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都民ファーストの善戦、選挙戦最終日の前夜に何があった?

7月4日に投開票された東京都議会議員選挙は、自民が第一党に復帰したものの、自公での過半数には届かなかった。一方で、地域政党・都民ファーストは自民に2議席差で第二党と、選挙序盤の予想から議席を伸ばす「善戦」だった。秋までに実施される衆院選の前哨戦ともいえる今回の都議選について、RKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で、ジャーナリストの鈴木哲夫さんが「選挙戦最終日の前夜」を報告した。
 
櫻井浩二アナウンサー(以下、櫻井):都民ファーストが、結構選挙終盤で伸ばしたみたいですね。
 
鈴木哲夫さん(以下、鈴木):だいたい都民ファーストは事前の世論調査で、20議席ぐらいしか取れない予測だった。ただ、小池都知事が全面的に出てくれば、そこから10議席ぐらい積めるんじゃないかという予測があったんですね。まさにその通りになったと。一方、自民党は40議席ぐらいっていうのがひとつのラインで、それくらいならいけるだろうという空気があったので、それが33議席だから、そういう意味では「本当の勝利」とは言えないと思いますね。
 
鈴木:自民・公明で過半数を取れるかどうかが、最大のポイントだったんですよ。過去、例えば石原慎太郎さんとか、青島幸男さんが知事でいましたよね。こういう人たちは、都民には圧倒的な人気だったんですね。ところが、都議会で自民党や公明党の方が数を持っていたから、自由にいろんなことがやれなかったんですね。だから今回もし自民・公明が過半数を取ると、議会で予算一つ通らないとかそういうことになる。だから自民・公明は「何とか過半数を取って、都政でもう一回力を取り戻すんだ」と選挙戦を戦っていて、多分そうなるだろうと思っていた。しかし過半数いかなかった。敗北ではないけれど、本当の勝ちにはならなかった。
 
櫻井:自民の関係者は「小池百合子にやられた」って言っているみたいですね。
 
鈴木:「小池さん、実はしたたかにいろいろ準備をしていて、選挙戦最終日に応援に入っている」みたいなことを言う人がいるんですけど、小池さんが最終日に入るって決めたのは、最終日前日、金曜日の午後10時前なんです。そこで都民ファーストのごく限られた関係者が集まって、小池さんのところに行って「何とか最後に(応援に)出ていってほしい」とお願いして、小池さんが「わかった」ということで、そこから土曜日に回るコースも夜中の1時ぐらいまでかかって決めているんですね。トータルでは18か所に行っていますが、都民ファーストの選挙関係者が「ここを回ればひっくり返せる」とお願いしたのは12か所だった。
 
鈴木:だけど今回の都議選、東京の選挙なんだけど、次の総選挙にものすごく影響してくると思うんですね。「なんでこんなに自民党が勝てなかったのか?」ということを、自民党の都連や都議候補に話を聞いたら、コロナとオリンピック、中央の政治の課題の逆風が一気に来ているそうですよ。地方選挙なんだけれど、やっぱり今の菅政権のコロナ対策の問題とか、何か説明がはっきりしない、なし崩し的なオリンピック開催ですよね。こういうものがやっぱり選挙区を回っていたら「なんで?」って言われる。
 
櫻井:それは東京独特とかいうか、東京は無党派層が多いからですか?
 
鈴木:福岡でも、例えば今年あった北九州市議会議員選挙も自民党は現職が6人ぐらい落選しましたよね。これも確かに地方選挙なんだけど、あのときもやっぱり候補者が言われたのは「おい、コロナ対策何やってるんだ?」とかなんです。確かに東京は無党派層が多いという特徴はあるけれど、この辺りの問題は総選挙でもかなり影響してくるでしょう。
 
鈴木:それともうひとつ、野党の方で共産党と立憲民主党が選挙協力をしているんですよ。お互いだぶらないように、候補をうまく調整したから、共産党と立憲民主党を合わせると全部で34議席になるんですね。つまり「これ選挙協力したらいけるぞ」ということがつかめた。自民・公明にしてみると、中央の課題を何とかしないと総選挙まずいぞ、ということがわかったし、あとはやっぱり小池さんの人気をどう利用しようかとかね、いろんなことが見えてきた。
 
櫻井:小池さんは国政に転身するんじゃないかなんて話も出ているみたいですけど、どうなんですか?
 
鈴木:僕の取材ではないと思います。でも将来風が吹いてね、小池さん風をつかむのが上手ですから、何かよほど国政で「女性総理」なんて流れになれば別ですけど、今国会に行ったって、自民党には相手にされないですし、あまり意味はない。あと、やっぱりいまのこのコロナ禍で(都政を)投げ出しちゃいかんでしょう。当分国政はないと思います。

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