委 永野主税中学校教育課長「生徒一人ひとりから意見を採り入れて、生徒自らルールを作る『ルールメイキング』を取り組めていることは、とってもいいこと」
見直しの「趣旨」理解できていない学校も
一方、市民団体が福岡市の28の公立中学校を調査した結果、20校以上の学校で「眉毛を整えてはならない」という項目が残されたままでした。また、半数以上の学校で下着の色などの規則もありました。市民団体は2022年9月、「学校側が校則の見直しの趣旨を理解していない」として、教育委員会に改善を求める要望書を出しています。
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