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京都の高級食材を用いて生みだす、淡麗な日本料理の魅惑

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この日本料理店から連想する言葉を一つ挙げるなら、それは“透明感”です。過剰に飾ることなく、食材とひたむきに向き合い、その奥にひそむ美味に光を当てること。そんな真摯な仕事の果てに、きわめて純度の高い輝きが生まれ、器全体を埋め尽くす──「井本」の料理には、そうした力が確かに宿っています。

井本店内

城南線と浄水通に挟まれた、静かな一画に佇む「井本」。扉を開けると10席のL字型カウンターがあり、その奥で店主の井本達也さんが迎えてくれました。カウンターのブラックチェリーと、京都・深草の土壁が温もりを放つ内装も好ましいシンプルさです。

井本さんは、京都の「はな邑」や「祇園川上」で7年研鑽した和の職人。2015年にこの店を構えると、5年目にはミシュランの2つ星を獲得しました。自身の目指す“日本料理の美”を突き詰めた、27,500円の月替わりコースを求めて遠くは香港、シンガポールから訪れるグルマンもいるのだそう。

井本料理1

そんな36歳の店主の哲学は、京野菜のすぐきを風呂吹きにした1品目から窺えました。「福岡だと大根かカブを使いがちな料理ですが、すぐきの方がより味が濃いんです」と井本さん。昆布出汁と鯛の骨で取った出汁で炊き、白味噌などで練った鯛味噌を乗せて仕上げたものです。淡く、それでいて確かな旨味のある出汁が、鯛味噌と絡んだ瞬間のたおやかな味わいときたら──。そう、この淡さの中から立ち昇る、優雅で懐かしき旨味との出会いこそ「井本」の真骨頂なのです。

井本料理2 井本料理3

続いては、2皿に分けたお造りが順次登場。最初は京都から仕入れた明石の鯛で、井本さんいわく「熟練した魚屋さんが締めてくれるので、身がコリッとしてても旨味が強いですね」。甲殻類に似たニュアンスの風味も印象的で、これも明石産ならではの魅力とか。
2皿目の天然フグは、高温の油に通して氷水で締めた珍しい“たたき”スタイル。シコシコとした分厚い身は文句なしの弾力で、その甘さを辛味大根がさらに膨らませます。フグ本来の旨味が詰まった身皮もたっぷり乗っていましたよ。

井本料理5

雪化粧を施して、冬の訪れを告げる焼物には赤むつを使用。裏ごしした百合根の“雪”を、赤むつと一緒に食すと思わぬ舌触りが広がります。赤むつの脂が百合根のタンパク質で中和され、滑らかな食感が生まれるのだそう。赤むつの脂が完璧に乗り切った「今日この日にしか味わえない」逸品でした。

井本店主

このように、井本さんはほとんどの食材を京都から取り寄せます。「柳橋や長浜の市場が近いのに」と不思議に思い尋ねると、明快な答えが返ってきました。
「素晴らしい料理店が集まる京都には、自然と優れた食材が集まります。もちろん業者さんも目利きの厳しいプロばかり。だから最高級の食材を安定して仕入れるには、京都と付き合うのが一番なんです」
また、江戸期の金沢・大樋焼を始め、先ほどから料理を彩るクラシックな器も気になりました。これも信頼を置く京都の古美術商から買い付けており、食材同様、しっかり意味や物語のある器だけが選ばれます。骨董ファンにも眼福のひとときになるのでは?

井本料理4

この日のお椀は松葉蟹の真薯で、器もそれに合わせた松葉づくし。真薯の具材はほとんどカニのみで、少々つなぎを加えた程度です。これをほぐし、繊細な出汁で口に流し込むと、カニの塩分で膨らんだ淡麗な旨味が駆け抜けました。
淡さとうまさのギリギリの融合を目指し、もっと澄んだ味を食材から引き出せないか──そんな境地に挑む、井本さんの信念を感じた一杯です。

井本料理6

そして最後を飾る10品目は、井本さんが「満足の仕上がりです」と微笑む天然フグの炊き込みご飯。備長炭で焼いたフグの骨と鰹で出汁を取り、頭とカマのほぐし身を土鍋で炊いた秀作です。これまで様々な土鍋ご飯を食べましたが、これほど優しく広がる味わいは格別。3度もお代わりした食欲が、それを雄弁に物語っています。

なのに食後の余韻は快く、店を出てからの足取りも来店前よりずっと軽やか。これもきっと、“透明感”の副産物なのでしょう。厳選された旬食材の、極上の上澄みだけを堪能するという極めつけの贅沢。「井本」に来れば、いつだってその悦楽に浸れるのです。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

店舗名:井本
ジャンル:日本料理
住所:福岡中央区薬院4-15-29香ビル1F
電話番号:092-753-7125
営業時間:12:00~入店13:00/17:00~入店20:30
定休日:不定
席数:カウンター10席
個室:なし
メニュー:おまかせコース27,500円

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