数年前から福岡で空前のブームを巻き起こした「スパイスカレー」。今や街を歩けばどこからかスパイスの匂いが漂ってくるのも珍しくなく、すっかり定着した感があります。そんなブームの火付け役の1軒といえるのが「六本松カレチネ」です。
福岡のスパイスカレー店の店主は脱サラ組や異業種参入組が多い印象がありますが、薬師寺洋一さんもその一人。10年程前にまったくの異業種から飲食店を立ち上げ、3年目にスパイスカリー専門店にリニューアルしました。
薬師寺さんがカレーにのめり込むきっかけとなったのは、福岡スパイスカレー界のレジェンド・高田健一郎さん(元スパイスロード店主)との出会いから。高田さんの紹介で南インドまで行き、シェフのA.J.ルールドゥ・スワミ氏から学んだのが現地の郷土料理である「ノンベジカリー」です。本場そのもの味がコアなカレーファンから評判を呼び、6年前に六本松に移転して今や福岡を代表するスパイスカリー専門店の一軒となっています。
メインメニューは日替わりの「本日のカリー」で、南インドで実際に食べて学んだカリーをベースに、毎日3種類ほどを提供しています。この日のカリーから選んだのは、羊肉を使った「南のマトンマサラ」(単品1,500円)。「南インドでは一般に、汁気の少ない料理をマサラといい、汁気が多いものをカリーといいます」と、こちらは多少粘度があるスパイス煮込みといった料理です。
カリーは素材によって15~16種類ほどのスパイスを使い分けていますが、欠かせないのがクミン、ターメリック、マスタードシードなど薬効のある香辛料。「現地では薬代わりに食べられています」というように、香りや辛味だけでなく、胃腸を整えてくれる効果もありそうです。
カリーは単品(ライス・副菜付)か、「サンバル」(野菜のスープ)や「ライタ」(ヨーグルトのお惣菜)が付いたプレートが選べますが、今回はカリー単品に「ジンガプラオ」(1,300円)を注文しました。「ジンガ」はエビ、「プラオ」は炊き込みご飯の意味で、「カレチネ」ではスパイスで炊き込んだご飯にエビ、ナッツ、スパイスソースなどを加え、フライドライスに仕上げています。
パラリと炒めたバスマティライスにサンバルやライタ、野菜の付け合わせを混ぜ合わせながら食べると、プリプリとしたエビにカリッとしたナッツの食感、スパイスの香り、ヨーグルトの酸味などが複雑に絡みあい、何とも重層的な味わいです。わずかながらですが、インド料理の深遠なる世界感の一端を垣間見たような気がします。
現在は週5日昼間のみの営業で、そのうちの1、2日はルウを使わないインド式カリーソースとトンカツを合わせた「カツカリー」(チキン1,100円・ポーク1,250円)を提供しています。こちらも他店では食べられないオリジナリティにあふれたカリーで、目ざといカレーファンから人気を集めています。
その日食べられるメニューはインスタグラムで告知されているので、ぜひチェックしてからお目当てのカリーを食べに行ってください。
六本松カレチネ
福岡市中央区六本松4-1-1井山ビル1F
092-724-4115
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう