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創業70年。大濠公園の絶景を望む福岡フレンチのレジェンド

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少し前まで、東京や大阪に比べてフレンチやイタリアンが「弱い」と評された福岡。しかし海外でも注目されるシェフが現れるなど、昨今のシーンには頼もしさしかありません。そんな西洋料理文化の下地を築き、フレンチの楽しみを福岡に広めた「花の木」。大濠公園という最高の立地で客を迎える老舗を久しぶりに訪れました。

花の木外観

昼の眺めに負けず劣らず、店の照明が水面に揺れる夜の姿もまた美麗。迎賓館さながらの気品が漂い、眺めるだけで胸が躍ります。そんな無類の個性を放つレストランの原点は、1953年、中洲に登場した「ロイヤル中洲本店」でした。先駆的な本格フランス料理店として始まると、途中参加した日本フレンチ界の巨匠・井上旭氏の手腕によって大躍進。それから「花の木」への改名(1972年)や現在地への移転(1989年)など、様々な進化・変革を繰り返しつつ、いまなお福岡フレンチの第一線を走り続けています。

花の木1階階段 花の木1階ウエイティング

扉を開けると、そこにも期待通りのエレガンスが待っていました。一朝一夕には身につかぬ風格や貫禄は、なかなか他店にはない趣。1階のウェイティング席に置かれた椅子は、なんと人間国宝・窪田文平さんによる年代物だそうです。やがて案内の順番が来て、階段で2階のメインフロアへ向かうと──。

花の木内観

四季折々に美しい表情を見せる絶景が目に飛び込みました。どんなときも、瞬時にテーブルを極上の祝祭に染めあげる完璧なロケーション。「この景色に負けない味をと考えながら、常にベストな味を突き詰めています」と目を細めるのは、今年1月から料理長を務める濵﨑圭介さん。クラシックの伝統と食材生産者の想いを何より重んじる、39歳のフレンチ職人です。

花の木個室

その隣には6名まで利用できる個室も(増席は応相談)。すぐに予約で埋まるこの部屋は、かつて「ロイヤル中洲本店」を訪れたマリリン・モンローとジョー・ディマジオ夫妻が座った椅子があることでも知られます。あの伝説的スターと同じ椅子で食事できるなんて、実はかなり凄いことでは!?

花の木アミューズ

素敵な景色に話も弾むなか、お待ちかねの料理が登場。注文したのは13,860円のセゾンコースです。アミューズはコンソメのフランに、スープドポワソンのゼリーとフヌイユのピュレを乗せたもの。旨味濃厚ながら食感は軽やかで、コースの導入としては申し分がありません。
右に並ぶのは、キャラメリゼしたタマネギの甘みと3種のチーズの塩気が風味を高め合うサブレ。店のスペシャリテ「オニオングラタンスープ」のおつまみバージョンで、どちらもシャンパーニュと相性抜群でした。

花の木前菜

前菜は、酒粕やヨーグルトでマリネした高知県産金目鯛の炙り。素材に旨味とコクを与える酒粕効果で、口に運んだ白身はまさに滋味の塊です。夏らしい爽やかなキュウリのソースも好印象。

花の木フォアグラ

フランス産フォアグラのコンフィはクセがなく、スッと自然にとろけました。これはフォアグラが苦手な人でも楽しめそう。フェンネルの花などで彩りを加える盛りつけも鮮やかで、濵﨑さんの「らしさ」がうかがえます。

花の木魚料理

魚料理は、8分間のローストで極上の歯応えを引き出した長崎県産キジハタ。そのうまさはマデラ酒のソースと、焼きナスとフランス産ジロール茸で仕立てたピューレを合わせることで頂点に達します。特にピューレの美味しさは鮮烈で、こうした要素もクラシックフレンチならではの愉悦なんですよね。

花の木 肉料理

この日の肉料理は、モチッとした弾力が感動的なニュージーランド産の仔羊。「脂がしつこくなく、羊特有の風味もほどよく乗っています」とシェフもお気に入りの食材とか。パセリ入りパン粉、ニンニクのピューレ、ハーブ入りのオランデーズソースとの相乗効果もお見事です。
料理はどれも舌に馴染む美味しさで、余韻も軽やか。体に負担の少ないヘルシー度高めなフレンチだと思いました。

花の木デザート 花の木小菓子

締めくくりのデザート(パイナップルのスフレグラッセ&コンポート、マンゴーシャーベット)も実に涼やか。それに加えて、コース全体の満足度を決定的にしたのが小菓子のカヌレです。銅板の金型が生むカリッとした歯触りと、たっぷりのバターを投じたリッチな生地が生む口福は驚くほどでした。

群を抜くロケーションと料理で、すべての客に忘れ得ぬ思い出を残す「花の木」。この盤石のブランドが、70年にもわたる努力で磨かれたことを思うと感慨深いものがあります。
「ロイヤル中洲本店」創業時、まだ洋食に不慣れだった福岡の人々に、フレンチの作法やマナーを記した手紙をスタッフ総出で月間1,500通以上も送り続けた──というエピソードが僕は大好きで、そんな誇りや情熱の歴史がここでの食事を「特別な時間」に変えるのでしょう。福岡グルメ文化に大いなる飛躍をもたらした、レジェンドの称号にふさわしいレストランです。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

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この記事を書いたひと

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