昭和の雰囲気をそのまま引き継ぐ、関西風お好み焼きの超老舗

店主・早川佳子さんの実家は、西中洲にある老舗の焼鳥屋。小学校への通学路だった春吉大通りにあるお好み焼き屋「好味」は、子どもの頃から行きつけだったそうです。先代店主がおよそ50年ほど営業した後、後継者がいないことから店を閉めると聞き、店を引き継ぐことを決めたのは16年前。それ以来、妹の範子さんと２人で店を切り盛りしています。

先代から通算するとゆうに60年を超える店は、様々な飲食店が建ち並ぶ春吉大通りの中でも最古参の一軒。テント地の看板と暖簾も先代から引き継いだもので、「団子三兄弟」のような三連の赤提灯が絶好の目印となり、夜でもこの店を見逃すことは絶対にありません。

メニューを開くとまず書かれているのが「好味名物」の３品。その中から生ビールのおともに「極上酢もつ」（480円）と「チーズ春焼き」（600円）を頼みました。酢もつは千代町にある牛モツ専門店から仕入れているそうで、固すぎず、柔らかすぎずのほど良い噛みごたえがあります。部位を尋ねると「よくわからん」（笑）とのことですが、うまけりゃ何でもいいんです。春巻きの皮にチーズとコーンを包んで鉄板でパリッと焼いた「春焼き」もまた、生ビールに最高の組み合わせ。もう一品の「牛すじ煮込み」（720円）も頼もうとしたら、「仕込みが大変やけん載せんとって」と言われました（笑）。

と、ここまでのやり取りで気づいた方もいるかもしれませんが、店主の佳子さんと筆者は学生時代から旧知の間柄。この店に来ると、ついつい友達んちに来た感覚でくつろぎ過ぎてしまいます。

先代から店を引き継いだ後も、知り合いのツテをたどってお好み焼きの本場である大坂の店に教えを請いに行っていたという佳子さん。そこで伝授されたメニューのひとつが、大坂名物の「とんぺい焼き」（1,100円）です。薄く伸ばした生地をパリッと焼いて豚バラ肉と玉子を包み、ソースとマヨネーズ、洋からしをかけて、たっぷりの青のりと削り節をかけて仕上げています。食べている間にも熱した鉄板で豚の脂身や生地がカリカリに焼かれて、他に類をみないうまさです！

対して「好味焼き」（850円～）はオリジナルの創作メニュー。「呑んべえの常連さんから『あっさり食べられるもの作って』といわれて考えた」といい、豚やイカ、サクラえびなどの具材を入れたうす焼きを、三つ葉と白ゴマを入れたアツアツのダシにつけて食べます（写真はサクラえび入り850円）。香ばしい三つ葉の匂いが食欲をそそり、粉ものとは思えないほどペロリといけちゃいます。

そして、この店で絶対に外せないメインディッシュが「お好み焼き」（850円～）です。関西風お好み焼きは「まぜ焼き」とも呼ばれ、数種類の小麦粉にダシをブレンドした生地にキャベツ、ネギ、天玉、玉子、紅ショウガなどの具材をまぜ込み、ふっくらと焼き上げるのが特徴です（写真は「ぶた玉」850円）。
「好味」では粉やダシ、天玉、中濃ソースなどの食材と調味料はすべて大坂から取り寄せており、これほど本場の味を再現した味はなかなか福岡で食べることができません。

すでにこの時点でお腹はいっぱいですが、鉄板の上でジュウジュウと焼けるソースの匂いが気になります。「お土産に持って帰り～よ」と言われたので、「焼きそば」（880円～）は持ち帰り用に包んでもらうことにしました。

開店当初は深夜から朝方まで営業していましたが、「今はもうムリムリ！」と笑う佳子さん。現在は午後10時が最終入店で、お互い「健康が一番よね」と声をかけ合って店を後にしました。
先代が創業した昭和の時代から通算して60年を超える老舗だけに、いつまでも春吉大通りに三連提灯が灯っていることを願ってやみません。

• 住吉の50余年の老舗「鮨 なにわ」から生まれ変わった「鮨 忠尾」
• オープンして1週間経ちましたね