日暮れの早い、とある師走の夕刻。どこか忙しげな人並みが行き交う西新商店街をテクテクと藤崎方面へと向かう道すがら、両脇の店からはクリスマスソングが流れてきます。そんな喧噪をよそに、個人的に「キングオブ町寿司」と呼んでいる「福ずし」を目指す筆者の頭の中は、魚・魚・魚でいっぱいでした。
開店まもない午後6時に入店すると、すでにカウンターはほぼ埋まっています。けっして広くはないつけ場には、寿司職人が5人。全員がフル回転で仕事をする真ん中で、とびきりの笑顔をふりまきながら寿司を握っているのが大将の溝上雄一さんです。
一瞬手が空いた隙を見計らって大将に今日のおすすめを尋ねると、「いいカワハギが入っていますよ」とのこと。さっそく注文をして、ビールを飲みながら待つことに。今年はカワハギが不漁で仕入れ値が上がっているそうですが、この店ではいつもと変わらぬ値段(うす造り1,200円・姿造り1,980円)で出しています。生け簀から取り出されたばかりのお造りは、尻尾がピクピクと動くほどの活きの良さ。箸で2、3切れをすくってたっぷりと添えられたキモをまぶしながら食べれば、まさに至高の瞬間です!
続いては、関東などからわざわざ食べに来る客もいるという名物の「ごまさば」(680円)と「幻の生シャコ刺身」(680円)。皮までうまいごまさばは言わずもがなですが、筆者にとって感慨が深いのは生シャコの刺身。というのも昔はシャコが安く、居酒屋などでいつでも食べられる身近なものでした。ところが今では漁獲量が激減して、まさに「幻の」食材となっています。しかも足が早いため、刺身で出している店はめったにありません。これも、大将自らが長年にわたって姪浜や伊崎・糸島などの近隣の漁港や市場から直接買い付けている信頼関係があればこそでしょう。
にぎり寿司は1貫(150円~)からお好みでも握ってくれますが、今回は特上にあたる「花にぎり」(2,980円)にしました。それでも3,000円アンダーなので、注文しない手はありませんよね。細長い下駄に乗せられて登場したのは、手前から大トロ、フグ、ブリトロ、活車エビ、いかウニのせ、熟成生サバ、生アワビという珠玉のラインアップに、イクラ小どんぶりとアラ汁が付いた豪華版です。
築上郡上毛町の棚田米を使って小さめに握ったシャリの上でそれぞれのネタが個性を主張し、味わいの深い一貫一貫です。ウズラの生卵と混ぜ合わせるイクラ小どんぶりと魚のダシが染み出たアラ汁まで、しっかり堪能することができました。
メニューには握り寿司約30種類のほか、写真の数量限定「ねぎとろ手巻き」(380円)や細巻き、さらに太巻き、バッテラ、いなりまで多彩に揃っています。壁一面にも日替わりの短冊メニューが貼られ、全部でいったい何品あるかわからないほどです。
さらに驚くべきは、満席の客を応対しながら、ひっきりなしに電話がかかってくる出前や持ち帰り用にも対応しているところ。いやはや、まさに「キングオブ町寿司」と呼ばずにいられるでしょうか。
常に満席という中でも笑顔を絶やさない大将と職人さんたちと、「安くてうまい」魚と寿司に心から満足して自然と笑顔がこぼれるお客さん。これほどまでに幸福感にあふれた町寿司を、他に知りません。
《福ずし》
福岡市早良区西新5-15-28
092-822-0330
ジャンル:寿司
住所:福岡市早良区西新5-15-28
電話番号:092-822-0330
営業時間:17:30~OS24:00
定休日:月曜
席数:カウンター11席、座敷14席
個室:なし
メニュー:にぎり寿司(1貫)150円~、にぎり盛り合わせ1,480円~2,980円、ねぎとろ手巻き380円、特製太巻き1,100円、ごまさば680円、幻の生シャコ刺身680円、地魚刺身盛合せ2,800円、活カワハギうす造り1,200円・姿造り1,980円
URL:https://nishijin-fukuzushi.com
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