「西中洲界隈で、魚のうまい店で客をもてなすならどこ?」──そう聞かれたとき、すぐ思い浮かぶのが「飯家くーた」です。南区大楠で1997年に旗揚げし、やがて西中洲へ移転。その後も同じ西中洲や東京・銀座に支店を構えるなど、その躍進はいまも続いています。
そんな指折りの人気店が、“焼肉”というジャンルに乗り出したのをご存知でしょうか。
それが今年3月、本店のそばにオープンした「くーたとやきにく」です。前は系列店の「にくのくーた」「つわぶき」が入っていた一軒家ですが、噂では見違えるほど内装を一新し、上質な空間に蘇らせたとか。これは一度見ておかねばと、夕闇迫る西中洲に足を運びました。
入店すると、まず左の壁一面を埋めたセラーが客を迎えます。下半分はワインセラーですが、やはり目を引くのは上半分を占めた熟成中の牛肉の塊。肉好きにはかなり胸躍る眺めですよね。しかしセラーまで造るとは、焼肉に賭ける「くーた」の情熱は本物のようです。
さて、この日は2階の個室を予約済み(室料不要)。全3部屋の個室は天井が高く、そこはかとなくスタイリッシュです。それでいて気取らない温かみもあり、これならどんな会食も盛りあがりそう。
また、隣接する別宅的な建物の2階にも4部屋個室があり、そちらはさらに隠れ家感の強い趣が漂っています。
ちなみに1階には、テーブル席と4席のカウンターがあり、僕はマルシェのように食材を並べたカウンターの雰囲気が気に入りました。「ここを3~4人で貸切り、接待利用されるお客様も多いですよ」と言うのは料理長の伊藤一臣さんです。
「この店の主役は焼肉ですが、専門店というわけではなく、本店の人気料理も厳選して置いています。なので“焼肉も魚も食べたい”とか、“連れに肉が苦手な人がいる”というときも安心してお使い下さい」
なるほど、メニューを見ると、刺身で始まり、天ぷら、焼肉、寿司で締める組み立ても可能。普通の焼肉店にはない懐深さは、この店ならではの大きなアドバンテージです。
もちろん、肉専門の職人が厳しく吟味する九州産黒毛和牛のうまさにも隙はありません。アラカルトなら“アテ感覚”で1枚から頼めるというのも面白いシステムです。
が、今宵選んだのは良コスパの「くーたとやきにくコース」9,000円(全7品。注文2人前~)。最初の前菜が済むと、次は「くーた」自慢の刺身の盛り合わせ(写真は2人前)が供されました。この日はアオリイカ、ヒラス、サバ、中トロ、サワラの炙り、ヒラメが並び、これだけでも満足感たっぷりの一皿に仕上がっています。
しかし本番はこれから。3品目の「くーたのお料理」にも、こちらの度肝を抜くのに十分なインパクトがありました。車海老、アワビ、イカ、かずのこ、ウニを盛った松前漬け(写真は1人前)は宝石箱にも似たゴージャスさ。さっぱりした塩味によって甘味を増した高級素材は、口に運ぶたび豊かな風味を爆散させます。昔から鮮魚に強い「くーた」の面目躍如たる逸品でした。
そして、いよいよ待望の焼肉に突入! 前半は、上タン、ヒレ、イチボで構成した「塩味の焼肉」(写真は2人前)です。とろけんばかりの脂の甘味も、引き締まった身の弾力も申し分なく、1枚1枚に猛烈な個性と存在感が満ちています。
「旨味に磨きをかけるため、どの部位も1~2℃で長期熟成し、水分をギリギリまで抜いています。その上タンは3ヵ月目のものですよ」。そんな伊藤さんの言葉を裏付ける、“極めつけ”の味に思わず笑みがこぼれました。
後半は「タレ味の焼肉」(写真は2人前)で、クリミ、サガリ、ロース、ハラミがまたも抜群のアンサンブルを奏でます。肉の味を引き立てるよう計算された自家製タレも良い塩梅。とりわけ濃厚な凝縮味を感じるクリミや、ロースの脂のうまさは軽く悶絶するレベルでした。部位ごとに厚みを変えたカットも的確で、これはその日の肉の状態を見極めながら、注文が入るごとに職人が手切りしているそうです。
焼肉はこれで終わりですが、足りなければ先述のように1枚単位で好きな部位を頼んだり、他の料理を追加してお酒を楽しむのもOK。僕は十分満たされたので、シメの「ご飯物」に進み、カレーを選びました(他に肉うどんあり)。黒毛和牛のコクが広がる、締めくくりにふさわしいマイルドな辛さです。
とにかく焼肉の味には一点の曇りもなく、堂々と“高級専門店”を名乗れるクオリティだと思います。しかも本格派の和食も揃っているわけで、それってある意味無敵の日本料理店なのでは? そんな感慨も湧く贅沢な一夜でした。
ジャンル:日本料理、寿司、海鮮料理、焼肉・ホルモン焼き
住所:福岡市中央区西中洲2-5-1
電話番号:092-791-5444
営業時間:17:30~OS翌1:00
定休日:日曜
席数:カウンター4席、テーブル54席
個室:2~8名
メニュー:くーたとやきにくコース7,000円・9,000円・12,000円、刺身五種盛り合わせ(1人前)2,000円位~、天ぷらおまかせ三種盛り1,500円位~、本日の鮮魚煮付け3,000円位~
URL:http://www.ku-ta.net/niku/
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