新旧さまざまな飲食店が軒を連ね、福岡屈指の美食エリアとして知られる西中洲。今回訪れたのはこの地で今年18年目を迎える名店、グルマンや同業者も足繁く通う「西中洲 游來」です。今ではスタッフが1枚1枚お肉を焼いてくれる“フルアテンドスタイル”の店も増えた福岡ですが、ここはその先駆けともいえる一軒ではないでしょうか。
夜の帳が下りると、小さな牛の看板に明かりがポツリ。「游來」の暖簾を目印に店内へ入れば、ビシッと整えられたカウンターが目に飛び込んできました。右手には半個室もあり、しっとりとした雰囲気が漂っています。
「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれたのはオーナーの田村岳幸さん。春吉にある韓国料理の名店「田無羅」の創業者を父に持ちながら、父とは違う独自のスタイルで独立したいと2005年に「西中洲 游來」を開業しました。
田村さんは大阪の老舗料亭「大和屋」で5年間にわたり修業を積み、他ジャンルの料理店や「田無羅」でも腕を磨いた経験の持ち主。日本料理、中華料理、韓国料理などをミックスしながら、焼肉の枠にとらわれない肉のコース料理を提供しています。看板となるのは、客人の好みや気分に合わせて一品ずつ組み合わせていくおまかせコース。品数や内容はカッチリと決まっておらず、その日の肉の状態や旬の食材、ゲストに合わせて調整する、まさにオートクチュールのようなスタイルです。
初めて訪れたゲストにはまず、おすすめの一品を出しながら「食(しょく)あわせ」を行っていくそうで、気に入った部位は“MY希少部位”として顧客カルテに記録を残していくのだそう。店に通うほどに、自分だけのコースが出来上がっていくなんて素敵ですよね。
早速、予約しておいた8,800円のコースをいただいていきましょう。最初に旬の野菜や魚介を組み合わせた前菜が供され、続いて写真の「牛テールの塩焼き」が登場。丁寧に下処理を施した後、表面を香ばしく焼き上げた名物の一つです。ホロッと解ける軟かな身、とろけるゼラチン質と力強い旨味がたまりません。
さぁ、牛テールの後は焼肉パートに突入です。
「松阪牛や佐賀牛など“ブランド牛”と呼ばれる多彩な黒毛和牛がありますが、当店では地域ブランドではなく、その牛がどのような生産者の元でどのように育てられたのかという点に重きを置いています。いわゆる“ドメーヌ牛”と呼ばれるものですね。また、良質で成熟した肉質にこだわりたいとの思いから、月齢30ヵ月以上の牛を厳選しています」。そう話し、目の前で肉を切り分けていく田村さん。ドメーヌ牛とは、ひとつの生産元(ドメーヌ)から出荷されるブランド牛のことを指します。
佐賀や宮崎、鹿児島など、牛を大切に育てている生産者の方々から直接仕入れるドメーヌ牛は、目からもその美味しさが伝わるようですね。部位によって大きさ、厚み、カットの仕方も変えるなど丁寧な仕事が光ります。
この日供された5種盛りは、佐賀県唐津市の「中村牧場」で育てられた佐賀牛でした。写真は2人前で、繊細な赤身の部位・カメノコ、希少部位のトンビやクリミなど最高の部位ばかり。塩やニンニクチップ、ワサビやソースなど、それぞれに合わせた薬味と共に味わいます。
続いて運ばれてきた「肉の手まり寿司」は、和テイストな逸品。手のひらを象った器の形もユニークですね。肉に合うよう軽く下味をつけたご飯の上には雲丹がのっており、そこへ軽く炙った肩ロース肉をのせていただきます。雲丹のコクと霜降肉の甘味が口いっぱいにとろけ、実に贅沢な味わいです。
さらには、直前にサッと特製ダレを絡めた“タレもの”のお肉も登場しました。写真は2人前で、上段は希少部位の一つであるシンタマで、下段は別名ザブトンとも呼ばれるハネシタです。あまりに美しくて、思わず見とれてしますね。
この動画のように、すべてのお肉を田村さんやスタッフが1枚1枚焼いてくれるので私はただ食べるだけ。ベストなタイミングを逃すこともない……なんて幸せなんでしょう。ハネシタを口に運べば、なんともシルキーな舌触り。肉汁や旨味が一気に溢れ出し口の中は大洪水に。霜降りが美しく入ったシンタマは、軟らかく濃厚な味わい。一気にとろけるので、肉を噛んでいるのか肉汁を飲んでいるのか分からなくなるほどでした。この後さらに、麺やご飯ものといった〆の一品が供されてコースは終了です。
また「西中洲 游來」にはウォークインセラーがあり、ソムリエも常駐しています。お肉に合わせてワインを楽しむのもおすすめですよ。特別な日や美味しいお肉が食べたい時は、ぜひ予約して出かけてみてくださいね。
ジャンル:焼肉・ホルモン焼き
住所:〒810-0002 福岡県福岡市中央区西中洲5-6
電話番号:092-731-2968
営業時間:17:00~24:00 ※最終入店22:00
定休日:日曜
席数:カウンター8席、テーブル10席
個室:3~10(半個室)名
メニュー:おまかせコース8,800円・11,000円・13,200円、牛テールの塩焼き1,500円、和牛赤身三種盛り2,800円、グラスワイン800円~、ボトルワイン4,000円~ ※コースは予約推奨
URL:https://nishinakasu-yuki.com
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