昨今、“非豚骨ラーメン”という言葉をよく聞くようになりました。
今なおどっしりとした存在感を放つ“豚骨ラーメン”があってこその“非豚骨”(数年前までは“脱豚骨”とも呼ばれていました)という呼び名。豚骨王国・福岡らしいラーメンのカテゴライズだと思います。一つ付け加えておきますと、“非豚骨”は塩、醤油、味噌、創作系など“豚骨ラーメンじゃないラーメン”を広く指している場合が多く、素材に豚骨を使っていないとは限りません。あくまでジャンルとしての“非豚骨”だということをラーメン豆知識として覚えておいてください。
今回訪れたのはそんな、福岡“非豚骨”シーンを引っ張る一軒「新博多醤油そば もやい」です。南区五十川の陸橋横に昨年6月にオープンしました。
古い日本家屋を思わせる白壁の店で、木の引き戸を開けるとカウンター、テーブル席、ウェイティングスペースも設けたスタイリッシュな内装。ラーメン店というよりも和食、蕎麦店。そんな印象をうける店です。
店主の牧尾誠さん(写真は息子の大和さん)は、2001年から薬院「ゆるり」も経営しています。「ゆるり」は、24時間営業の時代もあった居酒屋で、今は焼鳥が主体の業態になっていますが、「担々麺」が創業時からのロングセラー。牧尾さんは親交のあった「中華そば 鈴木商店」(現在は閉店)の店主から製麺機を譲り受け、早くから製麺にも取り組んでいました。「新しい業態へのチャレンジがしたい。そして長く取り組んできた製麺もより高みを目指したい。それが『もやい』の出店へとつながる第一歩でした」と振り返る牧尾さん。人気の担々麺をあえて封印した新しい醤油、塩ラーメンの2本柱を創作。さらには、より充実させた製麺室、ラボラトリーを店舗に集約する形での開業となりました。
屋号にも掲げている「醤油そば」(1,100円)、そして「仏蘭西塩そば」(1,100円)共に、
まずは「シュ、シュ」とカツオ節を削るところから調理が始まります。客席で香りが花開くよう、注文を受けるたびに鹿児島枕崎産の枯節で一杯ずつ丁寧に追いガツオを施すのが特徴です。スープのベースは「さつま知覧どり」、モミジ(鶏の足)などをたぎらせないよう約90C°にキープしながら5時間かけて旨味を抽出。国産無菌豚の豚肩ロース、鶏ハムなど具材も豪華で、別皿に味や食感の変化を楽しむドライトマトや柑橘も添えられています。
まずは「醤油そば」をいただきました。甘さとキレのバランスで選んだという、千葉県産と長野県産の有機醤油を用いたスープが琥珀色できれいですね。確かにいい塩梅で、鶏の旨味を増幅しています。
次に「仏蘭西塩そば」。こちらは塩ダレではなくフランス・ゲランドの塩をはじめとする“塩そのもの”で味付けされています。より淡麗系が好きな方におすすめ。具材は醤油そばと同じです。
また、牧尾さん自身が20年近く研究を重ねてきた麺は現在、数種をブレンドした小麦、佐賀「一の塩」を使い多加水で製麺しています。モチモチ感、程よいウェーブのある麺とスープとの相性が抜群ですね。1玉約160g(茹で前)とボリュームもあります。ちなみに、この麺は大手門にある「おめんやSIKI.」でも使われているものです。
1杯1,100円と一般的な博多ラーメンより高価ではありますが、それを納得させるだけの味、丁寧な手仕事、ホスピタリティを感じることができて満足でした。
「いいものをしっかりと作れば、わかってくれる人が必ずいる。今も昔もその思いで飲食店を経営しています。ファストフード的なラーメンではなく、一杯をゆったりと味わっていただき、合わせてワインや日本酒で昼飲みも楽しめる。そんな店にできたらいいですね」と牧尾さん。
現在は裏方にまわり、店には息子の大和さん、娘の朝日さんが主に立っています。
“ラーメンは自由!” の考えのもと、新たな価値を吹き込む同店のような“新博多ラーメン”が、まだまだ増えていく予感がします。
《新博多醤油そば もやい》
福岡市南区五十川1-15-14
TEL 070-8412-9171
営業時間 11:30~15:00
ジャンル:ラーメン
住所:福岡市南区五十川1-15-14
電話番号:070-8412-9171
営業時間:11:30~15:00
定休日:水曜
席数:カウンター6席、テーブル8席
個室:なし
メニュー:醤油そば1,100円、背脂醤油そば1,250円、仏蘭西塩そば1,100円、背脂仏蘭西塩そば1,250円、冷やしとろろそば1,500円、そぼろめし300円、とろろめし400円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400202/40061370/
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