この春、アナウンス部に2人の仲間が加わった。2人を見ていると、自分が新人だった時がよみがえる。様々な仕事を経験するほど、力のなさを痛感する毎日。「失敗してはいけない」「正しく分かりやすく伝えなければならないけれど、自分らしさも必要」「…そもそも自分らしさって何?」頭がいっぱいになり、どんどん縮こまっていった。そんな時、先輩が声をかけてくれた。
――ゴールまで下ばかり向いて、慎重にそろりそろりと歩く。確かに目的地へはたどり着く。しかし、途中の美しい景色は何も見えない。一方、同じゴールに向かい自分の好きな道を駆ける。思い切り走るから途中で転びもするだろう。流血し痛い思いもする。しかし「こうすればけがをしなくてすむ」と学習できる。次から同じ失敗はしない。けがをした部分はかさぶたになり、強くなる。辛い思いもするが、その分想像もしなかった絶景に出会えるかもしれない。心地よい風を感じられる。振り返った時、楽しいと思える思い出がたくさんできるだろう。どちらがいい?――
その言葉をもらってから挑戦できるようになった。今も失敗することは多いが、その言葉が力になっている。新人の植草峻アナ、橋本由紀アナ!転んだ時は私がばんそうこうを持ってひょいと駆けつけるので、一緒に思い切り走り抜けよう!
6月3日(土)毎日新聞掲載
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