福岡・天神「リストランテKubotsu」が揃える九州各地の名門窯元の器をご紹介
高取焼宗家 高取春慶氏へパン皿の制作を依頼
有田焼、唐津焼、高取焼、小石原焼など、九州には様々な陶磁器文化が存在しています。今回、福岡・天神の高級イタリアン『リストランテ Kunotsu』の料理長・窪津朋生氏が、レストランでパンをご提供する時に使用する新しいお皿の制作を依頼。
依頼先は、福岡で420年続く初代 高取八山(たかとり はちざん)唯一直系の窯「高取焼宗家」の高取春慶(たかとり しゅんけい)氏。
高取焼宗家を訪ねた料理長・窪津朋生氏(右)と高取春慶氏(左)
春慶氏は、1989年に十三代 八山の長男として生まれた新進気鋭の作陶家です。
窪津シェフと春慶氏は、共通の知人を介して数年前に出会い、同じ創作者としての志や哲学に共感し合いながら親交を深めてきました。常日頃から納得のいく食材を探し求め、九州各地の生産者のもとへ通い続ける窪津シェフは、2022年秋に新しいパン皿の制作を依頼するため、福岡県朝倉市の高取焼宗家を訪ねました。
福岡県朝倉郡東峰村の静かな山間に流れる清流の水音が聞こえる地に、高取焼宗家はあります。
この土地の空気や春慶氏との会話に様々なインスピレーションを受けた窪津シェフは、思い描く新たなパン皿のイメージを春慶氏に伝えました。二人の会話は、器の形、高台(こうだい)の高さ、手触り、レストランでお皿にパンをサービスする時の条件など多岐に渡りました。
高取焼宗家の土は、やや鉄分を含んだ「小石原」で採れる土と福岡市の七隈で採れる白土を原料としています。2種類の土を独自に調合し、伝統技法によって一から制作した陶土を焼成すると、キメが細かく、薄くて軽い磁器に近い美しい陶器となります。400年を超え、一子相伝で伝わる高取焼宗家は代々当主にのみ受け継がれる「秘伝書」をもとに現在も作陶が続けられています。
また、高取焼宗家秘伝の釉薬(ゆうやく)の原料は、自然界から得られる「藁灰」「木灰」「サビ」「長石」の4種。その調合方法は「秘伝書」に記され、まさに門外不出とされています。一皿一皿がそれぞれの表情を持ちながら、統一された世界観を醸し出す。これが高取焼宗家の伝統と技による奥義ともいえます。
昨年12月、パン皿が完成
昨年の暮れ2022年12月、パン皿が完成し、春慶氏は自らそれを「リストランテKubotsu」にお持ちになりました。
料理長・窪津朋生氏よりコメント
よい器ほど使うほどに独自の味わいが生まれ、佇まいも変化していきます。私の料理は、九州各地から厳選した食材を使っていますので、器も九州の豊かな陶磁器文化を継承するものを使い続けたいと、常日頃から考えていました。
料理人にとって器とは大切なものです。食材や料理が器を求め、また逆に器から料理のアイデアが生まれることもあります。今回、高取焼宗家の高取春慶さんの素晴らしい器が新たに加わりました。テーブル上の器と料理の共演を、ぜひレストランでお楽しみください。
「リストランテKubotsu」に新たに加わった春慶作のパン皿
九州各地の陶芸家による「リストランテKubotsu」の器の数々
「リストランテKubotsu」には、上記の他にも様々な九州各地の伝統工芸から生まれた器や装飾品が揃っています。今回は窪津シェフが厳選した器の一部を窪津シェフにご紹介いただきました。
唐津十四代 中里太郎右衛門 作
「リストランテKubotsu」を訪れると、まずテーブルにセットされている大皿。レストランのオープン時に唐津焼の十四代 中里太郎右衛門氏にお願いして作陶いただいたものです。
お客様をお迎えする最初のセット
「窪津さんのイメージは円だね」と、太郎右衛門氏が自ら一筆書きで縁を描いてくださいました。レストランでは、まず初めにこのお皿でお客様をお迎えします。
唐津十四代 中里太郎右衛門 作
唐津 中里太亀 作
同じく、唐津焼の中でも人気の高い隆太窯の中里太亀氏のお皿です。中里太亀氏は、お父様の中里隆氏が1974年に築窯した佐賀県唐津市の隆太窯において現在も父・隆氏、長男の健太氏とともに作陶を続けておられます。
唐津 中里太亀 作
唐津 中里花子 作
こちらもレストランのオープン当初から使用している中里花子氏のパン皿です。レストランで使用する器は、使っていくたびにどんなに丁寧に扱っていても、色が落ちたり、角が欠けたりします。今回、高取春慶氏に新たなパン皿を依頼しましたが、もちろん今後も、春慶氏のパン皿とともに中里花子さんのお皿も使用していく予定です。
唐津 中里花子 作
唐津 矢野直人 作
矢野直人氏は、1976年生まれでとても人気のある陶芸家です。94年から5年間アメリカへ留学。2002年佐賀県立有田窯業大学卒業。2004年にお父様の殿山窯にて作陶を始められました。独自の土作りから釉薬まですべて一人で行っています。2012年には、30代でただ一人唐津焼12人に選ばれるなど、第4世代の最も注目される若手作家といわれ、今も人気を博しています。
矢野直人作の平皿とバターを入れる器
有田 文山窯
現代的で静観な佇まいのこのお皿は、有田焼の窯元、文山窯のものです。文山窯は、有田焼で唯一の「トンネル窯」があり、400年の有田焼の歴史に残る「蛍手」「手捻り」「プラチナ牡丹」というロングセラー商品を生み出したことでも知られています。
有田 文山窯
やま平窯
ブルーの発色が印象的なこのお皿は、こちらも佐賀県有田の「やま平窯」です。特殊な技法で、海の底から水面を見上げたようなキラキラした表情を器の中に閉じ込めています。お料理のインスピレーションを刺激する器です。
やま平窯
九州各地を巡り厳選した食材を使った”窪津のイタリアン”と称される『リストランテKubotsu』のお料理には、伝統ある陶器文化を誇る九州の器がよく似合います。お料理のみならず、器も愉しめる『リストランテKubotsu』でのひと時を是非お試しください。
「リストランテKubotsu」料理長/窪津朋生(くぼつ・ともき)
1983年生まれ。 福岡県出身。 2003年にひらまつに入社後、 東京・代官山「リストランテASO」で研鑽を積み、 2009年に副料理長に就任。 2011年「リストランテASO 天神」オープンに伴い福岡に異動。 2014年、 同店料理長に就任。 2018年1月、 自身の名を冠する新店「リストランテKubotsu」料理長に就任。 「九州の“今”本当においしいものと美しいものを」と九州産の食材や伝統文化にこだわり、 妥協のない店作りを貫く。
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう