「安い・早いの町中華も良いけれど、それだけではない楽しみを形にしたくて」と、青年のような笑顔を見せる猪迫賢貴さん。素材にこだわる上質な中国料理を、ゆったり味わえる空間を創りたい──。2015年、この40歳の中華職人が中央区港に構えた「チャイニングブース」は、そんな想いを詰め込んだ店です。
猪迫さんが最初に働いたのは、東京四ツ谷のホテルニューオータニにある、上海料理の老舗として名高い「大観苑」。そこで王道中華の技術を身につけると、以降も中国料理一筋でキャリアを磨いていきます。
やがて33歳で独立を決意。メニューの主役には、野菜をふんだんにあしらった中国料理を据えようと決めました。「野菜の大半は、大分県中津市から週に1回届く、両親の作ってくれた無農薬野菜。その持ち味を引き出せるように、塩や油や香辛料はなるべく抑えめにしています」
そんな中国料理の評判を耳にして、臨海エリアの一画へ足を運びました。店内は涼しげな木目調のデザインで、誰もがいい意味で先入観を裏切られるはず。きっとこれまでも、多くの人が外から中を覗いて「カフェかバルがあるんだね」と通り過ぎたことでしょう。
「店名は“中国の屋台”的な意味なんですけどね(笑)。とくに女性の方にゆっくり過ごして欲しくて、こういうインテリアを採用しました」と猪迫さん。
メニューの中心価格帯は800~1,000円で、いくつかはハーフサイズで頼める料理もあります。
しかしその実力を知る前に、まず驚かされたのが日替わりのお通し。立派に「前菜盛り合わせ」として通用するレベルで、これと紹興酒だけで半分出来あがってしまう人も多いのでは……と、こちらが心配になる(というか嬉しくなる)充実ぶりです。
「その日の気になる食材でお作りしています」というこの一皿。今日は芋と蒸し鶏のバンバンジー、スモークサーモンで巻いた白菜の甘酢漬け、山椒で炒ったツブ貝、オイル帆立のネギソース、豚タン、タコと枝豆のガーリックソース、中央にイカのマスタード和えの6点盛りでした。
「まずはベジファースト!」ということで、最初に頼んだのは野菜がたっぷり摂れそうな「無農薬野菜のセイロ蒸し」(880円。ハーフは550円)。その名の通り、キャベツ、大根、ブロッコリーなど9種類がホカホカ湯気を立てるオールスターです。品種ごとに時間差を置き、栄養価を逃すことなく、ベストな食感で蒸しあげた野菜はじんわり甘い滋味の塊。食すたびに、大地の匂いが伝わる上品な野趣が口一杯に広がりました。
中華風バーニャソース、柚子味噌、リンゴの自家製ソース、麻辣ソースが付き、様々な表情の変化が楽しめるのもポイントです。
猪迫さんのお気に入りという「国産鶏せせりとスルメの炒めもの」(1,280円)も印象に残る一品でした。揚げた鶏のせせりと、油通しをした野菜、さらに水で戻したスルメを四川風に炒めたスパイシーな逸品です。「噛めば噛むほど味が出る」とは良く言ったもので、とにかくこれはスルメの食感の面白さに尽きます。延々と呑みたいときのアテにもピッタリ!
一見濃厚そうな料理ですが、さすがは上海料理出身。猪迫さんの料理は、どれも確かなコクや食味を持ちながら、ほとんど胃もたれしない軽やかさがあります。油や塩分の多さから中華は何品も食べられない……という人にもオススメの、体に優しい一軒と言えるでしょう。
なお、店内の冷蔵庫に並ぶ無農薬野菜は購入することもできます。また、中津のご両親から届く、箱入り野菜(3,500円。送料込)のセットも注文できるとか。安心・安全な野菜を自宅で使いたい、という方はぜひ。
そして最後に猪迫さんから一言。「現在人手不足で、夜は1人で営業することが多いため、なるべくご予約いただけると嬉しいです。同じ理由で週末のランチもコース対応のみですが、どうぞよろしくお願いします!」
ジャンル:中華料理
住所:福岡市中央区港2-10-3-1F
電話番号:092-753-6290
営業時間:11:30~OS 14 :00(土・日・祝日は予約制のランチコースのみ) /18:00~OS22:00
定休日:水曜
席数:テーブル16席
個室:なし
メニュー:ディナー/無農薬野菜のセイロ蒸し880円、国産鶏せせりとスルメの炒めもの1,280円、定番!!青菜の炒め980円、2時間煮込んだ牛すじの揚げ春巻き(1本)520円、国産鶏せせりのやみつき毛沢東スパイス980円、人気の真っ黒いチャーハン1,180円 ランチ/平日1,100円~、土・日・祝日限定コース2,500円~
URL:https://ja-jp.facebook.com/aaa.c.b.0706/
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう