政治の世界では、親の選挙区を子供などの親族が引き継ぐ「世襲候補」が少なくありません。23日に投開票された福岡県新宮町の町長選挙でも「世襲候補」が出馬し、その是非が問われました。
◆長男の後継立候補に父の現職町長は
福岡市に隣接し人口が増え続けている新宮町。そのトップを決める選挙が23日に実施されました。
RKB小畠健太「3期務めた現町長の引退に伴って、新人2人が後継の座を争う今回の選挙。政策論争の裏側で焦点の一つとなったのが、『世襲の是非』です」
長崎琢也氏「立候補するという決意をして、そこで私の父を説得するのに2か月かかりました」
町長選に立候補した新人の長崎琢也氏は、現職の長崎武利町長の長男です。出陣式には、町議選の候補者など多くの支援者が集まりました。ただ、町長である父・武利氏は、集会会場に姿を見せるものの応援演説は一切しませんでした。
長崎武利・新宮町長「世襲批判、首長だからなお(のこと)でしょうね、議員はそうまでないみたいですけど。今、私は後援会に入っていなくて、もう蚊帳の外。なるべく町長とは出さないように…。積極的に『息子をお願いします』とはやっていませんから」
◆「世襲に疑問」対抗馬は元町役場幹部
これに対して33年勤めた町役場を辞めて出馬したのが、桐島光昭氏です。
桐島光昭氏「人によっては、『(相手が)ズルい選挙をしよる』という風な言葉も聞かれます。このズルい選挙ではない、政策で判断してください」
桐島氏は、これまでの「町の発展」は評価したうえで、「世襲」に対して疑問を持ち、出馬を決めたといいます。
桐島光昭氏「現・長崎町長の息子さんが出馬表明をされて、私も『うっ』と思ったんですけども、今後の新宮町を担っていくには私の方ができるのではないかと思い、出馬の決意をした次第です」
◆町民の意見は様々
世襲候補について、町民の反応も様々です。
数年前から住む女性「ちゃんと考えてくれたらいんですけどね。なんか適当に引き継いで適当にやる感じだったら嫌だなと思います」
昔から住む男性「親の七光りはどうかなと思うけど、その人も頑張るかもしれんしですね、当選したら当選したで」
◆町民の審判は「世襲」認めず
そして23日、町民の審判が下されました。
桐島光昭 6,464
長崎琢也 5,516
投票率 49.08%(過去最低)
桐島光昭氏「勝ったぞ~! 本当に草の根運動が勝ちました。新宮町の良識を日本に知らしめることができました。ありがとうございました!」
結果は接戦の末、桐島氏が勝利。民意は、世襲に「NO」を突きつけました。
長崎琢也氏「すべて私の責任でございます。本当に申し訳ございませんでした」
桐島光昭氏「今、『町は二分されている』というと言いすぎかもしれないが、そういう状況ですので、まずは一つに融和をさせて、一つの新宮町にして」
◆「政治家の世襲」学識者の見方は
政治家の世襲をめぐっては、23日に投開票された衆議院山口2区の補欠選挙でも争点となったほか、4月に行われた福岡市議選や福岡県議選でも見られました。
西南学院大学 鵜飼健史教授「世襲であろうが世襲じゃなかろうが、優秀な方もいるし、優秀じゃない方もいる。世襲している方が必ずしもどうかっていう問題とはちょっと違うかな」
こう話すのは、政治学が専門の西南学院大学の鵜飼健史教授です。「世襲は一概に否定すべきではない」としたうえで、問題点を次のように指摘します。
西南学院大学 鵜飼健史教授「日本政治特有の問題として言われるように、地盤・看板・カバンですよね。そうしたものが反映されやすいような選挙制度を維持しているということが、やっぱり一つは根本的な理由かと思います」
世襲の候補者には、ある程度強固な後援会などの組織「地盤」や、選挙区での知名度「看板」、それに選挙資金「カバン」がはじめから用意されています。
◆福岡市議「息子は支援者の思いをよく聞いている」
南原鉄平氏「どうかこれからも長い目で見てやってください。頑張っていきます。最後までご声援をよろしくお願いいたします」
福岡市議会の南原茂議員は、父から引き継いだ地盤をさらに息子の鉄平氏に託しました。陣営スタッフも引き継ぎましたが…。
アナウンス「南原茂でございま…南原鉄平でございます」
南原茂・福岡市議「いろんな批判があると思うんですよね。3代も続けると。でも、支援者の思いをよく聞いているんです。何もない方よりは、ひょっとするといいのではないかと私は思っています」
◆「特定の人に支配される」構図がもたらす政治離れ
もちろん、世襲候補であっても有権者の支持がなければ当選できません。南原氏も今回の市議選で落選しました。ただ「地盤、看板、カバン」を持つ世襲候補が多様な人材の政治への参画を阻み、ひいては政治離れの一因となっていると鵜飼教授は指摘します。
西南学院大学 鵜飼健史教授「有権者からすると、『自分たちの政治』というようなものが特定の人々に支配される構図が出来上がっていって、一般の方からすると一層政治の世界が遠いものになっていく、という風なのが最大の問題点だと思います」
◆長男の後継立候補に父の現職町長は
福岡市に隣接し人口が増え続けている新宮町。そのトップを決める選挙が23日に実施されました。
RKB小畠健太「3期務めた現町長の引退に伴って、新人2人が後継の座を争う今回の選挙。政策論争の裏側で焦点の一つとなったのが、『世襲の是非』です」
長崎琢也氏「立候補するという決意をして、そこで私の父を説得するのに2か月かかりました」
町長選に立候補した新人の長崎琢也氏は、現職の長崎武利町長の長男です。出陣式には、町議選の候補者など多くの支援者が集まりました。ただ、町長である父・武利氏は、集会会場に姿を見せるものの応援演説は一切しませんでした。
長崎武利・新宮町長「世襲批判、首長だからなお(のこと)でしょうね、議員はそうまでないみたいですけど。今、私は後援会に入っていなくて、もう蚊帳の外。なるべく町長とは出さないように…。積極的に『息子をお願いします』とはやっていませんから」
◆「世襲に疑問」対抗馬は元町役場幹部
これに対して33年勤めた町役場を辞めて出馬したのが、桐島光昭氏です。
桐島光昭氏「人によっては、『(相手が)ズルい選挙をしよる』という風な言葉も聞かれます。このズルい選挙ではない、政策で判断してください」
桐島氏は、これまでの「町の発展」は評価したうえで、「世襲」に対して疑問を持ち、出馬を決めたといいます。
桐島光昭氏「現・長崎町長の息子さんが出馬表明をされて、私も『うっ』と思ったんですけども、今後の新宮町を担っていくには私の方ができるのではないかと思い、出馬の決意をした次第です」
◆町民の意見は様々
世襲候補について、町民の反応も様々です。
数年前から住む女性「ちゃんと考えてくれたらいんですけどね。なんか適当に引き継いで適当にやる感じだったら嫌だなと思います」
昔から住む男性「親の七光りはどうかなと思うけど、その人も頑張るかもしれんしですね、当選したら当選したで」
◆町民の審判は「世襲」認めず
そして23日、町民の審判が下されました。
桐島光昭 6,464
長崎琢也 5,516
投票率 49.08%(過去最低)
桐島光昭氏「勝ったぞ~! 本当に草の根運動が勝ちました。新宮町の良識を日本に知らしめることができました。ありがとうございました!」
結果は接戦の末、桐島氏が勝利。民意は、世襲に「NO」を突きつけました。
長崎琢也氏「すべて私の責任でございます。本当に申し訳ございませんでした」
桐島光昭氏「今、『町は二分されている』というと言いすぎかもしれないが、そういう状況ですので、まずは一つに融和をさせて、一つの新宮町にして」
◆「政治家の世襲」学識者の見方は
政治家の世襲をめぐっては、23日に投開票された衆議院山口2区の補欠選挙でも争点となったほか、4月に行われた福岡市議選や福岡県議選でも見られました。
西南学院大学 鵜飼健史教授「世襲であろうが世襲じゃなかろうが、優秀な方もいるし、優秀じゃない方もいる。世襲している方が必ずしもどうかっていう問題とはちょっと違うかな」
こう話すのは、政治学が専門の西南学院大学の鵜飼健史教授です。「世襲は一概に否定すべきではない」としたうえで、問題点を次のように指摘します。
西南学院大学 鵜飼健史教授「日本政治特有の問題として言われるように、地盤・看板・カバンですよね。そうしたものが反映されやすいような選挙制度を維持しているということが、やっぱり一つは根本的な理由かと思います」
世襲の候補者には、ある程度強固な後援会などの組織「地盤」や、選挙区での知名度「看板」、それに選挙資金「カバン」がはじめから用意されています。
◆福岡市議「息子は支援者の思いをよく聞いている」
南原鉄平氏「どうかこれからも長い目で見てやってください。頑張っていきます。最後までご声援をよろしくお願いいたします」
福岡市議会の南原茂議員は、父から引き継いだ地盤をさらに息子の鉄平氏に託しました。陣営スタッフも引き継ぎましたが…。
アナウンス「南原茂でございま…南原鉄平でございます」
南原茂・福岡市議「いろんな批判があると思うんですよね。3代も続けると。でも、支援者の思いをよく聞いているんです。何もない方よりは、ひょっとするといいのではないかと私は思っています」
◆「特定の人に支配される」構図がもたらす政治離れ
もちろん、世襲候補であっても有権者の支持がなければ当選できません。南原氏も今回の市議選で落選しました。ただ「地盤、看板、カバン」を持つ世襲候補が多様な人材の政治への参画を阻み、ひいては政治離れの一因となっていると鵜飼教授は指摘します。
西南学院大学 鵜飼健史教授「有権者からすると、『自分たちの政治』というようなものが特定の人々に支配される構図が出来上がっていって、一般の方からすると一層政治の世界が遠いものになっていく、という風なのが最大の問題点だと思います」
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