八百屋、鮮魚店、和菓子屋など、古くから看板を掲げる店が集う美野島商店街。2019年に仲間入りした「IPPON食堂」も、このエリアの温かな色彩がよく似合う大衆店です。
しかも溶岩プレートで焼く鶏料理が好評で、開店以来ファンを増やし続けているとか。これは一度出向かねばと、夕暮れの商店街に足を延ばしました。
裸電球が灯る店内の雰囲気は、まさしく庶民的な“THE 食堂”。1階はカウンター4席とテーブル8席、2階には18名まで入れる座敷を備えています。
さて、目を引くのはテーブル上の8角形の黒い板──そう、これが桜島の溶岩プレートです。「これを用いていろんな鶏の部位を焼くスタイルは、“地鶏食堂”さんという店で知りました」と言うのは、ご主人と一緒に「IPPON食堂」を立ち上げた、奥様にして店長の松本美奈さん。「その時の美味しさが忘れられず、私たちもこういう店を始めたいなと思ったんです」
その溶岩焼きのラインナップがこちら。銘柄鶏の「宮崎地頭鶏」と、「地鶏食堂」が卸してくれる「種鶏」の他は、すべて九州産の朝引き鶏を仕入れています。
定食類もあるので、これなら一人でも気軽に使えそう。「単身赴任の方や学生さんなどが一人で来られても、栄養ある食事を値頃に提供できたらなって」という美奈さんの言葉に、松本夫妻の優しさがうかがえました。これぞ「食堂」の心意気ですよね。
そんな飾らぬ空気の中で、まず頼んだのは「五種盛り」(1,480円)です。その日のお勧め部位を盛り合わせた一番人気メニューで、今日はご覧の6種類がドンと登場!
熱くなったプレートに並べると、やがてジリジリ音を立て、パチパチと脂を跳ねる鶏肉たち。溶岩石という天然の調理器具だからでしょうか、その眺めには焼肉屋の鉄板にない野趣が感じられます。
焼けた鶏肉から染みだす脂はある程度プレートが吸ってくれますが、表面に流れでた分は随時ペーパーで拭き取るのが美味しさの秘訣とか。美奈さんいわく「紙エプロンをしていても脂が散ることが多いので、綺麗な服での来店はご注意くださいね(笑)」
とはいえ焼きあがった鶏肉は、そのリスクに十分見合ったうまさ。仕上がりは遠赤外線効果でふっくらと香ばしく、熱々で甘い脂がそこに極上のアクセントを加えます。シンプルに「肉を喰らう」醍醐味と、鶏の滋養がじんわり体を駆け巡る感覚も良いなぁ。薬味は柚子胡椒、ニンニク、岩塩、自家製味噌ダレ、ニンニク入り塩コショウが用意され、味変も自由自在です。
ただ、じっくり火を通す溶岩焼きは、鉄板焼肉よりも少々焼きに時間がかかります。そんな“隙間”を埋めてくれるのが、事前に頼んでおいた「チキン南蛮」(680円)でした。胸身とももの中間のような食感の部位=フリソデを使った身の歯応えは快く、舌に馴染むタルタルソースとの相性も抜群。タルタルにはピクルスの代わりにキュウリが入っており、これは美奈さんの故郷・宮崎県のエッセンスだそう。大ぶりの身が5ピースも入ったサービス精神もあっぱれです。
これに劣らず人気なのが「百合子の唐揚げ」(680円)。こちらはご主人のお母さんのレシピを再現した一品で、甘い醤油とニンニクたっぷりの風味が食欲をかき立てます。片栗粉をはたくことで生まれる、独特のサクサク感も印象的でした。「これとご飯だけ頼んで帰る常連さんもいらっしゃいますよ」と美奈さんもニッコリ。
味よし、雰囲気よし、コスパよし。まるで「食堂」のお手本のような「IPPON食堂」は、まさに「一本取られた!」と脱帽する店でした。「鶏肉はセロトニンという“幸せホルモン”を出しやすくする食材だそうです。私たちもこの店を、そんな幸せ一杯の場所にしたいですね」
今宵の客たちの表情から、その願いはすでに叶っているように見えました。こんな庶民のオアシスが、きっと街の活力を支えているんですよね。
ジャンル:焼肉・ホルモン焼き
住所:福岡市博多区美野島1-16-15
電話番号:092-481-2223
営業時間:18:00~OS22:00
定休日:月曜
席数:カウンター4席、テーブル8席、座敷18席
個室:なし
メニュー:溶岩焼き五種盛り1,480円、チキン南蛮680円、百合子の唐揚げ680円、溶岩焼き/宮崎地頭鶏(もも・せせり)各780円・朝引き鶏(レバー・むね・砂肝)各540円、地鶏だし卵焼き580円、溶岩焼き定食1,280円~
URL:https://www.instagram.com/ippon_minoshima/
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