「水炊き」といえば、全国的に有名な福岡を代表する郷土料理。その発祥は1905年(明治38年)に創業した平尾の「水月」といわれ、一般家庭でも日常的に食べられる身近なご馳走の一つです。鶏ガラをベースにしたスープは大きく分けて白濁タイプと透明タイプがあり、現在では福岡市内で数多くの店がそれぞれの味を競っています。
その中で「とり田」は、2012年に薬院でオープンして以来、あっという間に人気店に駆け上った、いわば博多水炊きのニューウェーブ。鍋料理の伝統的な製法に数々の新機軸をプラスした、唯一無二のオリジナルな水炊きを食べることができます。その味を再確認すべく、今回は博多座の裏手にある「とり田 博多本店」を訪れました。
まず驚かれされるのは、スープの色です。白濁というより黄濁という言葉がふさわしい色合いで、店長の眞田喬さんによると「鶏の身そのものの色がスープに凝縮されています」とのこと。新鮮な丸鶏を水だけで6時間以上炊いて、身ごとプレスすることで旨味もすべて余すことなく抽出され、独特の色合いになるのだそうです。
最初に出てくる鶏肉は、九州産朝引き鶏のむね肉、もも肉、骨付きもも肉の3種類。生肉に見えますが実は秘伝のタレに漬け込んであり、塩を加えたスープを火にかけてグツグツと煮込みます。
「とり田」では、水炊きを美味しく食べるための独自の「作法」があります。といっても、調理はすべてスタッフがやってくれるのでご安心を。まず最初の作法は、サッとアクをすくった後のスープを一杯。丸鶏のあらゆる部位の旨味が凝縮されたスープは、何とも複雑で玄妙な味わい。トロ~りとした舌触りはコラーゲン感があり、パラリと塩を振るだけで十分な美味しさです。
鶏肉に火が通ったところで次の作法へ。鶏肉をいったん取り出した鍋に葱を入れてサッとしゃぶしゃぶにし、鶏肉と一緒に食べるのが「とり田流」です。ぽん酢をかける前に、まずは葱のシャキシャキ感を味わうのがオススメの食べ方。下味が付いているので、あっさりと淡白なむね肉はそのまま、脂のあるもも肉は柚子胡椒か生七味の薬味を付けて食べればそれぞれの旨味がいっそう引き立ちます。最後にぽん酢をたらして、味の変化を楽しみました。
鶏肉をひと通り堪能した後は野菜とつみれです。野菜の盛り合わせはキャベツ、エノキ、人参、青ネギの定番に、オカワカメなどの季節ものが入ります。追加の野菜は無料サービスなのもうれしいですね。
つみれには、むね肉、もも肉に加えて粗びきの砂肝が入っているのがポイント。ねっとりとした食感のあるジューシーな仕上がりで、これが自家製ぽん酢に最高に合うんです!
水炊きの〆といえばかつては雑炊が一般的でしたが、今では各店が個性を競い合っています。「とり田」でも「雑炊セット」(単品に追加の場合は+550円)のほかに、別店舗でも展開している自慢の「担々麺セット」(+550円)、さらに「トリュフリゾット」(+1,650円)が用意されています。しばし悩んでいると、眞田さんから「ぜひ一度リゾットを食べてみてください」とレコメンドされ、一も二もなくお願いしました。
鍋に残ったスープにご飯とトリュフペーストを入れてさらに煮詰め、別皿に移したところにオリーブオイル、グラナパダーノチーズとグラックペッパーをかけ、仕上げにたっぷりのフランス産生トリュフを削っていきます。その手順を目の前で眺めている間にもトリュフの香りが広がり、期待感はマックスに。スプーンですくって一口食べると、濃厚なトリュフとチーズ、鶏のエキスが口中と鼻腔に複雑なハーモニーを織りなし、水炊きとはまったく別次元の料理として完結しました。
今回は水炊きを単品(3,500円)で注文しましたが、前菜や写真の「博多名物ごまさば」などが付いたコース(5,500円~)で頼むのが断然お得です。また、「とり天」や「唐揚げ」、「手羽中の旨煮」など、鶏の一品料理も充実していますよ。
地下鉄「中洲川端駅」近くにある店舗は1・2階合わせて130席の大バコで、6名から最大24名まで収容できる個室も完備。広々とした店内で、昼も夜も自慢の水炊きを楽しむことができます。店内には博多祇園山笠各流れの手ぬぐいがディスプレイされており、来福客をもてなすにもぴったりのシチュエーションです。
ジャンル:日本料理、鍋
住所:福岡市博多区下川端町10-5博多麹屋番ビル1F
電話番号:092-272-0920
営業時間:11:30~OS14:00/17:00~OS22:00(土・日祝日は11:30~OS22:00)
定休日:なし
席数:テーブル130席
個室:2~24名
メニュー:水炊き(1人前)3,500円、水炊きコース5,500円~、ごまさば1,210円、とり天990円、唐揚げ990円、手羽中の旨煮880円
URL:https://toriden.com
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