店の前を通る度に、「ここ、いつも賑わってるな~」というお店を巡る、福岡繁盛店探訪シリーズ第1回。初回で訪れたのは、炉端焼きと焼鳥の店「すみ劇場 むさし坐」。福岡随一の超人気酒場ですから、ご存知の方も多いと思います。
店舗より提供
渡辺通りから春吉側に一本路地を入った場所にあり、一帯には話題の飲食店がちらほら。ここ数年、食通の間でおいしい店が多いエリアとして認知を広めていますが、その立役者の一人が「すみ劇場 むさし坐」のオーナー、森公秀さんです。森さんは渡辺通という地名がピンとこない県外客も多いことから、“裏天神”というキャッチーな呼び名を付けるなど、この街の顔になりつつある人です。
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そんな“裏天神”を代表する人気店「すみ劇場 むさし坐」は、飛び込みで入れたら「ラッキー!」というくらいの繁盛ぶり。入口は男女に分かれた銭湯のようなユニークな店構えで、木の引き戸を開けると、「祭りか!?」と思わせるほど、活気がすごい! 店に入ってすぐに囲炉裏が目に入り、煌々と燃える炭の周りには串刺しにされた魚がズラリ。このライブ感こそが、同店の代名詞です。
「すみ劇場 むさし坐」は、2019年4月に開店。2012年オープンの「やきとり六三四(むさし)」、2017年オープンの「やきとり五二六(こじろう)」に次ぐ3店舗目で、ここでは焼鳥以外の名物メニューを展開しています。それが“原始焼”と名付けた、魚の囲炉裏焼き。鮮魚を串刺しにし、囲炉裏で焼く。まさに“原始的”な調理法なのですが、これが驚くほど理にかなっているんです。
店長の谷口さんは「絶妙な火力、魚と炭火の距離感で、生魚のおいしさを極限まで高められます。魚の不要な水分は抜け、身の旨味が凝縮する。これこそ原始焼の強みです。説明するよりも、まずは当店イチオシの大とろいわしを食べてみてください!」と早速焼いてくれました。
焼き始めること約20分、目の前に提供された「大とろいわし」(850円)。で、でかい! イワシって、もっと小さい魚じゃなかったんでしたっけ……?
「1尾170gオーバーのイワシを厳選していて、産地も北海道釧路産、千葉県産などを時期によって使い分けています。重視しているのは脂ののり。よく青魚で脂がのっているといわれるのはサンマですが、当店の大とろいわしの脂と旨味はサンマに負けませんよ」と谷口さん。
谷口さんの「おすすめは背中からガブリです!」の言葉通り、背側からいただくと、皮目はパリッと、身はふっくら。脂もすごくて、かぶりつくと皮の中に閉じ込められた脂が弾け飛ぶほどです。もちろん鮮度抜群ですから、青魚特有の臭みも一切なし。あえて取り除いていない内蔵もほのかな苦味があり、添えてあるカボスを搾っていただくと、まぁ最高! これはお酒が進むわけです。
次に注文した原始焼は、「サーモンハラス&いくら」(935円)です。サーモンは身にしっかり脂を蓄えた北欧産を使うことが多く、最初に皮面をパリッとなるまで焼くことで身の脂が落ち過ぎるのを防いでいるそう。焼き上がったサーモンを皿に乗せ、上から宝石のようにキラキラと輝くイクラをたっぷりとトッピング。熱々のうちに箸を入れると、内側からサーモンの脂がジュワリ。味付けは塩だけとシンプルにしており、素材の旨味が引き立っています。イクラもプチプチで、まさに最強の親子共演! 骨がなく食べやすいのもポイントですね。
「やきとり六三四」「やきとり五二六」から受け継がれている味、串ものも忘れちゃいけません。遠赤効果が高く、火力も長持ちするオガ炭で焼き上げる串は定番10種に加えて、その日のおすすめ串を2、3種用意しています。注文したのは、おすすめの「つくね」(264円)、「モモ」(242円)、「えび巻」(418円)、「和牛さがり」(715円)、「豚バラ」(220円)。
中でも、薄くスライスした豚バラ肉で生のエビを巻いた創作串の「えび巻」が人気No.1で、一口食べると驚くほどエビがプリプリです。豚バラ肉のカリッと焼かれた部分とエビの食感の対比がおもしろく、2つの素材の旨味の相乗効果で、ビールが進むこと請け合い。福岡の銘柄鶏を使う「モモ」、皮やセセリなど鶏のさまざまな部位のミンチをブレンドした自家製の「つくね」、ミディアムレアで焼かれた「和牛さがり」、鹿児島県霧島産を使う「豚バラ」と、どれもさすがの味わいです。
オーナーの森さんは福岡が全国に誇る名店「焼とりの八兵衛」出身。その名店から受け継がれたDNAに、“原始焼”というオリジナリティをプラスした「すみ劇場 むさし坐」。今年の8/23には同じく“裏天神”に、新業態となる「喜多郎寿し」もオープンしたというから、ますます目が離せません。
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